津次郎

映画の感想+ブログ

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

長回しに耐えるブロスナン グレイティスト (2009年製作の映画)

3.5長男に死なれた家族──父と母と弟──三人がその葬儀を終え、車上で長回しになるのがタイトルロールでした。ずっと父──ピアーズブロスナンの表情を追うのですが、一寸たりと違和感がなく、完全に息子に死なれた父親でした。演技云々するのもナンセンスなほど…

研究者ガヴァシの考察 ヒッチコック (2012年製作の映画)

3.5谷崎潤一郎のエッセイに悪魔のような女(1955)のことが書かれているのを読んだ記憶があります。悪魔のような女は、夫が愛人と結託し、心臓の弱い細君を謀殺するフランス映画ですが、文豪はその死に様に「女があんな風に死ぬのをはじめて見た」と、衝撃の…

好きな俳優バート・ランカスター エルマー・ガントリー/魅せられた男 (1960年製作の映画)

4.3バートランカスターという俳優が好きです。監督に好かれ名画に恵まれた人でした。地上より永遠にに出ていますし、フランケンハイマーやアルドリッチの男臭さを体現しました。かと思えばヴィスコンティにも招聘されました。 美男といえば美男ですが、線は…

地味だけど使い手中西健二 花のあと (2009年製作の映画)

4.5中西健二監督はなぜかwikiもない映画監督ですが青い鳥という名作を撮っています。青い鳥ゆえ、ググったときぞろぞろ違うものが検索されそうなタイトルに難はありますが、個人的にはカルトだと思います。この映画と青い鳥を見ると中西監督の秀でた演出力が…

刻んでtiktokにしたら再生稼げそう リトル・フォレスト 夏・秋 (2014年製作の映画)

3.9映画のなかで「いち子」は自然体で描かれていますが、じっさい仙人のようなスキルと達観が「作者」にはあるように感じられました。 ものを欲しがらず、孤独や不便を厭わず、お料理の食材を育てたり獲ったりする段階から楽しめるのに加え、農業や自然に対…

子役の瑞々しさ ルイの9番目の人生 (2015年製作の映画)

3.1子供が見る幻想からA Monster CallsまたはI Kill Giantsのような話を予測したのですが、徐々にサスペンスへ比重していきます。きれいな子供なので、ふわりとした異界譚を期待していたのかもしれません。好きな仏産ホラー、ハイテンションの監督であり、一…

となりの美男(2013年製作のドラマ)

3.0私は熱心な韓ドラの視聴者ではありませんので、周知のことを、発見のように語ってしまうかもしれません。このドラマは申し分ないロマンティックコメディかと思います。 ただ個人的な焦点はキムスルギに尽きました。童顔に輪をかけたような幼児顔+体型な…

まんまだまされてリビエラのリメイク ザ・ハッスル (2019年製作の映画)

2.61988年の映画にペテン師とサギ師/だまされてリビエラというのがありました。私はその映画が大好きでした。原題はDirty Rotten Scoundrels、監督がフランクオズ。詐欺師弟をマイケルケインとスティーヴマーティンがやってて、彼らを逆スカムするのは2017年…

明るい食人族 グリーン・インフェルノ (2013年製作の映画)

2.8昔、食人族というイタリア映画がありました。スプラッターという言葉もなくエログロと称されました。当時、エログロとは「くだらない」映画の代名詞でした。すなわちエロやグロで観衆を釣るという意味です。むろん、この方法論は今でもたいして変わってお…

謂わば邦版フランシスハ ももいろそらを (2012年製作の映画)

4.1岩井俊二みたいな映画、と形容することはできますが、そのじつ岩井俊二とはリリシズムの方向性がぜんぜん違います。また、個人的に岩井俊二は好きではありませんがこの映画は好きです。この映画の形容を考えました。映画のことは何でも知っていて小林啓一…

俳優ディンクレイジに遭遇 ステーション エージェント (2003年製作の映画)

3.9U2のAllIWantIsYou。臆面もなくアメリカかぶれを打ち出したライブの喧噪と熱狂のあと、まるで荒海がサァーッと退いて海が凪ぐみたいにエッジの静寧なギターから入ってくるRattleAndHum最後の曲でした。ピーターディンクレイジが失恋の道化師を演じている…

岡崎京子を映像化 チワワちゃん (2018年製作の映画)

2.5『チワワちゃんはあたし達とあそんだりおしゃべりしたりなやみをうちあけたりバカ話をしたりしたきすしたりセックスしたり恋をしたり憎んだりした人もいた』(原作のマンガより) 放恣で淫奔で、何がしたいのかわからない破天荒な子がいて、彼女に対する…

ネトフリに入ったきっかけ オクジャ okja (2017年製作の映画)

4.3私が映画を積極的に見始めた80年代90年代には、韓国映画と言えば鯨とりしかありませんでした。これはホントのことです。それがJSAのあたりからパァーっという感じで一気に百花繚乱の様相になったのです。キムギドク、パクチャヌク、ポンジュノ、キムジウ…

目が大きい人だなあ アリータ:バトル・エンジェル (2018年製作の映画)

3.6恥ずかしながら、最初、目がすごく大きい人なんじゃなかろうか、と思って見ていました。サイズ比にして、あり得ない大きさなのは察したものの、ビジュアルエフェクツを察するまでに時間がかかりすぎたのは、主人公以外に、目の大きい「同型」がいないから…

気恥ずかしくなるほどのハッピーエンド インスタント・ファミリー ~本当の家族見つけました~ (2018年製作の映画)

3.7即席の家族が、一難去ってまた一難な日常を過ごすあいだに、しだいにお互いの気持ちが溶解していく様子を、巧くとらえているドラマだと思います。ただ私は未成熟な人間ですので、正直なことを言ってしまうと、リジーはもはやセクシーです。映画ですので、…

個性的でスタイリッシュ アス (2019年製作の映画)

3.6しばしば、プロモーション用ポスター/サムネをひと目見ただけで「あ、いい映画だ」と思ってしまうことがあります。Usのそれは、少女がじぶんの顔面のお面をのけて半顔をのぞかせている、とてもスタイリッシュな画です。輝くようにきれいなダークブラウン…

巨○のイヴ レプリカズ(2018年製作の映画)

2.7クリスエヴァンスが監督業に回ったBefore We Goという映画がありました。キャプテンアメリカがいったいどんな映画を撮るんだろうという疑心がありましたが、まるで手練れの監督のように、落ち着いたスタイルのある映画で、個人的に2014年ベストのひとつだ…

複層POV カメラを止めるな! (2017年製作の映画)

5.0早々とデマンドに下りてきていたので、また見ました。 事務所意向なヒロイン、理屈っぽいイケメン、内向的なメガネ、神経質な下痢症、酒に目がないベテラン、腰痛持ちのカメラマン。リハーサルからデキてしまった二人が事故で本番をポシャり、役に入り込…

あなたの番です(2019年製作のドラマ)

3.0ひとつだけ見ました。逃げ恥のあと、いくつかのドラマのオープニングかエンディングで出演者が踊っているのを見かけました。田中圭が年上の女性と同棲し、彼女のことを頻りにななちゃんと呼ぶのは、田中圭が先のドラマで母性本能をくすぐるということでブ…

人類を説明する 東京物語 (1953年製作の映画)

5.0個人的な認識ですが、小津映画といえば、役者がカメラをまっすぐ見据えて、ほとんど表情を変えず、まるで抑揚のないセリフ回しをする映画群のことです。ほとんど状況描写のない、世界中どこを探してもない、妙な映画たちです。個人的にいちばん好きなのは…

雰囲気がレベち サバハ (2019年製作の映画)

3.9巧いなあと思います。冒頭からリアリティの佇まいが違います。と、感じながら、何と比べて巧いのか/違うのか、を考えると、やはり日本映画です。あまり言いたくないことですが、韓国映画を見ていると、なぜか日本映画とクオリティ比較してしまいます。そ…