津次郎

映画の感想+ブログ

文春砲をカワセるか 2つ目の窓 (2014年製作の映画)

2つ目の窓

1.0
思わせぶり。
映画に具体性がないのは、もともと具体的ではないから。
「なんかありそう」で持っていくいつもの河瀬映画でした。
強迫されながら演じた俳優方々に同情を禁じえません。

とさつは通常スタンさせてから深く喉を切り裂いてしめますが、ここではわざと生ごろしにして鳴き声をひろっています。まさに河瀬スタイルの演出でした。

またじぶんは長らく映画を見ていますが未成年が肌を合わせるのは海外映画でさえ一つも見たことがありません。
倫理コードを逸脱し、ふつうに非常識でした。0点。

以下、さいきん“大活躍”されている河瀬直美氏についてです。(憶測を含みます)

またパワハラ報道が出ました。
先月(2022/04)朝が来るの撮影中、スタッフを蹴ったという文春砲がありました。
今月に入って俳優の松崎悠希氏が自身のSNS上にて、本作の撮影中、俳優を罵倒しながら演技をつけている河瀬監督の動画を告発しました。

こんどのはふたたび文春によるすっぱ抜きですが、いちばんエグいです。
五十男のわたしをも震え上がらせる内容でした。

『新たにわかった河瀬監督の暴行は、2015年10月下旬、組画の事務所内で起きた。
複数の事務所関係者の証言によると、経緯は次の通りだ。
河瀬監督は奈良市内の雑居ビル2Fにある組画のオフィスで、男性職員Aさんの到着を待っていた。Aさんが部屋に足を踏み入れた瞬間、河瀬監督は彼に向かって真っすぐ歩いてゆく。そして固く拳を握り、いきなり顔面を殴りつけたのだ。
Aさんはその場に崩れ落ちたが、なおも河瀬監督は暴行をやめようとしない。Aさんはなだめながら逃げ回るが、河瀬監督はオフィスの中を執拗に追いかけ続けた。
「居合わせた数人の職員は恐怖のあまり、別のフロアに逃げ出しました。しばらくして戻ると、抵抗せずに一方的に殴られたAさんの顔は腫れ上がっていたそうです」(事務所関係者)Aさんは荷物をまとめオフィスを去ると、そのまま退職した。』
(文春オンラインより)

これまでの同監督のパワハラ報道は、いずれも過去の振るまいが掘り起こされたものであり、時系列も順序立っていません。

これは今まで強権スタイルで周囲をねじ伏せてきたものが、さいきんの映画人の悪行暴露の潮流に乗って、少しずつメッキが剥がれてきた──と見ていいでしょう。
よって報道されたものは氷山の一角にすぎないと思われます。もっと出るでしょう。

ところで今回の文春砲は、自身が監督した「東京2020オリンピック SIDE:A」の公開のためカンヌ映画祭へ旅立ったのとほぼ同タイミングでした。

同日(2022/05/23)は東京TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた「東京2020オリンピック SIDE:A」の完成披露試写会でもありました。

『(中略)その上で「スポーツにおいて、最高の晴れ舞台である五輪において、金メダルを取ることは最高の姿だと思います。けれども、人生の金メダリストであることが、私たち、全ての人たちに与えられた舞台。この映画を見て、アスリートだけでなく、いろいろな苦悩、悲しみ…そういう場にいて、恐怖で心地よくない場所にいたとしても、必ず舞台が用意されていることを信じていたい。そういう気持ちを受け取ってもらえると、この映画が幸せになれる」と、時に涙声になりながら熱く語り、カンヌに向かった。』
(日刊スポーツより)

登壇した河瀬監督の公述のいちぶですが、何を言っているのか理解できますか?
個人的には映画監督たる人物がじぶんの熱弁に感化されて泣いてしまう──そのすさまじい自意識過剰に畏怖を感じました。

自画自賛し、まさに意気揚々と南仏へ旅立った監督ですが、ともに喜んでくれるクルーor仲間がいるのでしょうか。

映画は一人だけではつくることができません。

さいしょのパワハラ報道が出る前から河瀬監督には疑惑がつきまとっていました。
ことの始まりは昨年(2021)末に放送されたNHKの番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、五輪反対デモの参加者が金銭をもらって動員されたとする偽りの内容の字幕が流された件──でした。

詳細についてはぐぐってもらえばいいとして、個人的に着目したのはこの件で河瀬監督と同列で引き合いになったスタッフ兼監督です。
長時間を多岐多様に撮るドキュメンタリー映画なので監督が複数人必要になるのですが、監督経験がある人をスタッフとして雇い、それで補います。
そのスタッフとして島田角栄という名が出てきます。ぐぐれば判りますがこの人はアングラ映画を連作するZ級の作家です。もちろん、そのこと自体に問題はありません。

ただし。
国策とすら言える五輪のドキュメンタリー映画のパートナー監督にZ級映画の監督が就いているのはなぜでしょう?
島田氏の映画は(すべて)鳥居みゆきが出刃をもってうろつくような映画です。補助監督とはいえ適性があるはずです。率直に言ってしまうと、もっとまともな人物はいなかったのか?──ということです。
発注元は日本国ですよ。

もしかしたら河瀬監督と共同作業をやってくれる映画人がいなかったのではないでしょうか。

わが国で演出力を有する映画監督とは李相日であり中村義洋であり原田眞人であり是枝裕和・・・であり、あるいはテレビ畑の監督(福澤克雄土井裕泰君塚良一本広克行鈴木雅之・・・)たちです。
ところが東京オリンピックは、記録映画も開閉会式も、それらの有能な人々をかすりもしていません。

ごぞんじのとおり五輪に集まった「演出家」は「渡辺直美をブタ=オリンピッグ」とか、反ユダヤジョークの芸人とか、加虐趣味のミュージシャンとか、です。

けっきょく記録映画の共同作業者さえアングラ映画の監督です。
もともと低レベルの人たちを集めたことに加え、河瀬直美と組める者はいません。やりたくないのです。つまり彼女のイキった女帝スタンスは、界隈ではすでに定説だったとみていいはずです。

個人的な深読みですが3月(2022/03)、是枝裕和/諏訪敦彦/岨手由貴子/西川美和/深田晃司/舩橋淳が連名で、映画業界のハラスメント防止に向けた要望書を文化庁に提出したのは、増長する河瀬直美を牽制する意味があったのでは──とさえ思っています。
これは榊英雄のセクハラのタイミングで提出されていますが、それはカモフラージュであり、おそらく6名の本星は暴れまくる河瀬直美だったのではないか、と思うのです。

もういちど文春の記事を見てみましょう。
『Aさんが部屋に足を踏み入れた瞬間、河瀬監督は彼に向かって真っすぐ歩いてゆく。そして固く拳を握り、いきなり顔面を殴りつけたのだ。Aさんはその場に崩れ落ちたが、なおも河瀬監督は暴行をやめようとしない。Aさんはなだめながら逃げ回るが、河瀬監督はオフィスの中を執拗に追いかけ続けた。』
・・・。
これ、ホラー映画のト書きじゃありませんよ。

この文春オンラインの引用は無料部分の前段記事です。
有料記事でさらにえげつない裸の王様「河瀬直美」の暴走記録があります。周囲のすべてを見下し、走り去ったあとには全員が去っていく、ほとんど漫画のごとき傲岸女の来歴が書かれています。

見出しはこうなっていました。
『▶「人を部品のように」カンヌ受賞作主演が3時間語った
▶女性スタッフを深夜のNYに締め出し「帰ってくるな」
▶仕出しスタッフに一目惚れして主演抜擢、破局後に“追放”
▶ヒロインに“イジメ演出”「徹底的に無視」「点滴5回」
▶「黒澤明、大島渚の次の世代が私」“世界のカワセ”と豪語』
(文春オンラインの見出しより)(なお有料部分は220円でした)

とはいえカンヌ映画祭の威光を盲信し、河瀬直美に大役をインプットしつづけた周りにも罪があるような気がします。

4月(2022)には東京大学入学式に招かれています。その支離滅裂な祝辞が炎上しました。
昨年(2021)にはユネスコの親善大使に日本人女性ではじめて任命されています。

持ち上げてはいけない人を持ち上げ、持ち上げ続けたのです。
結果のぼせ上がりどんどん酷くなりついに人々が告発をはじめたのです。
自然に湧くパワハラ報道はありません。
人を蔑ろ(ないがしろ)にして生きて無事でいられるわけがありません。

さて、今年のカンヌ(2022/第75回)はカメ止めの仏版「キャメ止め」もあったし、(韓国映画としてのエントリーですが)是枝裕和もいるし、叩き上げの河瀬直美とは真逆の来歴をもつ帰国子女型の早川千絵という人もいます。いずれも高い評価を浴びています。

なにが言いたいのかというと今回河瀬直美は彼女が思い描いたとおりの脚光を浴びることができないんじゃなかろうか──と思うわけです。

で、他の人や映画が脚光浴びまくってじぶんは蚊帳の外になったら・・・またぷっつんして手か足がでてしまうのではないかと心配──ていうか楽しみです。

後記:カンヌでの極彩色の衣装が「主役はわたしよ」と絶叫していました。コワかったです。その画と文春砲が並列されています。称讃と奈落が同時多発。なかなかのエンターティナーだと思いました。