津次郎

映画の感想+ブログ

ヤッピーを誘拐 サムシング・ワイルド (1986年製作の映画)

3.6
レイリオッタの訃報(2022/05/26)に触れてこれを書いた。
レイリオッタをはじめて見たのは本作サムシングワイルドだった。

見たのは映画館ではなく(レンタルの)VHSだった(と思う)が公開からさほど離れていなかった。
当時メラニーグリフィスはアイドルのような人気があった。
特長はふしだらな雰囲気とアニメ声。
「しなだれかかる」という日本語があるがグリフィスはその言葉にピッタリくる。
媚びた声音で「しなだれかかっ」てくる、ちょっと面倒くさいところもあるが、愛嬌のある女──ほとんどの役がそれだったと思う。

ジョナサンデミというと羊たちの沈黙だが、じぶんにとってはこの映画やMarried to the Mobの印象がある。商業映画の監督で、本作の辺りがいちばんノッている時期だった。と思う。

はじめて見たレイリオッタはとても怖かった。
「こわもて」ということばのまんまだった。
がんらい悪人スタートした俳優だった。

こわもての系譜というのがある。
ウィドマーク、パランス、ボーグナイン、ニコルソン、トレホ、デフォー、キーファーサザーランド・・・。リオッタも強烈な悪役スタートの俳優だった。
が、かえりみると純粋な悪役は少なかった。個人的な視聴範囲内だがサムシングワイルドくらいしかおぼえがない。

リオッタにはどこか人なつこい気配があった。
こわもてなのに、笑うと得も言われぬ愛嬌がみえる人だった。YouTubeにジョーペシとリオッタのグッドフェローズからの切り抜き動画がある。(=ペシがブラフ怒りしてリオッタをドッキリさせるやつ)なんど見ても楽しい。スコセッシの起用がうなずける。

さいきんだとマリッジストーリー(2019)でのリオッタ。
じぶんはマリッジストーリーのレビューにこう書いていた。

『また、映画は当事者の争いであると同時に、それぞれの弁護依頼人リオッタとダーンの対決でもあった。
気の滅入る離婚話なので、依頼人の人物像は思い切った誇張をしている──ように感じた。
ノラ(ダーン)は年甲斐もなくフェミニンで、ジェイ(リオッタ)は旧弊な頑固親父である。どちらも、持論に凝り固まっていて、自己完結していて、すごく強い。

レイリオッタはサムシングワイルドから惹かれている。饒舌になって紅潮してくる様子が笑えた。強面とトロい滑舌が好きだ。およそ世界一分かり易い短気顔で、高揚すると、こめかみに漫画チックな『井』が浮かぶ。
ふたりとも主役を食いそうな勢いだった。』

Powder Blue(2009)という映画のリオッタもなんとなく覚えている。こわもてだが善人をやるとすごくよかった。

一方ジェフダニエルズはどこに出ていてもこれと似た気弱な感じのヤッピーだった。

VODに見あたらなかった。ゆえに記憶ベースだが、デミは当時とてもおしゃれな監督だった。じぶんは少年だったがすごくおしゃれな映画としてこれやMarried to the Mobを見た記憶がある。おそらく中野翠もこれをほめていたはずだ。

伝えるところではリオッタは撮影のため滞在していたドミニカ共和国のホテルの一室で亡くなっていた。まだ67歳だった。

訃報でリオッタをはじめて見たこの映画を思い出した。この映画の内容というより、この映画でリオッタをはじめて見たことを思いだした。どうか安らかに。