津次郎

映画の感想+ブログ

疲れる バビロン (2021年製作の映画)

バビロン

2.7

狂騒的で山あり谷あり。過剰だし回しすぎだしわざとらしいしもったいつけるしフラグもがっつり置くしこんな疲れる映画もめずらしかった。

ネリー・ラロイ(マーゴットロビー)の中枢神経がダイナミズムへの渇望に侵犯されている。そんな太く短く生きろと強迫されている薬中女とトーキーへの転換期に居合わせたダグラスフェアバンクスタイプの老優と映画を夢見たメキシコ移民の話。

昔ティントブラスのカリギュラという映画があった。レンタルVHSで見たことがあるがぼかしだらけでなにをやっているかわからない。つまりローマ帝国とは日毎乱交パーティーをやっているところだという話だったが、Babylonの中のハリウッド黄金時代はカリギュラのローマ帝国以上だった。それはあるていど現実でもあったのだろうが扇情的に描かれ個人的には興味深さよりも持て余すところが大きかった。

撮影シーンではアスベストが降ってくる。
カメラマンが熱さと窒息で亡くなるトーキー撮影シーンは過剰で、色の浅い黒人奏者に靴墨をつけろという場面は感傷しすぎだった。(1930年代に黒人が黒く塗れと言われたら概況からしてハイわかりましたと即答するのではなかろうか。)
コンラッド(ピット)の自死はフラグを立ててたっぷり長回しするのがあきらかに冗漫だった。伯爵の地下牢もそこからの脱出劇もやりすぎで、ネリーの失踪は感傷的で、結末のコラージュは総括しすぎかつ引っ張りすぎだった。
とはいえDamien Chazelle。腐っても鯛というかやりすぎが凄みになっている──と見ることもできる、とは思った。

Imdb7.2、RottenTomatoes57%と52%。
評は完全に二極化していて反発する批評家はすごい剣幕でこきおろしている。なんか辟易するタイプの映画で、酷評には首肯するところもあった。が、嫌だったが底力もあった。

労作なので賞レースには好かれている。
好かれすぎマーゴットロビーがさらに株をあげたしDiego Calvaは強い目力をしていた。ピットはなんとなくわざとらしかった。

個人的にルーカスハースとエリックロバーツに感慨があった。どちらもB級常連でメジャー映画に出なくなった古い名前だが、旧世代なら刑事ジョンブックのアドラブルなルーカスハース、コカコーラキッドの変なエリックロバーツを覚えている──のではなかろうか。ふたりとも重要な役で出ていたのは小さな驚きだった。

ララランドに感心したじぶんとしてはDamien Chazelleらしくないと感じるところが大きかった。洗練からわざと外しているような人物づくりや絵づくりをしている。それをどう見るかは人それぞれだが、とりあえずあきらかに三分の二に短くできる映画ではあった、と思う。