津次郎

映画の感想+ブログ

2023-01-01から1年間の記事一覧

見た目じゃわからない サヴェージ・ウーマン 美しき制裁 (2019年製作の映画)

4.0 Sarah Bolgerが気弱そうな女を演じているが、気弱そう──というのは男の希望的観測である。若い頃、外観の印象で女に近づいたことがあった。そういう観点で近づくと当然いい結果にならない。あどけない童顔であろうと優しそうな風貌であろうと理知な顔立…

がんばろう日本 ゾン100 ゾンビになるまでにしたい100のこと (2023年製作の映画)

1.0 ファンタジーをなぜメタにするのかというと①恥ずかしくないから②創作がめんどくさいから③もっていきたい場面にもっていけるから、であろうかと思われる。 ①の恥ずかしくないの意味は実直に物語を書いてしまうと知識レベルに応じて稚拙になりがちでハズし…

骨太な見応え さがす (2022年製作の映画)

5.0 韓国ノワールや李相日もどきが日本映画のトレンドになっているので猫も杓子もみんなそういうのをつくるからこれもそういうのだと思っていたが違った。はきだめな雰囲気と座間の事件からもってきたぽいサイコ野郎とスリリングなミステリー。佐藤二朗も伊…

良性メタ MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない (2022年製作の映画)

3.5 <ネタバレ> 面白い映画をつくろうという動機があるならカメ止めや「MONDAYSこのタイムループ上司に気づかせないと終わらない」のようなのがもっとあってもいい気がするが、こういう映画はあまりないような気がするのはなぜなんだろうか。こういう──と…

どばどば 死霊のはらわた ライジング (2023年製作の映画)

3.4 死霊のはらわたで憑依から解放されて正常に戻った偽装をするという定番シーンがある。すごい形相だったのがもとに戻って猫なで声に変わって善良なものをだまし、施錠や緊縛の解除を要請するという、エクソシスト系にもかならずでてくるシーンではある。 …

疲れる バビロン (2021年製作の映画)

2.7 狂騒的で山あり谷あり。過剰だし回しすぎだしわざとらしいしもったいつけるしフラグもがっつり置くしこんな疲れる映画もめずらしかった。 ネリー・ラロイ(マーゴットロビー)の中枢神経がダイナミズムへの渇望に侵犯されている。そんな太く短く生きろと…

異世界 TAR/ター (2022年製作の映画)

5.0 <ネタバレ> オケの人事によるわだかまりからやがて追われる指揮者の話。 リディア(ケイトブランシェット)には思いやりが欠けているが思いやりがないといけない──わけではない。いけなかったのは人をないがしろにしたときどうなるかを予測できなかっ…

ホームレスワールドカップ ドリーム 狙え、人生逆転ゴール! (2023年製作の映画)

3.3 ホームレスワールドカップを知らなかった。ウィキやオフィシャルサイトをのぞいたがまともなイベントだった。それ自体がドラマチックなのでホームレス状態からフィールドを駆けるところまでのドキュメンタリーがいくつか作られている。とうぜん映画にも…

速いは強い ザ・フラッシュ (2023年製作の映画)

4.0 <ネタバレあり> ほかのヒーローの冠映画でいちばん速いってことはフラッシュがいちばん強いのではないかという懐疑をもつことがあった。走り出すとみんな止まっているわけだから、なんでも細工できる。冒頭で高層ビルから障害物や危険物とともに落っこ…

くさすぎ 天間荘の三姉妹 (2022年製作の映画)

1.0 『臨死状態の魂が天に昇るか、地上に戻るかを決めるまでの間を過ごす、天空と地上とを繋ぐ宿「天間荘」を舞台としている。』(「天間荘の三姉妹」ウィキより) 災害でなくなったはずの街とそこの人々が、天間荘のまわりでは続いている。──という話だが、…

VHSの時代 いとこのビニー (1992年製作の映画)

4.0 良作ではあったが名画とまではいかない。だけど同時代の人でいとこのビニーにしっかりした記憶を持っている人は多いと思う。ベストにあげるほどじゃないがみょうに懐かしい。 『goodではあったがgreatではなかったにもかかわらず(Despite the good-but-…

居そうで有りそう 花束みたいな恋をした (2021年製作の映画)

3.7 有能なクリエイターがつくっていることが解るできだった。やっぱり映画ってまぐれや気合いでいいものができたりしない。技術習得や台詞推敲の積み重なりだと思った。 現場で研鑽をつむのでテレビからきた人のほうが映画も巧い。近年いいと思える映画はテ…

多様性 ニモーナ (2023年製作の映画)

3.3 ニモーナは映画内世界の神話にでてくる獣だが実態は子供。受け容れられると大人しいが疎外されるとむくれる。人から邪魔扱いされてニモーナはグレた。騎士団から放逐されたバリスターとコンビを組む。友達かどうか解らないが少なくとも嫌われものどうし…

宮崎駿版夢 君たちはどう生きるか (2023年製作の映画)

3.0 ネタバレあり

代用になりえるのか アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド (2021年製作の映画)

3.5 ダンスティーヴンスが美男のアンドロイド役。スティーヴンスは靴職人と魔法のミシン(2015)でもアンドロイドじゃないが美男代表みたいな感じででてきた。イギリス人だが新顔としてアメリカへ進出したThe Guest(2014)からスティーヴンスは置き物風な美…

ひねりすぎ バード・ボックス バルセロナ (2023年製作の映画)

2.3 つまり主人公の男は亡くなった幻影の娘にそそのかされて、細々と生き延びている小コミュニティを見つけてはそれを壊滅に追いやっている──わけである。 なんでそんなけったいな話にしちまった? 作者兼監督のDavid PastorとÀlex Pastorを検索したらCarrie…

降霊はマジでやってね ズーム/見えない参加者 (2020年製作の映画)

3.6 アメリカのストリーミングサービスでShudderというのがある。ホラー専門のNetflixみたいなものだと思うが、英語圏へ事業拡大しているものの、多言語へのローカライズはない。VPNを介さずにshudder.comへ行くとSorry, we are not available in your count…

五代目ボンドと ギリ義理ファミリー (2023年製作の映画)

3.2 歴代007のなかで誰が?の問いをすると半分はコネリーになる。じぶんもそうだ。だが甘軽で非マッチョなロジャームーアがいいという人も一定数いる。またカジノロワイヤルからプロダクトがブラッシュアップされたのでダニエルクレイグがいいという人もけっ…

こみあげてくる嫌悪 アングスト/不安 (1983年製作の映画)

3.2 カルトになっていてカメラワーク、Erwin Lederの演技、ナレーション、サウンドトラックなどがプロパーから賞賛されている。今ではカメラが小型化しブレ補正も進歩しているので身体にくっつけて顔を近接でとらえる体幹と連動するようなカメラはよく見られ…

振り回す女 わたしは最悪。 (2021年製作の映画)

3.4 奔放な女性の遍歴。 古い引例だが結婚しない女みたいな映画だった。が、経年分表現は尖っていた。女性もジルクレイバーグほど柔和じゃなかった。 その時、自分を輝かせてくれる男がすきになる女性。直感で別れたり、さらりときついことを言ったりする。…

赤くなる人はムリ アナザーラウンド (2020年製作の映画)

3.7 (コロナきっかけでお酒をやめたが)かつてはお酒を飲み、お酒を飲んでいるときここのレビューを書くこともあった。 飲むと気持ちが大きくなるのでそれは文にもあらわれた。酔っているとたいがい文がなれなれしくなった。 酔いによって希望的観測が増長…

やるせない 英雄の証明 (2021年製作の映画)

4.5 別離/ある過去の行方/セールスマン/誰もがそれを知っている──を見たことがあるがいずれも進退や善悪の定まらないどっちつかずの状況に撞着して「じゃあどうすりゃよかったんだよ」と言いたくなるような人間の深いところを描いてみせる作風だった。 とい…

あたた Mr.ノーバディ (2021年製作の映画)

3.9 ジョンウィックを書いている人がつくってHardcore Henryの演出家が監督したアクションスリラーというかアクションコメディ。 さえない中年、いけてない父親だがほんとは最強の暗殺者。最強の強はむしろ凶に変換したいほどだが、Derek Kolstad(ジョンウ…

強面たちの応酬 ジェントルメン (2019年製作の映画)

3.6 The Gentlemenはガイリッチーのなかでもロックストック~やスナッチとおなじ文法をもったいわばガイリッチー原点回帰作品になっている。──そうだ。 登場人物が状況を語る構造でワルたちのたくらみと争いが描かれるそれらのガイリッチープロトタイプは海…

ゲーム化期待 ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り (2023年製作の映画)

5.0 パーティを組んで冒険に出よう。 エドガン(クリスパイン)のクラスはバード(吟遊詩人)。マンドリンのようなのをしょっている。武器にもなるが、演奏で仲間を鼓舞するのが本職。プランを決めるリーダーでもある。 ホルガ(ミシェルロドリゲス)はバー…

チーズバーガーでじゅうぶん ザ・メニュー (2022年製作の映画)

3.7 (ネタわれあります) ヒルトンみたいなロゴマークの離島レストランホーソーンでの惨劇。 狩られる招待客とグルメ社会風刺と、じっさいのシェフによって監修された料理がでてくる饗宴の饗を狂と変換したい感じのホラーコメディ。 すべてが破滅へ向かって…

人類の命運を任された山小屋 ノック 終末の訪問者 (2023年製作の映画)

3.4 自分か身近な者がしななければ世界が終わるぞという話。んなことあるわけないだろ──な設定だが怖かった。 それだけなら終末の恐怖に終始する話だったがKristen Cuiという子役がこれを混乱させている。演技の気配がなくアドラブルでjojorabbitのjojoのよ…

色あせない衝撃 パルプ・フィクション (1994年製作の映画)

4.5 象徴的な映画はレビューしづらいものだ。ましてパルプフィクションなんて、たとえば漫画で主人公の映画好きを絵であらわしたいとき部屋にパルプフィクションのポスターを貼っておけば伝わる──みたいな現代の“映画”や“映画好き”を象徴してしまう代表的な…

華奢 スペンサー ダイアナの決意 (2021年製作の映画)

3.4 ダイアナ妃をクリステンスチュワートが演じているという映画の告知を見たとき、すこし驚いた。(それはけっしてconsポイントではないが)スチュワートはおしとやかな感じでもなく、イギリス人でもない。なんで英国王妃役を彼女に充てたんだろう──と率直…

黒い美しさって何? ブラック・ビューティー (2016年製作の映画)

3.3 売れている女優ベスと売れていない女優アンナが郊外で休暇を過ごす。 ストーリーをもっていくための性格とはいえリアルでもあった。アンナは偏狭だが自分に無自覚、ベスは鈍感だが潜在的な優越意識をもっていた。 アンナは破綻しており過ちを犯すのは明…