津次郎

映画の感想+ブログ

いちばん重要なスキルかもしれない「なんとなく、うさんくさい」という見識

都市の企業にたいして、一定の短見をもっていると思います。

とりわけIT関連の先進企業には、田舎の労働者が、想像もできないような不文律があるんだろうなあ──と想像してみます。

おしゃれな人たちが仕事してて、横文字が使われいて、いろいろと合理化されていて、スマホで業務連絡とったりしてて、社長がnoteやっててホリエモンとか知り合いで・・・みたいな、ほんとしょうもない先入観ですが、もってしまっています。

とうぜんそれは、うさんくささでもあります。

世の中には、物も言わす働いている人たちがいます。その反対側には、きらびやかな世界があります。そこには、有名起業家や、あたまのきれるインフルエンサーや、しごとができそうなユーチューバーたちの耳馴染みのいい警句がならんでいます。

あの、そこはかとないうさんくささに似ています。

映画ザ・サークル(2017)で、メイ(エマワトソン)が面接を受けるシーンがあります。
面接者の質問が、解るような、解んないようなものでした。
わたしにとって、それは都市型のIT企業がもっている「うさんくささ」を体現していました。

ポールかジョンか。
マリオかソニックか。
内省的か社交的か。
寿司か栄養食品か。
マジックテープの財布は持ってる?・・・

そう。都市型のIT企業のうさんくささとは、人の人となりを知るのに、ポールかジョンか聞くような、意味不明の統計心理学です。

面接官は続けて僕とデートは?とたずねます。メイは気分を害して「不適切な質問です」と答えます。何が言いたかったのだろう?たんに不愉快なだけです。

ポールかジョンか、あるいはマリオかソニックかを選ばせて、その人の何かが判ると思いますか?いずれにせよ、えせな心理の乱用と慢心が感じられました。

映画ザ・サークルはフィクションですから、その面接も映画のために、多少色づけされているはずです。いくらなんでも、このような面接が、現状IT企業でおこなわれている──とは思いません。

ただし、わたしがこのシーンから感じたのは「あ~いるわ。こういうやつ」でした。
わたしは、かつて、このような意味不明の優位性と自信をたずさえた面接官に、さんざん出会いました。
現代であれば、なおさら、そうだろう。と思います。
女性であれば、さらに、そうだろう、とも思います。

映画の面接官は、その表情から「ぼくはね、なにもかもわかっているんですよ」という感じがにじみ出ていました。
それは、面接という立場のちがいが形成してしまうマウンティングを、彼がわかっていないからです。

すこし考えればわかることですが、面接官がその会社に入りたがっている人をいじる意識は、権力者がその権勢や優位をかさにセクハラする意識と、一ミリも違いません。かんぜんに一致する慢心なのです。

そんなことすらわかっていない人間が面接をやっている時点で、そんな会社はペケです。いずれ何かやらかして捕まる会社です。

むかし「マネーの虎」という有名なテレビ番組がありました。

『志願者による自分がやりたい事業や、願望を抱く夢に関するプレゼンテーションに対して、「マネーの虎」と呼ばれる大物起業家達が自腹で現金を出資するか否かの判断を下す。』(byウィキペディア)という番組でした。

大物起業家で自腹という設定ではありますが、この面接が完全マウンティングのHarsh(手厳しい)なしろものでした。
甘くみている人に、ガッツリと厳しいことを言っちゃうのが番組の見所でした。
しかし今となってみると「マネーの虎」に出ていた「大物起業家」たちはたいてい倒産か廃業しています。

わたしは「マネーの虎」が大嫌いでしたし「大物起業家」の多くが、その後敗走したのは当然だと思っています。やっぱりそんな程度の人たちでした。

人と対峙したとき、自分と相手の優勢と劣勢、その位相を顧慮できないひとはたんなるバカです。それに、人間関係はやり込めるかやり込められるか、常にひろゆきと討論しなきゃならないような局面で成り立っているわけではありません。

起業家、インフルエンサー、ユーチューバーたちが「出来ないヤツに企業はムリ」って言うのはホントです。まちがいありません。ただし、その前に「人の気持ちを考えられない奴に人間はムリ」っていう大前提があります。

人は非情なときもなければいけませんし、やるときはやらなければダメですが、最終的には人間性です。

「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は乗れ。買いたくない人は乗らなくていい」
04年5月、日本マクドナルドのトップに就任した原田泳幸氏(72)は、幹部を集めこう宣言した。自身の方針に従わない者は去れ。社員にそう伝えた、剛腕リーダーの強烈なメッセージだったーー。あれから17年。2月6日、警視庁渋谷署は原田氏が容疑者として逮捕されたと発表した。(2021/02/08、FRIDAYデジタルより)

アップル、マクドナルド、ベネッセ、さいきんGong chaにいた超有名な代打社長さんがタイホされました。壮年で彼を知らない人はいません。およそ、日本もっとも有名な建て直し専門の敏腕経営者でした。
有能で儲けることができても奥さん殴ってたら意味も価値もありません。

イケイケな人物が脚光をあび、知名度と価値が直結してしまいがちです。そんな時代だからこそ、なんかうさんくさいぞっていう懐疑心は、とても必要だと思います。

ただし「なんとなくうさんくさい」を誰にも言ってはいけません。相手が人気者のばあい疎外されますよ。黙って去りましょう。いずれわかることです。(言っちゃいけないのは、ハズレってばあいもあるからですw。)