津次郎

映画の感想+ブログ

「変」に迫真を ロブスター (2015年製作の映画)

4.0
荒唐無稽な設定、というものがある。

一所に集められた他人同士が殺し合うバトルロワイヤルみたいなのとか、鬼ごっこで殺し合うやつとか、人狼を探すのとか・・・みんな同じだろ、とも言いたいが、少しずつ異なっているらしい。ただ、映画となるとどれもB級は拭えない。アイドルが主人公で、かならず津田寛治が出てくる映画になってしまうだろう。

世界は未来で荒廃してて変なルールが布かれている。
となれば、見る前から、解った気になる。
そしてじっさいのクオリティも、予想通りである。

ロブスターの世界設定は、独身者が一定期間内に伴侶を見つけられないと動物に変えられてしまう。独身者同士が狩りをして、誰かを狩り殺すと期間が遷延する。──というものである。

この映画を見ると「荒唐無稽な設定」も、すぐれた演出と意匠で再現すると、迫真に変わることが、とてもよく解る。

日本映画ではぜったいにムリだろう。
その理由は、演技やセリフや世界観から、どうしようもなく滲み出してくる承認欲求とドヤ顔にある。
日本映画は「荒唐無稽な設定」のなかで「日常」を再現できない。
たとえばスペックは変だけれど作り手と演者の「どうだ!変だろ!」が垣間見えてしまう。ランティモスの「変」には敵わない。

そもそもコリンファレルのからだづくりからはじまっている。精悍な濃い二枚目が、でっぷりした中年になっている。舞台もかれらの「日常」も休暇先のホテルのようだ。

その凄み。