津次郎

映画の感想+ブログ

きれいな声で鳴くまねしつぐみは撃っちゃいけないよby アラバマ物語 (1962年製作の映画)

5.0
To Kill a Mockingbirdはハーパーリーという人の小説ですが多くの人にとって映画アラバマ物語(1962)の原作であろうかと思います。人種差別と貧困が織り込まれたドラマで──IMDBでも8超えの名作です。女史がなくなる直前、続編が発表されたのですが、それがとんでもない方向へ行っていて全米がControversialで揺れたのは、取りあえず置いておきます。

アティカス(グレゴリーペック)は温厚な人柄で信頼される弁護士で、亡き妻との間に生まれた、やんちゃなふたりの子供と一緒に暮しています。
憶えているシーンがあって──貧しい農家の息子がお転婆な次女スカウトと学校で喧嘩をします。その仲直りに夕飯に招待され食事をするのです──なんてことない食事シーンです。

貧農の息子カニンガムは出された食事に「牛肉なんて久しぶりだ!うちじゃリスやうさぎばかりで、とうちゃんと狩りに行って獲るんだ」と感激します。で、コーンブレッド用のシロップを所望して、それをダラ~っとかけます、──肉にも全部にかけます。
スカウトは「なにやってんの!」と行為を批判します。アティカスは諫めるのですが、スカウトはなおも「お肉もシロップでぐちゃぐちゃになってるよ」と言い下します。
そこで彼女は黒人の給仕に呼ばれ態度を注意されます。
「あの子はお客さまでしょ!たとえテーブルクロスを食べようとしたって黙ってなきゃダメ!行儀よく出来ないなら台所で食べなさい」

このシーンが言いたいのは人様の食べ方に四の五の言うことがマナー違反だということです。そしてそれが現代社会にあってはとても新鮮だというわけです。
むろん私たちは人様の食べ方に四の五の言うことがマナー違反なのは知ってますし、人様の食べ方を面と向って批評することもありませんが、唐揚げレモンにも見られるとおり、どうやって食うかってことが、ごく日常化している好奇心のネタなんですから。きょうび、けっこう誰もが人様の食い方に文句をつけたいわけです。
あんがい貧しさって自分のなかにもあるのかも──って自戒できるシーンだったゆえの衝撃だったのです。