津次郎

映画の感想+ブログ

斬新な語り口、独特な雰囲気 イット・フォローズ (2014年製作の映画)

4.1
プールで浮かぶのが日課のヒロイン、ジェイ。
栗毛のかわいい親友ケリー。
貝のカタチのコンパクトみたいな端末でドストエフスキーを読むヤラ。
おタク風のポール。

始めに、ヒロインと仲間の、生活臭の感じられない日常が描かれる。
アメリカの典型的な郊外住宅地。
中流らしきビニールプール。
ゆっくり移動するレールカメラ。
いきなりシュミーズ姿でまろび出るオープニングから一転してまったりする。
そのダルい日常が魅力的で、すぐに映画の中に引き込まれた。

恐怖演出にアイデアがあった。
遠景でこっちへ向かってくる人物を捉え、グルッと360°ゆっくりパンする。
小さかった人物が、360°回ると、とうぜん大きくなっている。
もう一回パン。
もっと大きくなって、その人物の異様さがはっきりとわかる。
これには感心した。
そしてホントに怖がらせる。

のべつ作られるホラー映画。
ほとんどが手垢のついた方法でかたられる。
が、その飽食をアイデアで克服した映画が、ときどきあらわれる。
そこにクリエイターの執念が垣間見える。

FollowしてくるItの異様さにもこだわりがあった。
診察服の老婦。失禁している半裸の女。桁外れ長躯男。ヤラの分身。病的な子供。
It's very slow, but it's not dumb.=すごく遅いが馬鹿じゃない。
才気にあふれとても衝撃をうけたホラー映画だった。

監督は、ゲットアウトのジョーダンピールとならんでスリラーの旗手と目されているが、Under the Silver Lake(2018)は、けっこう気負っていたと思う。悪くなかったけれど、なんとなく違う側面を見せようとして、それがやや滑っていた感があった。

この映画の前半部やThe Myth of the American Sleepover(2010)を見ると、ユルい日常を、ふわりとsexualに撮るのがうまい人だと思う。(うまく言えないが)
ホラー/スリラーの作家というより、異変がおこる青春もの──みたいな映画で駆ける人ではなかろうか。