津次郎

映画の感想+ブログ

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

恐ろしい 西部戦線異状なし (2022年製作の映画)

3.7連合国側の映画をみる機会はありましたが同盟国側の映画を見る機会はなかったように思います。 一青年の視点を通じて1917やThey Shall Not Grow Oldのような戦場がうんざりするリアリティで描かれていました。 原作はドイツの有名な小説で、アメリカで映…

殺人鬼がたらい回しに グッド・ナース (2022年製作の映画)

3.5人からどんな反応が得られるかを見たり感じたりするためだけに罪を犯すシリアルキラーがいる。愉快かどうかはともかく、愉快犯とも称される。 チャーリー(エディ・レッドメイン)は謂わば緊急蘇生(コードブルー)に偏執するシリアルキラー。(──なのだ…

老人が凶暴化 オールドピープル (2022年製作の映画)

2.0しぬ選択ができる未来があればいいなと思います。 今年(2022年)のカンヌ映画祭で早川千絵監督の「PLAN75」がカメラドール賞を獲得しました。未見なのですがPLAN75には75歳になると生死を選択できる未来社会が描かれているそうです。 海外のインタビュー…

視線の解剖 殺しのドレス (1980年製作の映画)

5.0当時50歳弱だったアンジー・ディキンソンのシャワーシーンではじまります。(ディキンソンは存命で現在(2022年)91歳です。) 不可解な絵でした。映画がはじまると、すでに若くない女が、思いっきり扇情的にシャワーを浴びているからです。 カメラがトッ…

錠剤1,000錠 峠 最後のサムライ (2020年製作の映画)

1.5演技者みんな力が入ってて言いにくいのですがあんぽんたんな映画でした。 河井継之助には先見性がありましたが、時代は幕末、開国派と攘夷派が対立していて、そのあいだにも佐幕やら尊王やら、みんながバラバラにこうすべきだああすべきだと言って譲らず…

卑怯者 ダウンレンジ (2017年製作の映画)

3.4監督は日本人ですがコンスタントに米資本にも乗せていて珍しいキャリアだと思います。上戸彩主演のあずみ(2003)やブラッドリークーパーのThe Midnight Meat Train(2008)が知られていますが、ハリウッドで名をなした監督であるわりには地味な印象があ…

圧倒的なきもさ わたし達はおとな (2022年製作の映画)

1.0VODの概説に『大人に成り切れない若者たちの姿を圧倒的なリアリティで描いた恋愛映画』とありましたがリアリティをかんちがいしていると感じました。 この映画の「リアリティ」の根拠は①セリフの日常性と②単焦点風カメラと③Awkward(気まずさ)だと思われ…

かしこいばかっぽさ 恋のスケッチ~応答せよ1988~ (2015年製作のドラマ)

5.0応答せよは1997と1994とこの1988があり年代が若いほどあとにつくられている。後発は社会現象をまきおこした1997にあやかってつくられているがクオリティに差がないのがすごい。ふつう柳の下の泥鰌をねらうとプロダクトとしての緊張バランスがガタガタにな…

寓話的 ハッチング―孵化― (2022年製作の映画)

3.7キラキラと幸福に見えるフィンランド一家ですが、実情はゆがんでいる──という家政夫のミタゾノみたいな構成で話が進みます。 娘はピュアな心をもっていてモンスターと分かり合うことができます。人物や景観や調度がきれいなのに反して怪鳥の姿はおぞまし…

インモラルな スターシップ・トゥルーパーズ (1997年製作の映画)

4.0ヨーロッパ人がアメリカで仕事をすると、うるおいが減り陽性化し軽くなる。不合理が合理化され、隠喩が直喩になり、レイトも汎化する。「Americanized」の言葉どおりの変化がおこる。このときどうしてもアメリカ化しきれなかった強い作家性が映画の妙味に…

まゆこい 私は世界一幸運よ (2022年製作の映画)

3.7暴行に遭った女性はその人生がナイフのようなものになってしまう。 かのじょは悪くない。が、恐怖の呪縛から逃れられず、自分自身に箝口を強いて、なににつけ狷介(頑固で人と和合しない)になる。 情緒が散らかりふさぎ込みどんどん自分を追い込んでいく…

わかりたかった ファイト・クラブ (1999年製作の映画)

3.0批評家の評価も高く、世間の評判も良い映画が、じぶんにはぜんぜんだった──ということが、たびたびある。 まえにレビューしたユージュアルサスペクツやアメリカンビューティーはトマトメーターもImdbも高いがわたしは面白いと思わなかった。 ところが映画…

ちゅうけいさん 大河への道 (2022年製作の映画)

5.0 かつて花のあと(2010)のレビューにこう書いている。 『中西健二監督はなぜかwikiもない映画監督ですが青い鳥という名作を撮っています。青い鳥ゆえ、ググったときぞろぞろ違うものが検索されそうなタイトルに難はありますが、個人的にはカルトだと思い…

生理的 TITANE/チタン (2021年製作の映画)

3.3たとえば園子温や蜷川実花のバイオレンス/グロテスク描写に恐さを感じない。過激化は彼/彼女の“どや”を絵にしたものだ。すげえだろ──と見せられる絵にすげえはない。 Julia Ducournau監督のバイオレンス/グロテスク描写は恐い。“どや”がないのはもちろん…

老いてなお X エックス (2022年製作の映画)

3.3Ti West監督はホラー専門で2001年からキャリアがある。目立ったポジションではなかったが、本作Xで注目され、続けてPearl(2022)の成功によって、あちらでは今、時の人になっている。 概説によると、Pearlは悪魔のいけにえ(The Texas Chain Saw Massacr…

きれいな姉妹 シスターズ (2022年製作のドラマ)

4.0かねてから韓国は整形大国と言われている。日本人はそのことを揶揄してきた。が、テレビ、YouTube、Tiktok、映画、メディアの中の日本女性は今やかなりの確率でいじった顔をしている。もはや日本と韓国が逆転している。 知っての通り「韓国は整形大国であ…

アル中と娼婦のはかない恋 リービング・ラスベガス (1995年製作の映画)

3.6日本は他の国よりだめ人間・クズ人間を主人公とした映画が多いです。 てことは、わたしたち日本人はだめ人間を主人公とした映画を好んでいるか──と言えば、そんなことはない。と思います。 日本にだめ人間を主人公とした映画が多い理由は、それが好きな監…