津次郎

映画の感想+ブログ

柳の下の泥鰌 スペシャルアクターズ (2019年製作の映画)

スペシャルアクターズ [DVD]

3.5
複層にすることに、枷のようなものを感じる。

カメ止めは、観衆に見えていること、映画内で役者がやっていること、かれらが実は映画中映画をやっていること──三叉の複層構造があった。

だからおそらく、監督はそれをスタイルにしようとしている──のだと思うが、複層にしていることに、枷か縛りのようなものを感じる。わけである。

その複層構造が、けっきょくカメ止めの泥鰌をねらっている雰囲気──になってしまっている。
そうではなくて、おもしろい映画をつくればいい。と思うのだ。

また、もっときれいに撮れるはずだと思う。B級感を、あえて隠さないのだろうけれど、絵が安すぎる。役者も、舞台風のオーバーアクションではなく、もっと日常的でいいんじゃないだろうか。
カメ止めは、それで良かったけれど、使い分けてもいい気がした。

アクションの重なるシークエンスで、ちゃきちゃきした軽快な楽曲を流すのだが、それがカメ止めのような躍動を生まない。もっさりしている。

このとき、ハッと思った。やっぱ真魚は、あの躍動の立役者だった。と気づいたからだ。低予算にも、無名役者を使うことにも、異議はない。だけど、カメ止めの面白さってのは、構造だけではなくて、真魚はじめ、濱津隆之、どんぐり、しゅはまはるみらが担っていたところが大きかった──ことが、この二作目を見ることによって、分かった。

くわえて、真魚と濱津としゅはまが、抑圧されていたところを解き放たれる設定をもったキャラクターだった──ことにも着目したい。
カメ止めの六・七分目あたりからの、未曾有の躍動/高揚を再現しよう──の試みの困難さも、本作によって、分かった。わけである。

だけど。
嘘くさいし、つたないけれど、おもしろいものつくってやろう──っていう切実さがある。鬼才をきどっているれんちゅうの「日本映画」より、ずっといい。