津次郎

映画の感想+ブログ

レイトオータム(2010年製作の映画)

3.0
カンヌ国際映画祭(2022/05)のすこし前からパク・チャヌク監督のDecision to Leave(別れる決心)のトレイラーが公開されていた。

パク・ヘイルとタン・ウェイが出ていた。韓国と香港。呉越同舟の感ある、とてもそそるトレイラーだった。

賞レースの結果は、下馬評とちがって、Decision to Leaveでもベイビーブローカーでもクローネンバーグでもなかったが、パク・チャヌクは監督賞をとった。

パク・ヘイルは韓国映画でよく見かける俳優だ。が、タン・ウェイを見たのはこの映画レイトオータムだけだった。だがしっかり焼き付いていた。

みょうに忘れられない映画だった。ヒョンビンとの共演による呉越に加え、ふたりは、まったく違う雰囲気を持っていた。だから忘れていなかった。

ヒョンビンといえばさいきん愛の不時着の縁でソン・イェジンと結婚して盛り上がった人気者だが、レイトオータムを見た当時は、ほぼ初見だった。

タン・ウェイは時として地獄を見てきたような暗い表情と、鋭い眼光をする人だった。
それに対してヒョンビンは甘いマスクの軽い男だった。
「まったく違う雰囲気」とは、そういうこと。

すなわち本作レイトオータムの違和感は文芸気配をぶちこわしにするかのように軽いヒョンビンだった。
逆にタン・ウェイはさいしょから重厚な文芸気配をもっていた。顔がいいし暗い雰囲気が好ましかった。
そんな違うふたりが、じょじょに溶解していき、作品としても悪くないところへ着地する。

しかし個人的には、やはりヒョンビンがミスキャストだったと思う。
ヒョンビンがいけないのではなく、キャスティングがいけない)
タン・ウェイの「重み」と、ぜんぜん釣り合っていなかった。

逆に言えばタン・ウェイでなければ、ヒョンビンでもよかったはずだが、レイトオータムの文芸気配はタン・ウェイがもたらしているもの──なのだった。

けっきょくレイトオータムを見た人はタン・ウェイが脳裏に焼き付くだろう。

焼き付いている人なら、パク・チャヌクのDecision to Leaveのトレイラーに「おっ」となったはずだ。
そこに、あの暗い眼光のタン・ウェイがいた。
ぜんぜん変わっていないのだった。
すごく見たくなった。
(もちろんベイビーブローカーも見たいです。)

ところで今年のカンヌ(第75回)の賞レースはコロナ禍の反動による大きな盛り上がりに反して、平均値な映画が横並びしたと評されていた。

仏大手紙のレース予想も外れていた。
(監督ではなく俳優が審査委員長に就いた場合、予想が外れやすいような気がした。
今回(第75回)の審査委員長はフランスの俳優バンサン・ランドン。ランドンに決まる前は、ペネロペ・クルスが打診されていたが都合で急遽ランドンになったという。)

カンヌはクローネンバーグの新作を呼び物にしていたけれど、あるていどの映画ファンならクローネンバーグのライティングハイが今ではないこともかれの玉石混交も知っているはずだ。

またカンヌにおける拍手(standing ovations)の長さは、映画がコンシューマに下りたあと各レビューサイト等でつけられる値と、まるで一致しない。

海外のニュースサイトQuartzの記事によると過去最長はパンズラビリンス(2006)の22分だそうだ。

The Neon Demon(2016)の17分もすごいが、ポスト紙が「セルロイドの恥ずかしい無駄」と酷評したニコール・キッドマン主演のThe Paperboy(2012)さえ15分を記録したという。

それはさておき、過去にも一度あったが、カンヌの候補作がどんぐりの背比べになったとき、強いのがリューベン・オストルンドなのだった。

コンペティション部門の最高賞パルムドールを受賞したのは、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」でも5年前に同賞を手にしたリューベン・オストルンドの最新作「Triangle of Sadness(原題)」。同作では、豪華客船での船旅に招かれたモデルのカップルが、嵐によってほかの裕福な乗客たちとともに無人島へ取り残されるさまが描かれる。』
(ネット記事より)

5年前、2017年の第70回のカンヌ国際映画祭は「VOD配信の映画をどう扱うか」論争の只中にあった。つまりNetflix作品を入賞させるか否か、ということだ。

『私がオープンな考えを持っていないとか、新しいテクノロジーや可能性に寛容ではないとか、そういうことではない。しかし、私が生きている限りは新しい世代が気が付いていないことーー映画は大画面で観るのが前提だという考えを曲げるつもりはない』

その回の審査員長、ペドロ・アルモドバル監督は以上のように述べ、Netflixは対象外の方向性を示した。
しかし、そうなってみると『オクジャ/Okja』も『マイヤーウィッツ家の人々』も候補から外れてしまった。審査は難航したはずである。

結果、本年同様リューベン・オストルンドがとった。
しかし、この超ラッキー男の映画、どうやったら見られるのだろうか。──という話。