津次郎

映画の感想+ブログ

アデュー(2019年製作の映画)

アデュー

5.0
動画配信サービスのなかには、ショートフィルムが交じっている。ことがある。

フルサイズの映画とショートフィルム。

その関係や位相について、よくわからないが、多くの映画監督が、その履歴のはじめに、ショートフィルムをつくっている。

小説における、長編と短編のような関係性だろうか?
おそらく作家になろうとする人も、短篇からはじめる──のではなかろうか。

ユーチューブを見ていると、なにげなく見たショートフィルムが、とてもよくできていることがある。

わたしはホラーショートフィルムに特化したALTERにチャンネル登録しているが、短いことは、総じて、クオリティが高くなる傾向をもたらしている。

ふつうに考えて、短さが、つくりやすさに直結しているのは間違いないだろう。
だから傑出する可能性も高い。

だが、がんらい映画をつくるのがへたっぴな人が、短くつくったことで、うまく出来た──ってことは、有り得ない。

これが言いたくて論点をズラしたのだから、言わしてもらうが、21世紀の女の子(2019)という、日本の女性若手映画監督による1篇8分15人から成るオムニバス映画があった。

あなたはきっと短いから見られるだろう──と思うにちがいない。
わたしも、短いから見られるだろう──と思って見たのである。

その感想を言うのはやめておくが、映画をつくる能力は長短に関係がない。
能力がなければ8分さえ、長すぎる──のである。

マイフレンチフィルムフェスティバルというものがあるそうだ。
主宰者とか来歴とか、なんにも知らない。
2021年が11回目となっていた。
それにあわせて、動画配信サービスにその出品映画群が降りてきた。

そのなかのひとつに、この短篇映画があった。
さいしょ、幕あいと邦題されたEntracte(2019)というショートフィルムを見た。→よかった。
続けてみたのがこのUn adieu(2019)。やはりよかった。

監督はMathilde Profitという女性。
年齢が解らなかったが2009年にラフェミス脚本部門を卒業した──となっていた。ご存じの方も多いと思うが、フェミスは多くの映画監督はじめ、映画人を輩出してきたフランスの名門特殊学校。簡単に言えば大学だが、もっとずっと専門的で高度なことをする。
写真から推察すると30代くらいの人だった。

Un adieu(別れ)は、Mathilde Profitのはじめての監督作品。

映画は、娘の上京というか上パリのために、車で送りがてら一緒に来た父親とのひとときを描いている。
それだけ。
朴訥で、ギミックもなんにもないのに、さわやかで心にしみた。
なんとも言えない愛があった。
21世紀の女の子たちにも見てもらいたいと思った。

マイフレンチフィルムフェスティバル=MyFFFの出品作はまだあるので、これから見るのが楽しみだ。