津次郎

映画の感想+ブログ

漫画を貶めるレベル バイオレンスアクション (2022年製作の映画)

バイオレンスアクション

1.0
プロモーション用の画像に「主演・橋本環奈♡♡♡」とデカデカあった。

ようするにこれはおまえら橋本環奈が出てるんだぞというマーケティングで、このマーケティングに対しておまえらであるわれわれ観衆は「ええっあのひゃくねんにひとりと言われた橋本環奈が主演だと!?」と呼応し、是が非でも見たくなるであろう──という製作側の狙いが「主演・橋本環奈♡♡♡」だった。
すなわち橋本環奈主演と謳えば釣れるはずという読みがハートマーク三つであり、ぎゃくに言うと他の売りはなにもなかった。

原作漫画に罪はないし漫画ならば少女は素材にすぎなかった。おそらくKITEのように非情/暴力/エロスと少女のアンバランスを狙ったものに違いないし、それが二次元ならば事務所的制約もスターバリューもかえりみる必要のない自由自在な表現ができたはずだった。

ところが実写で橋本環奈を使うとなれば話はぜんぜんちがう。

ほれほれおまえら橋本環奈だぞとにんじんをぶらさげられた観衆は漫画で表現されていたラディカルがどれほど希釈されていようとも「ひゃくねんにいちどのご尊顔をおがめておらたちは至福でごぜえますだよありがたや」と言って喜んで見るだろう──という希望的観測に貫かれた映画だった。

しかし(もちろん)そんなことは「主演・橋本環奈♡♡♡」とデカデカ印字されたプロモーション画像をひとめ見ただけで容易に想像できたことだった。

バイトで殺し屋やってる簿記専門学校生という設定は表現に制約のない漫画であれば暴れない世界観だった。

だがそういった暴力系のファンタジーを実写にすると予算やアイデアとのたたかいになる。

言うまでもなく女が血みどろで戦うのは映画としては陳套な設定だ。だから特異性・工夫が盛り込まれる──リュックベッソンでもバイオハザードでもドラゴンタトゥーでも・・・、あるいはキルビルとか悪女とかアトミックブロンドとかTheWitch魔女とかケイトとかアリータとか・・・、綺麗だったり幼かったりの女性が不釣り合いな死闘をみせるのは映画としては死ぬほどありふれた材料だからこそ、厖大な予算やアイデアが投じられるのだ。

でもけっきょくそこまで高い志じゃないし橋本環奈をあてときゃなんとなく釣れてNetflixで稼げるっしょという製作動機ゆえにこの映画はあれセーラー服と機関銃またリメイクしたんだっけという既視感というか笑えなさすぎるにもかかわらずえんえんと提供される笑いに耐え勝手に感極まっていく出演陣から置いてけ堀を喰う想定内量産型日本映画になっていたわけである。とうぜんであろう。

・・・。

つーか演出も予算も演技も台詞も編集も悲惨すぎる。スベりまくるし外しまくる。が、それ以前の問題。死霊の盆踊りにレビューなんかつけないでしょ。だいたい橋本環奈に魅力がなかった。最大の被害者は彼女だろう。

こんなところへ主演して低評価下される橋本環奈は被害者でもあるわけだがそれはさして逸材じゃない彼女が顔だけで売れてしまったことの弊害でもある。橋本環奈主演にハートマークを三つ付けている時点で映画はむしろおわこんを烙印していたようなもんだった。