津次郎

映画の感想+ブログ

ジャッキーとブロスナン、異質なふたり見たさ ザ・フォーリナー/復讐者 (2017年製作の映画)

4.0
ジャッキーチェンはアクションヒーローにこだわる俳優だと思います。どんなアクションスターでも老境に入ると、またそうでなくても、普通のドラマに出演しますが、ジャッキーは徹してアクション映画の主役をはります。

潔いですが、大人のアクション映画となると、きょうび米英に敵わないところがあり、映画産業の発達した香港や台湾といえども、落とし所にはコドモっぽさが感じられます。ジャッキーチェンの映画はなんというか、私には明るすぎるのです。

体をはっている感には一種の崇敬を覚えますが、画一的な展開に、自己資本や我の強さが感じられます。ハリウッドに一介の登場人物として出演したら、すごく魅力的に見えるような気がします。

この映画の資本は中国とイギリスですが、監督Martin Campbellは007カジノロワイヤル等のベテランで、従来のジャッキー映画にはない大人の雰囲気があります。

ジャッキーは相変わらず無敵のヒーローですが、年老いたアジア人が白人をバッタバッタと倒すのは、大げさに言えば、力道山がシャープ兄弟を倒すような痛快さがありました。といってもクワンはちっとも強そうではありません。なんの変哲もない中老男性が、強いことに喫驚の楽しさがあります。

ベトナム人がIRA闘争に巻き込まれる筋書きに、この映画の特殊性があります。こんな複雑な筋書きをよく映画にしたなと感心しました。たんにジャッキーを復讐鬼に仕立てるのなら、IRAもベトナム人の設定も不要ですから、そこに価値があると思います。

アイルランド独立闘争については、シャドーダンサーやニールジョーダンの映画で垣間見る以外は、知らない世界ですが、IRA闘争は冷たく理不尽で非情な雰囲気を映画に与します。その世界観とジャッキーチェンが組み合わさったことで、前例のない面白さが生まれたと感じられました。

そもそもピアーズブロスナンとジャッキーチェンが、並んで立っている光景が、まったく想像できず、この呉越同舟だけでも、かなり見たい度がありました。

日本人ですと、関東圏の人が関西弁を話すと、その疑似が直ぐにわかるものですが、ピアーズブロスナンのアイルランド訛りが自然に感じられました。私は英語をよくわかっていませんが、それでも自然さがわかりました。ライトがロイトになります、なんとなく好きなアクセントです。

原作の題名「チャイナマン」やベトナム難民の描写などを差別だとする物議があがったようですが、私にはむしろIRAもスコットランドヤードの一個師団をも凌駕する強かな(したたかな)ジャッキーが痛快でした。重さのある労作だと思います。