津次郎

映画の感想+ブログ

2023-01-01から1年間の記事一覧

きれいなハーレイ 悪いことしましョ! (2000年製作の映画)

4.0 わたしはじぶんはどちらかといえばするどくてシリアスなタイプだと思っている。ただし賢いというわけではない。するどくてシリアスなままで生きようとすると生きにくいので表向きは丸くてふざけている鷹揚なキャラクターであろうとして、するどさやシリ…

ブラッシュアップした ヘル・レイザー (2022年製作の映画)

3.1 ヘルレイザー全体で11作目だそうだ。見たことがあるかどうかも含めて覚えていないが、頭部全体がマチ針に覆われている“ピンヘッド”なら知っている。 wikiにあった言説だが、本作にたいするRottenTomatoesの総意は──『数々の水準以下の続編を経て長年苦し…

反英雄的英雄 永遠の0 (2013年製作の映画)

4.5 著作はこの作家の代名詞だが論壇のほうが目立つ人でさいきん(2023/10)は新党を立ち上げたことでふたたび界隈を賑わせている。 宮部久蔵(岡田准一)について孫の姉弟(三浦春馬と吹石一恵)が存命者に取材し体験が語られることで話が進んでいく。 老俳…

13面のルービックキューブとは チャチャ・リアル・スムース (2022年製作の映画)

3.5 アンドリュー(Cooper Raiff)は大学を卒業したが目標が定まらずアルバイトをしながら実家住まいをしている。歳の離れた弟と同部屋に寝起きしつつ、母親の新しい良人につらくあたる。ユダヤ人の成人を祝うパーティで才能を発揮した彼はコミュニティから…

ダブリンの母子 フローラとマックス (2023年製作の映画)

4.1 シングストリートから7年ぶり、ジョンカーニーの音楽映画。2023年1月にサンダンスで上映され熱狂的なスタンディングオベーションを引き起こし、AppleTVに約30億円(2,000万ドル)で配給権を買われたそうだ。imdb7.1、RottenTomatoes94%と86%。 主演は(U…

ラスプーチン? ベネデッタ (2021年製作の映画)

3.3 ダニー・ケイの映画に虹を掴む男(1947)というのがある。後年ベン・スティラー主演でLIFE!/ライフ(2013)としてリメイクされたが、原題はどちらもThe Secret Life of Walter Mittyである。スティラー版をご覧になった方は多いと思うが主人公ウォルター…

恨みっこなし マディのおしごと 恋の手ほどき始めます (2023年製作の映画)

3.6 ロングアイランド島の先っぽにモントークというリゾート地がある。日本に重ねると青森辺りの緯度で暖かいときが盛期になっている。マディ(ローレンス)はモントーク生まれ&育ちだが男関係も金繰りも破綻し、車税も家賃も払えない身上に落ちぶれていた…

予定調和 湯道 (2023年製作の映画)

2.0 日本人にはコンテンツにたいする独特の“思いやり”(とでも言うべきもの)があり、じっさいには面白くないものを愛でることができる素養をもっている──と感じることがある。 たとえば萌えやかわいいや和み要素を脳内で“面白い”と変換してしまえる能力がわ…

人ごろしを英雄視する世界 聖地には蜘蛛が巣を張る (2022年製作の映画)

3.6 主人公の女性記者こそ架空だがイランのマシュハドで16人の売春婦が殺害された実話にもとづいている。 映画の撮影中当局からの妨害に遭ったほか主演のザル・アミール・エブラヒミがカンヌで女優賞をとるとイラン文化省からフランス政府に「侮辱的で政治的…

復讐の鬼と化す バレリーナ (2020年製作の映画)

3.2 イ・チャンドン監督のバーニング(2018)でチョン・ジョンソをはじめて見たとき、こう書いた。 『後からチョンジョンソが初出演だと知って驚きをおぼえた。どこにも出た経験がないらしい。が、堂々としている。カラーも出している。なにをしても牛刀を隠…

巨匠の遊び心 別れる決心 (2022年製作の映画)

3.8 パクヘイルのおっとりしたぼっちゃん顔に油断する。が印象に反してギラギラしている。グエムル漢江の怪物の霊前のシーン覚えていませんか。娘が怪物にさらわれて、まだ生きているのだが行方不明なので葬儀をやっている。そこに叔母のドゥナと叔父のヘイ…

ああ無情 トリとロキタ (2022年製作の映画)

3.5 Xを見ると政治家や政府に罵詈雑言が飛び交っているが、さてじぶんをかえりみると食べ物や服や家がないわけじゃないし迫害されてもいない。とはいえ紛争地帯や途上国と比較しても仕方がない。飯時にいちいち飢えた難民のことを考えはしない。われわれは成…

こわもて レプタイル -蜥蜴- (2023年製作の映画)

3.7 周期的にいい映画に巡り会わない時がある。気分がふさいでいたり、アンテナを低くしていると、そんな時が長くつづく。むろんいい映画がないわけではなく、ぜんぶ自分のせいなのだが、その谷底にいると、なにを見ても感興しない。とはいえ周期はどこかで…

友よここに僕らのケルンを積もう 帰れない山 (2022年製作の映画)

5.0 普遍的な話だった。この普遍的とはバランスのとれた人が書いた話──という感じ。パオロ・ソレンティーノ監督のThe Hand of God(2021)を見たときにもそういう普遍性を感じた。The Hand of Godと同時期にボクたちはみんな大人になれなかった(2021)とい…

ひとこわ ブラック・サマー: Zネーション外伝 シーズン1 (2019年製作のドラマ)

3.8 絶命と同時にゾンビ化し、足が速くうるさくてしつこい。 家族やたまたま居合わせた者らの小集団が空港へ向かう道中がブラックサマーZネーション外伝の概要になっている。 アンサンブルキャストで時系を前後させながら小集団がサバイブあるいは壊滅するよ…

パンデミックと菌根 イン・ジ・アース (2021年製作の映画)

3.3 閃光の連続的な表現があるので光過敏てんかんへの注意書きが必要だと思う。 主人公は農作物の成長をたすける菌根の研究者。野卑な雰囲気がでるジョエル・フライが演じている。 土壌調査のため森に入った先発隊から音信が途絶えたので後発隊が探索に入る…

ワニとスポ根 クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)

3.3 Burning Bright(2010)という映画があって暴風雨のさなかトラと家に閉じ込められる姉弟を描いていた。海外の批評でそれが引き合いにされていたのは“特殊状況へおちいらせる”ことの相似だった。Crawlも主人公をわざわざワニに襲われる状況へもっていく筋…

すぐ撃つんだから インディ・ジョーンズと運命のダイヤル (2023年製作の映画)

3.7 すぐ発砲する映画だな──と思った。マッツが演じているユルゲンの部下にすさまじく短気な奴がいて見境なく鉄砲を出すやバンと撃っちまう。彼以外でもわりとすぐに撃つ傾向があり、とりわけ相手がジョーンズ博士でないときはあっさりと撃つし撃たれる映画…

カルト 4人の食卓 (2003年製作の映画)

3.8 知らなかったのでぐぐったが明瞭な評価を見つけられなかった。A Table for Fourだと見つからないしThe Uninvitedだと箪笥のリメイクが出てくる。 imdb5.7、トマトメーターは付いておらずオーディエンスが54%だった。他の海外評価サイトでも旗色は良くな…

見過ごしていた大作 タイタニック (1997年製作の映画)

3.5 はじめて見た。映画を結構見るのだが話題作を見過ごしていることがある。反発しているつもりはなく、たんに見ないまま過ごして今に至った。 航海から110年、公開から26年経って見たので時間経過(タイムラグ)によって何か面白いことが書ける気がしてい…

生きづらさ おひとりさま族 (2021年製作の映画)

4.0 マイオンリーラブソングという2017年の韓国ドラマにコン・スンヨンが出ていてネットフリックスの“マイリスト”に入れて何度か見た。コン・スンヨンは瑕疵のないAI顔をしている。純白の肌質感で、寄ってもそのままだった。 マイオンリーラブソングを見て以…

eが3になってるんですね M3GAN/ミーガン (2023年製作の映画)

3.8 日本が最後の公開地なのですでにプロモーションをさんざ見ている。──ということが洋画ではけっこうある。 もっとも印象的だったのはミーガンの中の人Amie Donaldがミーガンダンスをする動画。バイラルになっていてTiktokで繰り返し見た。 Amie Donaldは…

使い捨てカイロ ドント・イット (2016年製作の映画)

3.4 この映画A Dark Songの邦題「ドント・イット」は「ドント・ブリーズ」と「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」を融合させたものと思われる。とうぜんDon't BreatheやItの人気にあやかろう、あるいはDon't BreatheもしくはItと間違えて見てくれること…

脱皮するお婆ちゃん レリック ー遺物ー (2020年製作の映画)

3.5 月桂のカッコにsundance。見る前からわかりみがあった。Natalie Erika Jamesの初長編。あちらでは初めての映画をホラーにするのが常道だが日本の“初監督作品”とは比べものにならない完成度にしばしば出会う。さいきん見たのでもKate Dolan監督のYou Are …

アイロニカル バービー (2023年製作の映画)

3.5 <ネタバレ>

レモネードスタンド プロミスト・ランド (2012年製作の映画)

4.5 日本ではほとんど見ないが海外には“慈善家系”という感じでハンデを負っている人や困窮者に寄付や激励をして感動シーンへもっていくYouTuberやTikTokerがいる。 さっきそんなタイプのTiktokを見た。動画で対象となるのは9歳の少年。生まれつき盲で家の前…

続編のつらさ 蜘蛛の巣を払う女 (2018年製作の映画)

3.4 imdb6.1、RottenTomatoes38%と35%。 なぜこれが低いのかという話をしたい。続編の公理に組み伏せられているというのはある。1というかThe Girl with the Dragon Tattoo(2011)は御大デヴィッドフィンチャーで予算も倍以上、興行成績はどの地域ベース…

取り替え子 ユー・アー・ノット・マイ・マザー (2021年製作の映画)

3.5 すこしまえtiktok等でバイラルになったkarenがいる。かのじょはフォートワース空港の離陸前の機内で「あのくそ野郎はホンモノじゃない」などと不可解な罵倒を残して機を降りた。その動画が拡散されcrazy plane ladyとしてバイラルになり、シェイプシフタ…

星の瞳って セーラ 少女のめざめ/セーラ 少女覚醒 (2014年製作の映画)

3.0 セーラ(Alexandra Essoe)は女優をめざしているのだがうまくいかず生活のためにチアリーダーユニフォームの店につとめてしのいでいたが、あやしいホラーのオーディションをうけてセクハラに遭ったうえ悪魔崇拝者に悪魔ナイズドされてしまう。まちがいな…

山高帽とフェドラ帽 生きる LIVING (2022年製作の映画)

3.7 伊藤雄之助が演じた遊び人風情をトムバークに充てたのもしっくりする人選だったが、Aimee Lou Woodがまさに小田切みきタイプだった。小田切みきタイプとは愛嬌があり単純かつ健全で、よく笑うからみんなにいじられる。──という感じの学内や職場や市井で…