津次郎

映画の感想+ブログ

人狼(2018年製作の映画)

人狼

3.0
原作は押井守のアニメーション人狼JIN-ROH(2000)。

かえりみて、この話は悲劇的宿命の主題がじつに韓国好みだった。

押井守のアニメを原作としているのに、むしろ韓国ノワールのように見えてしまう特質を持っていた。

この逆輸入に触れた結果、元のアニメが非常に希有なドラマだったことに気づいた。のだった。

舞台やストーリーは若干異なっているが、美意識の琴線が、すごく韓国ノワールを思わせる。
そしてこんな話は、ほかにない。韓国の実写化で、元アニメの独創性に気づいた。わけである。

新感染の2作目もカンドンウォンだったが、これもカンドンウォン。

切れ長の目に鍛えた長身、旧弊なファー付ジャケットを着ている姿はまるで君よ憤怒の~のころの高倉健のようであった。個人的には、じっさい監督が高倉健に寄せている気配さえ感じた。

美白なハンヒョジュと色男のチョンウソン。が共演し、かなり本格的なフォルムで実写している。
わたしはキムジウン監督+ビョンホンの甘い人生(2005)がだいすきで、いまでも繰り返し見る。

ただ、甘い人生はホントに傑作だったし、そういう過度なきたいを持っていると、これは、あそこまでの緊張はなかった。

個人的な想像だが、もともとストリーミングサービス(NetFlix)で放映することが決まっているならば、さいしょからディレクターズカットを放映するのではないだろうか。

よく知らないが、劇場公開をするばあい、いっぱんてきに映画は二時間の枠に収めようと編集するんじゃなかろうか。

しかし、NetFlixやShudderやAmazonで放映されるものならば、あえて監督はさいしょから実験/挑戦色のあるディレクターズカットをもってくると思う。
それがオクジャ(2017)や鋼鉄の雨(2018)やこの映画の尺にあらわれているような気がした──のである。

ざっぱくな感想だが、NetFlixの映画は、そんなにタイトに編集されていないような気がするのだ。

そういえば、じぶんはオクジャを見るためにNetFlixへ加入したのだった。
2017年のカンヌ映画祭で、審査委員長をつとめたペドロアルモドバル監督は、劇場公開のない映画は選ばれるべきでないと言ってオクジャを蹴ったのだった。
翌年2018年にバーニングが万引き家族に持ってかれて、翌年2019年についにパラサイトがとったわけである。

だけど、はやい段階から大作の配給先をNetFlixへぶち込んできた韓国の戦略は、いま見ると、つくづく間違っていなかったと思う。
つまり禍が終わっても、おそらくストリーミングサービスが、映画の初回公開先になる流れが残ると思った次第です。