津次郎

映画の感想+ブログ

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

怪物はささやくに激似 バーバラと心の巨人 (2017年製作の映画)

3.5A Monster Calls「怪物はささやく」(2016)に酷似していました。原作は違いますが話はほぼ同じ。モンスターの造形も似ています。 過酷な現実を受け容れられない子供が、空想の世界に逃げるというドラマです。重い病の母親、主人公は母親が死んでゆくこと…

ラブコメ女王 ユー・ガット・メール (1998年製作の映画)

4.0ラブコメ女王だったが個人的に思い入れはなかった。ほんとに好きな人は90年前後の出演作を挙げると思う。You've Got Mailはむしろ後期なのかもしれない。 映画はシンボリックな名作だが、いまひとつ傑出しなかった理由は、ジョー(トムハンクス)が──すな…

10年経過の残酷度 ゾンビランド:ダブルタップ (2019年製作の映画)

4.010年。前作から俳優としての位置が動いている。ハレルソンは安定の個性派。エマストーンはトップ女優に格上がり。アイゼンバーグのギークはやや飽きがある。オタクっぽさが常套な役回りになってしまったゆえの飽和を感じた。ブレスリンはさいきん見なかっ…

どこまでも不潔 屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ (2019年製作の映画)

3.5ひたすらきたない。絵面もきたないがそれ以上に欲望と生理がきたない。醜さとおぞましさを、ことさら強調している。 狭い屋根裏部屋。壁いちめんに貼られた裸女の写真。場末の酒場で女を拾っては連れ込み暴力で脅し性衝動を果たす。アルコールとニコチン…

500ページの夢の束(2017年製作の映画)

3.5個人的にはどちらかといえばダコタだが出演作目白押しなエルにくらべるとあまりない。Brimstoneは加虐趣味な狂人と復讐をあつかっている。理不尽で重くダコタファニングの起用は意外だった。ワンスアポンにもクレジットされていたので、どこに出てくるか…

見た目もギフテッド gifted/ギフテッド (2017年製作の映画)

4.0人目をひきつける三大要素3BはBeauty、Beast、Babyである。目的があってインターネットを開いたとしても、よけいなところへ飛ぶなら、たいてい、きれいなひと(Beauty)か子猫(Beast)かかわいい子供(Baby)にさそわれて──のことだ。バナー広告の基本は…

木人に熱狂 少林寺木人拳 (1977年製作の映画)

3.0少林寺木人拳では、過酷な修行をへて、闘いに挑む。最終修行は木人と呼ばれる攻撃力がめっぽう高い自動攻撃装置がずらーっと両側に並んでいる道程を、やられずに通ることだった。 見たところ、木人は単調なパンチと蹴りを規則正しく繰り返しているだけだ…

トラウマチック ミッドサマー (2019年製作の映画)

5.0フローレンスピューは短躯でたくましい印象です。strong willな顔つきと相まって、強そう。健康美と太いパーツに新しい魅力がありました。かなり寄って映しますが、こまかい顔芸で自在に心象をあやつっています。 展開が巧みですいすいと進みます。トイレ…

あなたがいたら/少女リンダ(1987年製作の映画)

4.0洋画好きならエミリーロイドは世代によっては忘れ得ない女優です。この一作だけで大丈夫な女優だと思います。これが公開されるとすぐハリウッドに招聘されましたがWish You Were Hereが最初で最高でした。 無垢を表現できる女優でした。ふつうの映画でア…

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語(2019年製作の映画)

4.0映画の理解は、原作を読んだのか、読んでないのか──ではなく、総合的な経験則に依存するものだ──と思う。経験則とは、経験そのものと、小説・映画・音楽・芸能一般などの媒体から吸収されたもの、両方を含む。 読んだことと、読まなかったことは、巡り合…

黒人差別を描く映画のタイトルの矛盾 黒い司法 0%からの奇跡 (2019年製作の映画)

4.5折しも白人警官の黒人男性への暴行をきっかけに広まった暴動がロドニーキング事件規模に拡大している。黒人の怒りはいかばかりかと想像してみるが、まわりに日本人しかいない日本人が想像してみても、立体に見えることはない。 が、このような映画を見る…

都市の砂漠 ロスト・イン・マンハッタン (2014年製作の映画)

3.0どこに出ていても控えめなので主演をさがすひとがいる。ドニーダーコのとき惹かれて以来コンスタントにクレジットがある。だが、どの映画も脇でサッといなくなる。がっつりの主演はないのか。ジェナマローンはそんな女優だと思う。 顔立ちに気品があり幼…

エピックな 猟奇的な彼女 (2001年製作の映画)

5.0衝撃を受けた作品に、映画リテラシーを必要とする意義があってほしいと思う。ことがある。思うと言うより願う──かもしれない。 たとえば、衝撃を受けた作品、人生を変えた作品──と冠して紹介する映画が、なんとなく玄人な価値を持っていてほしい、のであ…

それなら21世紀の男の子はあるのか~一種のクィアベイティング 21世紀の女の子 (2018年製作の映画)

1.0 タイトルが21世紀の女の子で、全員が若手女性監督。テーマは「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーがゆらいだ瞬間が映っていること」だそうである。必然的に、このパッケージは“若い女性ならでは”の映画を標榜している。しかし映像作品に、てい…

ノワールが似合わないパクシネ 沈黙、愛 (2017年製作の映画)

3.2丸顔。大きい瞳。豊頬。笑っているような口元。そこはかとない割れ顎と、さらにそこはかとない割れ鼻突。神が造形したのか、人が造形したのか知らないが、絶妙の顔立ち。パクシネが嫌いな人なんてひとりもいない。 だが、映画はおそらく消極的だと思う。…

あんがい複雑な シンプル・フェイバー (2018年製作の映画)

4.0ハイヒールにスーツ。チョッキに提鎖。シックなソフトをかぶって、全身が青い。スーツを脱ぐとYシャツは着ておらずダミー袖にダミー襟。さながら男装のストリッパー。すらりとした腕や胸元が露わになる。ブレイクライブリーの登場場面がかっこよかった。 …

謎めいて怪しい バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.5韓国と言えば、かねてから整形大国との定見だが、たしかに、やったひとは多いが、逆に素で端正な顔立ちのひとも多い。韓国の映画やドラマを見ていると、それが分かる。その裏付け──というか、漠然とした雑感に過ぎないが、韓国の映画/ドラマでは、子役が…

悲劇の映画スター ラーメンガール (2008年製作の映画)

3.5クルーレスでのブリタニーマーフィーはすこしぽちゃな、いけてない転校生だった。が、数年後、主役を飾る女優に成長した。ダコタファニングやヘザーロックリアが出てくるUptown Girls(2003)をよく覚えている。 ミーンガールズでのレイチェルマクアダム…

無言の怖さ ストレンジャーズ/戦慄の訪問者 (2008年製作の映画)

3.1むかしエアロスミスのクレイジーのプロモーションビデオがヘビーに放映されていて、なんども見た。アリシアシルバーストーンとリヴタイラーが出てくる。女ふたりが逃避行する──みたいな、みじかいロードムービーになっている。 学校を抜け出す。コンパー…

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.0たぶんD.O.を他の韓国映画で見たことがあると思う。EXOのことは知らない。強い眉。キッとした眼力。みなぎる躍動。アジア枠を超える俳優だと思う。オジョンセはドラマ/映画でひんぱんに見かける愉快な中年俳優。ジャクソンとぽっちゃりの青年は初めて見た…

キューティ・ブロンド(2001年製作の映画)

4.0身上や地位を打開するとき感動がある。落ちこぼれが難関大学に合格したり、ヤンキーが議員になったり、意外な仕事に就いている美女を「きれいすぎる~」と形容するのにも驚きと面白さがあるからだ。 意外性は売れる。人はそれを知っている。ハーフになり…

わが母の記(2011年製作の映画)

5.0主人公、洪作(役所広司)が、母校の校庭で「この遊動円木で詩を書いたことがある」と琴子(宮崎あおい)に話すが、詩の内容が思い出せない。 これが伏線になっている。その詩を母が唐突に諳んじる場面がある。 ぼけてしまった母が、その詩の切れ端を後生…

CUTIE HONEY TEARS(2016年製作の映画)

2.0スプラッター・ゴア系のB級作品、V系またはセクシー系のSF、雨宮慶太や押井守の亜種等々、数多の「未来」が、廃プラント施設で撮られています。その恐るべき紋切りイメージに、辟易したことはありませんか?荒廃した未来には、かならず配管がめぐっている…

飛べない鳥と優しいキツネ(2018年製作の映画)

4.0原作はWeb漫画とのことで、おそらくターゲットも若い世代だと思われる。共感がじわじわと拡がって映画につながったのだろう──と思った。 素朴な子を起用していて、効果的なファンタジーが挿入される。善悪を単純化しない。幸不幸の都合調整がなく、安易な…

映画化不可能 ブレックファースト・オブ・チャンピオンズ (1999年製作の映画)

2.0映画化されているのを知ったとき、そりゃ無理だろうと思ったが、やはり無理だった。個人的に愛読してきた小説だが、世界中に大勢の愛読者がいる。 小説のばあい、コミックの映画化のような事態にはなりにくい。つまり、小説の映画化は、その出来不出来が…

よしわかった 犬神家の一族 (1976年製作の映画)

5.0何度かリメイク・リテイクされているが、これは金字塔だった。原体験にこれがあると、ほかの横溝作品も、石坂浩二でない金田一も、みんな類似品のように感じてしまうのである。 市川崑監督は、晩年まで精力的な監督だったが、最盛期は50~60年代だったの…

ダミー(2001年製作の映画)

3.5Milla Jovovichはバイオハザードで大成功した女優だが、大味な商業映画にキャスティングされてしまうという弊害を背負った──のかもしれない。だとしても一線で活躍している以上、何ら問題はないが、この映画を見たときはちょっとした衝撃があった。 バイ…

原作の面白さをあますことなく伝える ゴールデンスランバー (2009年製作の映画)

5.0渋川清彦は、この映画やフィッシュストーリーで見せた演技でブレイクした、はずである。 その持ち味が理解されていない──と思う。 キャスティングされると、まず間違いなく、だらしない人間、ダメ男、チンピラとして使われる。 いったいこの紋切り型の発…

プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角(1986年製作の映画)

3.8むかし、フットルース(1984)のサントラを買って以来、サントラというものはやたら魅力的に感じられる外面に反して、じっさいにはさほど聴かないものだと知ったにもかかわらず、映画を見て衝動的にサントラを買ってしまうことがあった。 もっとも思い出…

孤独でも美意識を 孤独なふりした世界で (2018年製作の映画)

4.0ピーターディンクレイジをはじめて見たのはU2のAll I Want Is Youのプロモーションビデオだった。1988年である。 月日のあいだに、The Joshua Treeに入っているものと勘違いしていたが、スタジオとライブで構成されたRattle and Humに入っている最後の曲…