津次郎

映画の感想+ブログ

エルファニングの魅力 ティーンスピリット (2018年製作の映画)

ティーンスピリット [DVD]

2.8
個人てきには、どっちかというとダコタである。
が、なにしろエルの出演作が目白押しである。またエルか、これもエルか、あれもエルかみたいな、エル供給過多な気配は、正直なところ、ある。
ただ、ぜんぶ網羅したわけじゃないが、エルの出演作は、どれもなんかいまいち。な気がしている。
とはいえエルファニングには文句はない。

日本とちがって、かわいいだけの役者は、ハリウッドにはいない。エルの出演作をごらんになった方はだれもが認めるだろうが、演技力があり、役作りもする。かのじょ自身にはもんだいがないけれど、作品に、これという決定打がない。のである。

決定打がないことは(成人してからの)ダコタにもいえる。
似てない姉妹だなと、しばしば思う。が、父母は同じ。
だけど、顔のつくりも、演じる役どころも、けっこう違う。
しかし、ふたりとも可憐な見た目に反して、芯がある。伊達に女優やってるわけじゃない。
そもそも子役スタートゆえ、その若さに反して既に20年のキャリアがある。「かわいい」ってのも、あんがい失礼なハナシ、かもしれない。
(2021年時22歳。『2歳8か月のときに芸能活動をスタートする。』とwikiに書いてあった)

わるくない映画だった。
わたしもユーチューブで海外の「スター誕生系」動画を眺めるのが好きだが、あれらのステージでは、出演者たちの事情や内的葛藤は、ほとんど見えない。この映画は謂わばそれを描いている。グレートヴォイスを持っている市井の娘がコンペティションにうち勝って、スターになる。わたしが敬愛するAdeleだって、あるいは他の多数のスターたちも、必ずしも恵まれた家庭環境に育ったわけじゃない。番組の挑戦者たちは陽気に見えるけれど、とうぜん彼/彼女が背負っているものはあるだろう。その内幕を、映画は描いていた。
エルファニングは、きらびやかなスターオーラを出せる一方、そこらへんの娘にもなれる。軽くも重くもなれる。その演技力がいかんなく発揮されていた。と思う。

ところで日本で「スター誕生系」(この言い方がどうしようもなく古いことは承知しています)番組が流行らない理由をご存知ですか?理由は、謙虚な審査員がいないから。日本でスタ誕番組を設定し、著名なミュージシャンまたは業界人を審査役に据えると、そいつは必ずマウントをとってきます。マネーの虎ってご存知ですよね。あれは出資するという前提があったからHarshな審査だったわけですが、日本での芸道事では才能よりも先に「俺/私のがキャリアが上」という上下関係が前提です。つまり先輩貴兄たちは、有望な新人が芽を出そうとしていたら、まずそれを潰しにかかります、その芽潰しを乗り越えてこい──を基本育成スタンスにしているわけ。そんな不遜な輩しかいない業界で、スタ誕が成立するはずがありません。イカ天(これも古いけど)でもM1でも、重鎮とか大先輩とかのHarshな否定発言が、つねに紛糾しますよね。日本にスター誕生番組がない理由はそこに尽きます。

それはともかく。わるくないけど映画はまあまあ。というところ。
ですが、imdb見たら俳優の初回監督作となっていました。あちら(ハリウッド)では俳優が監督業へ回って、じっさい監督をこなせてしまう──という日本じゃ絶対にありえない現象が多々あります。とはいえ凡打なのは、エルはいい演技だけど、映画の性質上、勝ち抜けるほどの歌唱力を感じないwところに課題があるんじゃなかろうか。また、どの画も暗いのはやや気になりました。

個人てきに、もっとも楽しかったエルの主演作は、映画ではないけれどElle Fanning's Fan FantasyというVogue主宰のショートフィルム。ランニングタイム2分。YouTubeで簡単に見られます。