津次郎

映画の感想+ブログ

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド(2018年製作の映画)

5.0
BBCおよび帝国戦争博物館が収蔵する第一次世界大戦に参戦した英国退役軍人、百数十名分のインタビューに基づくドキュメンタリー。

募兵に呼応し6週間の訓練を経て前線へ。生々しい戦闘から終戦、復員までをインタビューとカラー化した当時の映像で追っている。

戦地はフランスとドイツの国境。荒野に塹壕が巡っている。1917の内幕映画と言っていい。あるいはポールマッカートニーのPipe Of PeaceのPVならもっと近い。

無邪気な志願兵たち。戦争にためらいがない。マークトウェインの失敗に終わった行軍の個人史のような人情味。なんか面白いことがあるかもしれない──およそ他愛ない動機で参戦した青年たち。

戦場は泥濘まみれ。泥と糞と屍体と紅茶とライフルと銃剣が一緒くた。戦友を思い遣り境遇に不服を言わず、どうせ死んじまうんだ──諦観が恐怖をしのぐ。みな異様なほど陽気で勇敢だった。

突撃時機関銃の掃射によってほとんどがしぬ。敵地で地獄のような肉弾戦。国のために尽くし命からがら生き延びても復員すると社会から疎外される。はじめから終わりまで息を呑むリアリティだった。

いまロシアのウクライナ侵攻(2022/02/24~)の只中にある。

ウクライナでは総動員が発令されていて市民が戦っている。

わたしは戦えるだろうか、と考える。この侵攻がはじまってから「おれは戦えるのか」ってことを、よく考える。

ウクライナの対応について、抗戦せず降伏すればよい──そのほうが多くの命も助かり被害も少ない、との意見がある。それが日本国内では結構な定見になっている。

が、東スラブの歴史を知らず、何十年も戦争を経験していないわたしたちが、他国の方針にベキ論を繰り広げるのはおかしい。

侵攻がはじまってから国防論が紛糾しているが、国防の核心はわたし/あなたは戦うのか──ってこと、ではなかろうか。国家間のシステムや核武装に守られる──と考えるなら自滅するだけのような気がする。

どこの誰であれ、どんな思想信条であれ、戦場にはシンプルな人権がある。一緒に戦う者なら信頼できるってこと。戦ったことがある者がはじめて意見を言える。

俺は戦えるんだろうかとよく考える。考えてるからって、なんの意味もないが、考えてしまう。