津次郎

映画の感想+ブログ

俳優ディンクレイジに遭遇 ステーション エージェント (2003年製作の映画)


3.9
U2のAllIWantIsYou。臆面もなくアメリカかぶれを打ち出したライブの喧噪と熱狂のあと、まるで荒海がサァーッと退いて海が凪ぐみたいにエッジの静寧なギターから入ってくるRattleAndHum最後の曲でした。
ピーターディンクレイジが失恋の道化師を演じているプロモーションビデオが深夜のMTVで繰り返し放映されていて、相棒の怪力男が、小人の叶わない恋を気に病む、短いなかにも簡潔で印象的な筋がありました。1988年か89年のことです。
そのあと主演をはるピーターディンクレイジを見たのがこの映画です。Spotlightの素晴らしさに触発されてTom McCarthyの仕事を辿っていたのがきっかけでしたが、未公開に加えてソースがなく、見るまでに時間がかかったのです。

アダムサンドラー主演のThe Cobbler(2014)がアメリカの辛辣な批評家から嵐のような酷評を浴び、同監督唯一の汚点、みたいに言われていたのも、Tom McCarthyを遡るきっかけでした。あに図らんや、The Visitor(2007)もWin Win(2011)も確かに見事な映画でした。The Cobblerも嫌いではありません。
そんなTom McCarthyの原点として、彼が持っている、直向き/冷静/慈愛/哀感がThe Station Agentには詰まっていると思います。

今や押しも押されもせぬハリウッドスターですが、軟骨発育不全のピーターディンクレイジは身長が135cm、その低身長をなんの説明もなしに対等と見なし友情につなげることのできる大人たちの姿が、この映画の優しさとして根底にあると思います。

私たちはしばしば、なぜセサミストリートには車椅子のゲストやダウン症の子や発達障害のキャラクターや毎回肌の色や年齢が異なるホストが出てくるのかを、アメリカ人の寛容さに触れて知らされることがあります。
セサミストリートはダイバーシティをつうじて、自分とは違う人を受け容れられる素養を持ちなさいと言っているのです。

とはいえ、フィンは常に奇異の目を向けてくる世間に嫌気して隠遁生活するのです。一般社会は寛容ではありません。でも、だからこそフィン、オリヴィア、ジョー三者の友情がかけがえのないものに感じられます。
Tom McCarthyはこれがデビュー作ですが、何年も監督業をやってきたかのように淡々とした語り口でした。
柔和な老け顔のパトリシアクラークソンとコリンファレルをラテンにしたようなBobbyCannavaleも好演でした。とりわけこの映画のパトリシアクラークソンはとても艶っぽかったです。