津次郎

映画の感想+ブログ

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

スコセッシ監督のオリジン アイリッシュマン (2019年製作の映画)

4.2国内の映画レビューサイトは5点満点をつかっている。 個人的に気になるのだが、ほとんどの映画が3.5の近似値になる傾向がある──ような気がしている。 一般庶民なので、世間が映画に付ける点数は参考にするが、じぶんの採点には自任がない。とくに困るのが…

人生、祭の後 レスラー (2008年製作の映画)

5.0かつての顔をおぼえていると、違和感をおぼえる俳優がいる。老化のせいではなく、いじったばあいだ。きょうび、昔と違って、老いに罪の気配がある。だから、人に見られる職種は「劣化」に抗ってみようとする。 いじり過ぎて、その容貌魁偉が、かえっても…

適切な吹替 ビバリーヒルズ・コップ (1984年製作の映画)

4.0このシリーズや48時間が楽しかったのは、おそらく下條アトムの吹替が優れていたからだと思う。 若い頃は、大なり小なり、厨二なところがあったので、洋画は字幕じゃなきゃイカン、吹替なんて邪道だと、みなしていたものだが、歳をくって、下條アトムのエ…

数限りないドラマのネタ元 狩人の夜 (1955年製作の映画)

5.0かつて著名文化人たちが映画ベスト自選をすると、かならず筆頭にあがるのが市民ケーンだった。天井桟敷の人々やジャンルノアールなど仏古典映画がそれに続いた。まぼろしの市街戦も文化人御用達の人気作だった。いまはどうなるのだろう。多様になって、昔…

子役がアンダーソン色を中和 ムーンライズ・キングダム (2012年製作の映画)

4.0大きすぎるウェリントンがいつもズリ落ちそうなシャカウスキー。顔の左右バランスがちょい違う、ベラみたいな青シャドーのスージー。子役二人が魅力的です。 シャカウスキーは小っちゃなコーンパイプを吹かしています。暑くてもずっと縞柄尻尾付のウシャ…

ファンサービス満載 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (2019年製作の映画)

4.5けっこう寄り道する。帰宅するだけのドライブを追ったり、街をゆくヒッピー少女たちを見せたり、プールパーティーの様子を切り取ったり、アンテナ修理するシーンもあるし、撮影所の出待ちの子役と話す場面、テートがサイレンサー破壊部隊を見ながら周囲の…

襲撃も逃走も、選曲が先 ベイビー・ドライバー (2017年製作の映画)

4.0新しい。 新しいの根拠はAnsel Elgort。The Fault in Our Starsで初めて彼を見たとき、なんか拍子抜けするほど普通な青年だな、と思った。スターのオーラがなく、とりわけイケメンでもない。演技は申し分ないが、印象は軽かった。のっぺり型の色白で、学…

古豪が描く山紫水明 黒衣の刺客 (2015年製作の映画)

4.0使い手の長回しで、微妙に動いてフレームを決める。かならず人物の手前に、幔幕や調度を配置して、奥行きを演出している。なぜか幅を切っていて3:4ほどの矩形に、ずらしながらおさめる。カメラはもどかしいほどゆっくり動くが、画にはデジタルな粒立ちが…

わたしの心を揺らす 甘い人生 (2005年製作の映画)

5.0この映画はキムジウンの最高作でビョンホンの代表作だと思う。韓国ノワールにはヤクザの非情さと同時に、韓国社会が基調的にもっている不人情があらわれる。誰もが一匹狼。同情や依頼心が身を滅ぼす。それが映画に切実な緊張を与する。ラストスタンドが普…

長回しを目的や目標にしていない ヴィクトリア (2015年製作の映画)

4.0カットがない。見た限り暗転もない。140分ほぼ一発撮りの長回し。 映画で長回しといえばカット間が長いことを言う。タルコフスキーやアンゲロプロス。たいてい固定か、ゆっくり移動するレールカメラで、台詞も少ない、または無い。ところがこの映画のばあ…

壮大でアンサンブルでフェア ダンケルク (2017年製作の映画)

5.0海岸で帰還を待つ夥しい数の英兵。乗船に奔走する在英外国人。作戦ダイナモに参加した何隻もの民間船のなかの一隻。たった三機で制空を担うスピットファイア。海の彼方を見つめ、佇む指揮官。車両で桟橋を設営する残留部隊。それらが、無作為のように入れ…

スタンドバイミーのホラー版 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。 (2017年製作の映画)

4.0子供たちの恐怖=ITとはメタファーだと思う。弟を失った、親に虐待された、いじめられたなど、子供時代に体験した逆境が、恐怖を形成している。夏休み、子供達はITをやっつけて=克服して、ひとまわり成長する。 恐怖=ITは、子供から見た禍々しい世の中…

見るより感じる アデル、ブルーは熱い色 (2013年製作の映画)

5.0レビューするのが陳腐に思える。解釈するより感じる映画。これまで持っていた映画の定義をくつがえす体験でした。 はじめから終わりまで近いカメラがアデルの表情を追う。が、演技の気配がない。いつしか自分も映画を見ていることを忘れアデルを追う。映…

ねばりづよくたんたんと サンドラの週末 (2014年製作の映画)

4.0サンドラは週末の二日と一晩を費やして同僚16人の一軒一軒を廻る。その姿を淡々と追うのがこの映画のすべて。フランス語の原題からして「二日と一晩」であり、二日と一晩をかけて、ひたすら「私の復職のためにボーナスを諦めてくれませんか」と16軒の家々…

きれいな声で鳴くまねしつぐみは撃っちゃいけないよby アラバマ物語 (1962年製作の映画)

5.0To Kill a Mockingbirdはハーパーリーという人の小説ですが多くの人にとって映画アラバマ物語(1962)の原作であろうかと思います。人種差別と貧困が織り込まれたドラマで──IMDBでも8超えの名作です。女史がなくなる直前、続編が発表されたのですが、それ…

不品行 エル ELLE (2016年製作の映画)

4.0現代にH・G・ウェルズの透明人間を翻案するとなればエロネタになるのは免れない。バーホーベン自身HollowMan(2000)を自虐的に振り返っていて「スタジオの奴隷になった気がした、空っぽな(Hollow)作品だ」との弁がwikiに載っていた。 彼は殊勝な人で、…

伝えたいことを伝えるのは作為 ワンダー 君は太陽 (2017年製作の映画)

4.3オギーの学校初日に先生が今月の格言を説く。黒板には、When given the choice between being right or being kind.Choose kind.と書かれている。正しいか親切であるかの選択が与えられたとき、親切を選択しなさい──これは、この映画の主張だった、と思う…

狂気と、そこから快復する人びと ウインド・リバー (2017年製作の映画)

4.5アベンジャーズのエイジオブウルトロンで、ホークアイのジェレミーレナーが、スカーレットウィッチのエリザベスオルセンを叱咤する場面がある。 ソコヴィアが宙に浮いている時で「わたしのせいで」と良心の呵責にさいなまれ、弱気になっている彼女に、 「…

人の業、深淵を見つめるシェリダン 最後の追跡 (2016年製作の映画)

5.0終始Happy Go Luckyでいながら、やる時はやる。酷薄なようでいて、じつは篤い。テキサスレンジャーのマーカスが、トゥルーグリットのシェリフ、コグバーンとピッタリ重なります。弄りまくっていた相棒アルベルトが撃たれ、仇を討つのは、マティロスを抱い…

ベイビー・ブローカーに引き継がれた「家族」 万引き家族 (2018年製作の映画)

5.0この映画に冷評をつける人のレビューで多いのが、親が子どもに万引きさせるのは、いかんじゃないか、という倫理への非難です。しかし、それは言うまでもないことかと思います。 滔滔と倫理を説かれ、ひょっとしたら映画レビューを通じて、自らの正義感を…

むしろなんで今までなかったのかGroundhogDayのホラー亜種 ハッピー・デス・デイ (2017年製作の映画)

3.5オマージュのままいくと思っていたが、あまりにそのままなので後半でカーターにGroundhog Dayをことを喋らせる。 主役のツリーはJessica Rotheという女優で、絶叫しつつコミカルなバランスも備えている。プロット上、Groundhog Dayのフィルと同様に、身勝…

ジャッキーとブロスナン、異質なふたり見たさ ザ・フォーリナー/復讐者 (2017年製作の映画)

4.0ジャッキーチェンはアクションヒーローにこだわる俳優だと思います。どんなアクションスターでも老境に入ると、またそうでなくても、普通のドラマに出演しますが、ジャッキーは徹してアクション映画の主役をはります。 潔いですが、大人のアクション映画…

Jojo RabbitまではHeroesといえばこれだった ウォールフラワー (2012年製作の映画)

5.0イギリス勢がアメリカのチャートを席巻すると、ブリティッシュインヴェイジョンと呼ばれる。何度かあるが、これは80年代の話。映画でかかる、スミス、XTC、ニューオーダー、デキミラetcは、自分にもど真ん中の音源だった。カモンアイリーンで躍っていたら…

謎めいた地震大国 アースクエイクバード (2019年製作の映画)

3.0変わった話である。日本は、外国人が描いたややズレ感のある日本だが、むしろ妙味だった。 禎司には往年の日活のような艶があり、ルーシーとリリーにはヨーロッパとアメリカのような対比があった。 どこへ落とそうとしたのか、よく解らなかったが、ふたり…

ロボット+青春+懐メロ バンブルビー (2018年製作の映画)

3.8トランスフォーマーみたいな感じだが予備知識は全然ない。スタインフェルドに惹かれて見た。蜂に見える黄色いロボットが恒星間戦争で追われ行き着いた先が地球である。残虐な追手を逃れ、フォルクスワーゲンの姿で眠っている。地球の一介の少女Charlieが…

00年以降、邦画のみの縛りならこれを筆頭にあげます 下妻物語 (2004年製作の映画)

5.0翔んで埼玉は魔夜峰央の1983年の漫画である。2020年現在、37年前ということになる。 あまり記憶していないが、その当時、東京人たちは、本気で近県、埼玉・茨城・千葉などをばかにしていた。かもしれない。 それが、あまりにもうるさすぎるので、自虐ねた…

選曲が渋い クリスマスに降る雪は (2019年製作の映画)

3.5おしせまると、クリスマスものが出てくる。かるくて、たのしい。 アメリカの上手なドラマを見ていて感じるのは公平さ。白も黄も黒もぜんぶ揃って、かれらが、それぞれの外見のちがいをまったく気に留めず、コミュニティを形成している。加えてLGBTの境界…

ループで悔い改める ビフォア・アイ・フォール (2017年製作の映画)

3.3人気女優の顔に一定の統一感を見ることがある。エマワトソンとキーナンシプカは姉妹のようでもある。クリステンスチュアートとテリーサパーマーは双子のようでもある。 ゾーイドゥイッチとジェシカローテは異母姉妹といったところだろうか。すっかり人気…

繰り返す=成長する(学習する)、レジェンダリーな元祖 恋はデジャ・ブ (1993年製作の映画)

5.0同じ一日が何度も繰り返される。映画人ならだれでも二の足を踏むプロットだと思う。Happy Death Day(2017)は女性版かつホラー版だがオマージュとはいえ重圧に耐えきれず登場人物に「君の話はGroundhog Dayを思わせるね」と言わせている。主人公はその映…

わたしたちの言う大人よりもふたまわりほど大人っぽい パドルトン (2019年製作の映画)

4.0Mark Duplassは独立系映画にしばしば見る俳優で「クリープ」で名を馳せた。POVホラー映画で2014年に初作、2017年に続編が撮られている。クリープは後発なPOVでありながら、見せるアイデアを持っていた。Mark Duplassは主演に加えスクリプトを書いてもいる…