津次郎

映画の感想+ブログ

への字眉 ブラッディ・リベンジ (2017年製作の映画)

ブラッディ・リベンジ(字幕版)

2.5
ロートルな映画ファンなら記憶があると思うがイーストウッドが愛した人と言えばソンドラロックである。病的なほど華奢(きゃしゃ)で眼がギョロリと大きい。のっぽなイーストウッドとならぶとハリーキャラハンにつかまった家出少女に見えた。

この映画の主演で、イーストウッドの娘と紹介されていたフランチェスカイーストウッドの母親をてっきりソンドラロックだと思っていた。ぎょろ目がとても似ている。
ところが検索してみると母親はフランシスフィッシャー。ふたりは1990年から1994年までパートナーだった。
知って、あらためて見るとフランチェスカはフランシスフィッシャーに瓜二つだった。

イーストウッドの妻orパートナーは現在にいたるまで華々しく変遷するがロックとの間には子供がいなかった。(ソンドラロックは2018年11月3日に亡くなっている。)

イーストウッドには婚外子ふくめ8人の子がいて、フランチェスカは7人目。1993年生まれの28歳(2022)で、出生時イーストウッドは64歳、フィッシャーは42歳だった。

──

レイプされた女が男たちに復讐するという定番プロットをもったローバジェット映画。
──だが海外批評サイトで想像を上回る高評がついていた。(RottenTomatoes80%と86%、IMDB5.9)

その理由はよくわからない。
Rotten Tomatoesの批評家たちは多数がフランチェスカイーストウッドの魅力をあげている。たしかに魅力的だったがその魅力によってドラマの飛躍と短絡がスポイルされているとは思えない。

映画はプロミシング・ヤング・ウーマンとおなじフェミニズム的メッセージを持っているが、映画から受ける印象はほとんどI spit on your Graveである。
好むと好まざるにかかわらず、やられる女がセクシーを提供するとき、メッセージは娯楽に置き換わる。

つまり、総じてB級映画然とした本作の海外評がプロミシング・ヤング・ウーマンと同じようなフェミニズムの地平で語られていたことに驚いた──のだった。

主人公ノエル(フランチェスカイーストウッド)は美大院生である。
原題となっているM.F.A.とは主人公が取得する学位「Master of Fine Arts」に由来している。意味深な原題を、ありふれたB級映画タイトル「ブラッディ・リベンジ」にしたのは、とりもなおさずB級映画だから、だろう。
じぶんは邦題を鋭くけなすことがあるが、これはBloody Revengeでぜんぜん大丈夫だと思った。

英語版のwikiに、『シカゴ・リーダーのリア・ピケットは、フランチェスカ・イーストウッドの演技を「魅力的で説得力がある」と称賛したが、キャラクターの「ウォールフラワーから暗殺者への信じられないほど素早い切り替え」を批判した。』──とあった。

「ウォールフラワーから暗殺者への信じられないほど素早い切り替え」の「wallflower」とは、「ダンスパーティーで誰にも相手にされずに独りぼっちで壁際にいる人」のことだそうだ。転じて「ぼっち」の俗称といえる。
チョボスキー監督の映画The Perks of Being a Wallflower(2012)のwallflowerと同じで、周囲に溶け込めない人や、経験が浅く無垢でおどおどした人を嘲弄的にさしている。(と思われる。)

シカゴリーダーの記者が「ウォールフラワーから暗殺者への信じられないほど素早い切り替え」と指摘しているのは、まったくの未通女然とした美大院生ノエルが、犯られた途端に“ドラゴン・タトゥーの女”みたいなプロフェッショナルに変わってしまう飛躍のこと。
ようするにI spit on your Grave系の復讐劇に必ずあらわれる「いきなり男より強くなる女」を皮肉っているわけ。