津次郎

映画の感想+ブログ

2023-01-01から1年間の記事一覧

高校生の過労死 あしたの少女 (2022年製作の映画)

4.0 コールセンター研修での過労から自死する高校生ソヒ(キム・シウン)と、その捜査にあたる刑事ユジン(ペ・ドゥナ)の2者視点で構成されている。実話からインスピレーションを得て書かれたそうだ。2022年カンヌで上映されて以来、各所で賞をとった。 社…

一種のコメディ LOVE LIFE (2022年製作の映画)

2.4 むしろそこに陥るほうが難しいと思える状況に陥らせて哀切や情感をつづっていくのが深田晃司監督だと思います。 これもわりとインポッシブルな話だと思います。よこがおはコメディだと思いましたがこれもコメディだと思います。連れ子が不慮の死を遂げる…

研ぎ澄まされた体幹 ダンサー イン Paris (2022年製作の映画)

4.5 主役エリーズを演じるMarion Barbeauはパリ・オペラ座の主席ダンサーとのことで、6歳からバレエをやっているが映画主演ははじめてだそう。だが女優が余技というわけではなく、ちゃんと魅力ある主人公をつとめている。 公演中に足首をけがしてもう二度と…

コーガンのキモさみなぎるサイコスリラー Saltburn (2023年製作の映画)

4.0 バリーコーガンのキモさみなぎるサイコスリラー。 オリバー(コーガン)はオックスフォードに入学したとはいえ中大在学中のステハゲという感じのぼっち。対してフェリックス(Jacob Elordi)はもてもての爽やかイケめんで、コーガンは蛇のようにぬめぬめ…

やにだらけ マエストロ:その音楽と愛と (2023年製作の映画)

3.4 子供のころ指揮者という職業に疑問をもっていました。でたらめにタクトを振っても大丈夫な気がしたからです。 たとえばシンバルを鳴らすところでシンバルに向かって合図しなくても奏者はシンバルを鳴らすのではないだろうか。 楽譜もあるのだしシンバル…

ヤクで成長 ビューティフル・ボーイ (2018年製作の映画)

3.7 一定期間、鎖かなにかで繋いでおきゃいいのに。とは思う。人道的ではないが嘘ついてでも裏切ってでもなんとしてでもやるのがアディクトであるなら繋いでおくのが確実でしょうに。 ──と思ってしまう薬物依存の様子を描いている。 息子のニック(シャラメ…

リベラルのテンプレ

1、テンプレ見参 2023年1月6日、イスラム思想研究家飯山陽氏のYouTubeチャンネル「飯山陽のいかりちゃんねる」にて『【何様?!】鴻上尚史「時事通信が原稿を20カ所修正、納得できず決裂」』と題したライブがありました。 劇作家の鴻上尚史氏の以下のツイー…

「生きろ」というコピーが使えそう ゴジラ-1.0 (2023年製作の映画)

お題「おすすめの感動系映画教えてください」 5.0 <ネタバレあり>

優柔不断な父 ある日、クイーンズで (2022年製作の映画)

4.0 ネットフリックスでPaddleton(2019)という映画を見たことがある。マーク・デュプラスとレイ・ロマノがでていて、末期がんのデュプラスが安楽死するのを、ロマノが看取るという話だった。 副題がA Comedy of Dramatic Proportionとなっていて死ぬ話が軽…

惨劇 福田村事件 (2023年製作の映画)

2.0 いまの世で言うリベラルとは日本叩きや自虐を身上とすることであり、マスコミはだいたいリベラルだと思います。リベラルは時には自らを加害者だと告発しますが、同時に弱者(被害者or犠牲者)に寄り添うポジションに陣取ります。寄り添いポジションをと…

忘年の交わり メタモルフォーゼの縁側 (2022年製作の映画)

4.0 どうせいつもの日本映画なんだろうと思って見た恋は雨上がりのように(2018)がよかった──のと同じで、このメタモルフォーゼの縁側も期待しないで見たがよかった。 ふたつともまんがを原作にしているので引き合いにした。 テレビ系の監督なので日本映画…

アーミッシュのような共同体 ウーマン・トーキング 私たちの選択 (2022年製作の映画)

3.5 プロテスタント一派の共同体。暴行事件をきっかけにコロニーを去るか、戦うかを話し合う女達。 アーミッシュのような世界だがタイトルの通り話し合いに占められていて敵=男がでてこない。細部が省略され舞台劇のようだが、実話にもとづいた話だそうだ。…

修羅場好きな人向け ほつれる (2023年製作の映画)

1.0 綿子(門脇麦)と文則(田村健太郎)は文則に連れ子がいるものの都市型のDINKsという感じ。夫婦仲は破綻しているが別れずにいる。綿子は木村(染谷将太)と定期的に不倫旅行をしているが、その最中に木村は交通事故で死ぬ。一緒にいたことがバレてはまず…

フレンズの最終回と 終わらない週末 (2023年製作の映画)

3.2 ある朝、人間嫌いのアマンダ(ロバーツ)は突発的な休暇を思いつき、家族でロングアイランドの借家へ出かけるが、不思議な現象に遭ったり、住人が戻ってきたり、混迷をきわめる。 綺譚なのか戦争なのか判断できない。シャマランのような超自然現象を描い…

利権に群がる キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン (2023年製作の映画)

4.0 オーセージ族の居住地に石油が出て未曾有の好景気に湧く。戦時中糧秣をやっていたアーネスト(ディカプリオ)が職をもとめてヘイル叔父(デニーロ)の牧場へ帰ってくる。ヘイルは石油の受益権を得るためにアーネストをそそのかして血統を片っ端から暗殺…

グルーミングの手口 ダイブ (2022年製作の映画)

4.0 飛び込み競技のスポ根映画かと思って見始めたが、いわゆるグルーミングを描いた映画だった。 『性犯罪・性的虐待の文脈におけるグルーミング、チャイルド・グルーミングとは、性交や猥褻行為などの性的虐待をすることを目的に、未成年の子どもと親しくな…

エイスグレイド2 ベスト・フレンズ・エクソシズム (2022年製作の映画)

5.0 エイスグレイドのエルシーフィッシャーの近影がエリオットペイジのようになっている。撮影用の変身なのかもしれないが、転換したようにも見える。自認するpronounsはthey/themだそうで外観上はすでに女子の面影はない。(they/themは一般的には複数形だ…

ファイトクラブつくろうぜ ボトムス ~最底で最強?な私たち~ (2023年製作の映画 )

3.7 PJとジェシーはふたりともレズビアンだが親友。おたがいにチアリーダーの子に欲情し、やりたいと思っているが、彼女らは映画タイトルどおりスクールカーストの底辺でうごめいているので、護身クラブをつくって気を惹こうとする。 フットボールチームのバ…

ふんぬか、ふんどか 君よ憤怒の河を渉れ (1976年製作の映画)

3.2 昔わが家にはじめてきたVHSビデオデッキはフロントローディングではなくアッパーマウントだった。それを使って東京12チャンネルで平日の14時からやっていたようなマイナー映画をいっぱい録画した。 VHSビデオレンタルの勃興期には、ビデオを借りることで…

思い出のなかの父 aftersun/アフターサン (2022年製作の映画)

3.5 31歳の父カラムは別れた妻との娘ソフィ11歳とトルコへ休暇旅行に来ている。 カラムはやさしいが自信がなく迎合的。鬱々とした内面を隠し、子供と過ごす夏休みをうまくやり抜こうとしている感じ。 ソフィは多感で好奇心旺盛。周囲を観察しロマンスや性的…

長い一日 アシスタント (2019年製作の映画)

3.3 映画製作会社で働く事務職員の一日を描く。念願の映画製作会社に入社したプロデューサー志望の主人公。まだ暗いうちから出勤するほど意欲的だが業務はストレスの泥濘に没している。 ── たとえば清掃作業員やったことありますか。正職でもアルバイトでも…

パパ活女子の改悛 ティファニーで朝食を (1961年製作の映画)

3.0 ティファニーで朝食を、と言えばタイトルだけは知っているが、タイトル以外のことは知らなかった。 トルーマンカポーティの中編小説をブレイクエドワーズ監督が1961に映画化したものだが原作とは違う恋愛コメディになっていてオードリーヘプバーンやジョ…

いろいろ盛りだくさん クレイジークルーズ (2023年製作の映画)

3.4 クリスティ風の古典推理小説的舞台と素人がやむにやまれず即席の探偵業をやるプロットを現代的な風物にのせてコミカルに描いている。 坂元裕二を見ていると「日常生活で面白いと思った現象を全部書き留めているのではないか」という細部が幾つもあって感…

清純派が汚れ役に 毒戦 BELIEVER 2 (2023年製作の映画)

3.2 日本映画で暴力的なシーンを見ると無理してるなという感じを受ける。 ことはありませんか。 わたしたち日本人は平生、穏やかな日常をおくっている。映画のキャストやスタッフもそうであろう。日々、誰かをぶん殴ったり、拷問したり、やにわに襲いかかっ…

スミス好きな ザ・キラー (2023年製作の映画)

3.8 リーマーヴィンののリメイクだと思っていたら違った。あれはsがついてた。チャン・ヒョク主演の同名もあった。汎用名詞すぎて検索割れするタイトルだがフランスの漫画の映画化だそうだ。 最初から主人公が語る体で哲学がナレーションされる。概説に(原…

定番らしさ もうひとりのゾーイ (2023年製作の映画)

3.1 恋愛ドラマみたいな甘美なシチュがきらい、クールな女を決め込んでいたマッチングアプリの開発者ゾーイ。そんな彼女が意図しない加害からの記憶喪失からの勘違いからの紆余曲折を経て、あり得ないと思っていた一軍男子といい感じになる。先蹤なメタファ…

エスター前夜 エスター ファースト・キル (2022年製作の映画)

3.3 童顔な女優がいるが、きれいな人はある程度の童顔属性を持っているので判定を甘くすればたくさん入ってしまう。 それでも代表的な童顔をあげるとすると(いま思いついた限りで網羅性はないが)安達祐実とか八千草薫とかチャン・ナラとかになると思う。 …

ノーコンテスト ナックルガール (2023年製作の映画)

2.9 おそらく漫画を和訳したものがそのままセリフになり、そのセリフに日本側監修が入っていない──という感じだった。 キャラクターもストーリーも世界観もノワールをAIがランダム抽出したかのように類型的かつ質感に欠け食玩のようにちゃちだった。 たとえ…

年齢はただの数字 ナイアド ~その決意は海を越える~ (2023年製作の映画)

3.5 Diana Nyadは外洋持久泳者、作家、ジャーナリスト、モチベーションを高める生き方講師、だそうです。 映画はジョニーカーソンがホストだった1979年のThe Tonight Showのワンシーンではじまります。カーソン:「偉業達成おめでとう、でも褒められるのはも…

ザブラックオニキス テトリス (2023年製作の映画)

3.8 Tetris (film)のwikipediaに── 『2023年のインタビューでアレクセイ・パジトノフはこの映画は「実際に起こったことの実際の伝記や再現ではなかった」が、それは「感情的にも精神的にも十分に近く、非常に正しいものであった」と認めた。』 ──と書いてあ…