津次郎

映画の感想+ブログ

ザ・ライダー(2017年製作の映画)

ザ・ライダー

4.0
MarvelやDCComicsはそれぞれ主力商品だが、新参でも光るものがあると、新作をまかせてしまう。と思う。
かなり大胆に大作をまかせる──ところに、クリエイティビティに賭ける意匠が感じられる。
女性監督の起用も目立つ。

ほとんどインディーだったAnna BodenとRyan Fleckのコンビ監督にCaptain Marvel(2019)をまかせている。
ハーレイクインのBirds of Prey(2020)のCathy Yanは長編が一本サンダンスで入賞しただけだった。
The New Mutants(2020)はJosh Booneが監督しているがThe Fault in Our Stars(2014)以外ではほぼ実績がない。
公開せまるヨハンセンのBlack WidowはLore(2012)やBerlin Syndrome(2017)の女流Cate Shortlandが監督している。

MarvelもDCComicsも、ぼうだいなお金をかけてつくられ、スタッフも一流なので、おとしてもダメダメってことはないけれど、選ばれた監督はアクション映画のプロパーってわけでもないから、それは、やはり映画に反映してくる。
Captain MarvelはAvengers的な通俗性とは一風ちがっていた。
Birds of Preyなんか、けっこう凡打だったと思う。
The New Mutantsは未見だが評価はよくない。

それでも、この傾向(=期待できる新進に大作を任せてしまうこと)は野心的だと思う。
SWも監督につねにあたらしい血を導入しているし、違う人がやれば、なにかが生まれるはず──と考えているビジネスは未来に接続する気がする。賛同できる。

Marvelは将来の製作予定がしっかり決まっていて、そのなかにこの映画の監督Chloé Zhaoもいた。
順当にいけば2021年完成で、タイトルがEternalsとなっていた。キャストにアンジェリーナジョリーとサルマハエックがいた。なんとマドンソクもいた。

Chloé Zhaoは中国の女性監督だが活動地は米。The Riderは、サンダンスをはじめとする、まっとうな映画祭で絶賛された。Marvelの抜擢は、なっとくができる。

世のなかの映画には、何処某で誰某に絶賛されました──という謳いが、星の数ほどでてくる。

知ってのとおり、そんなものには、なんの信憑性もない。
そんな泡沫の勲章に矜持をもっているのは、わが国の映画監督くらいなもんである。

映画のアワードに詳しくなくても、サンダンスのように観客主体の映画祭でなければ、その受賞に、意味/価値はまったくない。ことは、誰でも知っている。
Cathy Yanはサンダンスで獲っているから、ハーレイクインを任された──わけなのである。

映画監督が本物か、たんなる取り巻きの持ち上げか、見ればわかることだし、あたらしい血を導入したいMarvelだって、任せるのは本物だけだ。
わが国の映画監督は「海外で大絶賛された」人だらけなのに、Marvelからお呼びがかかったことはない。──そういうことだ。

The Riderには演技の訓練を受けた演技の専門家はひとりもいない。
にもかかわらず、この真実をかたる迫力。
ぜんぜんちがう映画だが、はちどりという韓国映画の監督との近親性を感じた。

Chloé Zhao監督の新作Nomadland(2020)はフランシスマクドーマンド!主演で、既に海外では絶賛されている。本邦は2021年の1月公開になっていた。待ちきれず、なんとなくThe Riderを見返してしまった次第。