津次郎

映画の感想+ブログ

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

巨大な田舎、東京 奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール (2017年製作の映画)

2.5この監督の特徴で、業界の映画であり、都市の映画でもある。モテキもバクマンもSCOOP!も業界で都市だった。 東日本では、東京でなければぜんぶ田舎といっても過言ではない。畢竟、日本では、どんな分野であれ、多少なりとも野望があれば、高校を卒業する1…

邦画はテレビ出身の監督なら安心 祈りの幕が下りる時 (2017年製作の映画)

4.5場面転換で俯瞰になり景勝がぐわーっと寄ったり引いたり流れたりします。それが何度もあります。きれいな景色で、きれいなパンです。 撮影に腐心しています。40年の歳月を往き来する伊藤蘭や山崎努や烏丸せつこの顔のエフェクトにそれがしのばれます。伊…

巨匠、なのか? 散歩する侵略者 (2017年製作の映画)

2.5体を乗っ取られて、または擬態によって、宇宙人が人間の姿をしている設定は、ひんぱんにSF映画に使われます。そのばあい、人間の姿をしていながら、宇宙人を表現しなければなりません。態度が重要になると思います。 アンダー・ザ・スキン(2013)では、…

巨匠、なのか? 予兆 散歩する侵略者 劇場版 (2017年製作の映画)

1.5人の概念がどうなっているのか知らないが、ここでは家族、プライド、過去、未来、命、恐怖、異物などの言葉ごとに、分別管理されているようである。「それもらいます」と言い、額に触れると、そのアーカイブから、ひとつの概念が抜き出される。器用ではな…

予想をはるかに超える寒さ ここは退屈迎えに来て (2018年製作の映画)

1.0日本人が知っている風景がある。国道もしくは主要線の両側に、すき家吉野屋サイゼリアくるまやかつや丸亀スシロー王将などが居並ぶ風景だ。三浦展の「ファスト風土」を、そのまま体現している。 10年ほど前、会社に出入りするコンサルタントの指南で何人…

逡巡する異色のSW スター・ウォーズ/最後のジェダイ (2017年製作の映画)

3.8ひょっとしたら天才かもしれない特徴というものがあります。頭の回転が速いとか、学校時代のスーパースターとか、耳朶が長いとか、左利きとか、薬指が人差し指より短いとか、面長であるとか、そんな旧友がいたものですし、自分に見いだして、束の間、いい…

即興性と多彩な声色、まさにはまり役 グッドモーニング、ベトナム (1987年製作の映画)

masani 3.6IMDBのランクをよく見るのだが、評価の高い映画が、じぶんにはぜんぜんだということが、たまにある。小市民なわたしはそれがけっこうくやしい。 とくに8点を超えている映画で、面白さがわかんないと、かなりくやしい。その映画の皮相がかっこよか…

なにげに初めて映画館で見た男はつらいよ 男はつらいよ お帰り 寅さん (2019年製作の映画)

4.0男はつらいよを映画館で見たのは初めてだった。満男の来歴をうまく寅さんが絡むように組み立てた話には腐心が感じられた。気兼ねせず結婚しろと諭される満男に、東京物語の紀子が重なる気がした。泉ちゃんは棒読みに棒演技、むしろ昔のほうが上手だったが…

よくほえるぱよく 新聞記者 (2019年製作の映画)

2.0朝生の名物MCがよくぞ映画にしたと寸評しているが、まったくそうは思わなかった。主人公らは、弱者であり、被害者であり、闇に拮抗し、屠られた者たちに寄り添い、正義をつらぬき、誠実に生きてる──ことを、強調し過ぎだと思う。また生物化学兵器は飛躍が…

菊池君うざすぎ 志乃ちゃんは自分の名前が言えない (2017年製作の映画)

2.8いつもの日本映画なんだろうな、と思って見た。が、抑制があった。 素朴な田舎の高校生である。それを描写する映画も、お涙頂戴や承認欲求や岩井俊二風や、吃音に対する特別な問題提起を用いていない。また、ここでの演技があがなわれることで、別のステ…

もはや王道の低品質 不能犯 (2018年製作の映画)

2.0漫画で、吹き出しにセリフでなく、なぐり書きのぐるぐるを書く心象表現がある。名称があるのか、ないのか、解らない。あったとしても浸透はしていないと思う。 易しく丁寧に説明したのに、ぜんぜん解ってもらえない──とか、ものの道理や筋道を逸脱してい…

雨合羽を着てシャワーを浴びる パターソン (2016年製作の映画)

5.0Patersonはじぶんとおなじ名前の街Paterson, New Jerseyでバスの運転手をしている。そこは有名な詩人William Carlos Williamsの故郷であり、Patersonも詩作をする。 Patersonは日常から刺戟をもらう。つれ合いのローラは自己完結している。勝手に幸福にな…

良い意味でなにも残らない 銀魂 (2017年製作の映画)

3.0何も知らない人の意見です。下地に幕末と新撰組があるが、それは配役とロケーションとコスチュームを提供するだけで、実質、お笑いネタ集である。ネタ元には、わかるものとわからないものがあったが、わからなくても、おぼろげに何かのパロディであること…

風刺にして圧倒的 ジョジョ・ラビット (2019年製作の映画)

4.6ジョンブアマンの戦場の小さな天使たちで学校が爆撃に遭ったとき、子供たちが空をゆく敵機を仰いで「サンキュー!アドルフ!」と言ったのを覚えている。子供が子供ゆえに、戦況ともイデオロギーとも無縁なほど、マジカルなペーソスになりえることを私たち…

遠きにありて思ふもの 笑う故郷 (2016年製作の映画)

4.0ノーベル賞作家が40年ぶりに故郷の片田舎を訪れる話。招聘され、数日滞在し講演や街の行事をおこなう。むろんフィクションであり、コメディの体裁がある。成功者が辺鄙で酷い目に遭うスラップスティックなものを想像した。はたしてそんな感じで進むものの…

“西部劇”を刷新 スロウ・ウエスト (2015年製作の映画)

3.5簡単に死ぬのが西部の無情をあらわすのに貢献するとはいえ、やたら死ぬので、指名手配の意義が怪しい。いったい誰が訴え出て、誰に管理されているのだろうか。無法なのは解るが、狩人に狩人がいるなら同心円状に拡がるばかりで西部は無人である。映画にbr…

真夜中のモールで 恋の時給は4ドル44セント (1990年製作の映画)

4.0William Forsytheという俳優がいて、多く映画に出てくるが、脇役というより端役的なのが多い。強面で、ほぼ悪役でやってきた人である。エドワードジェームスオルモスのAmerican Me(1992)では目立っていた。ショーンコネリーのThe Rock(1996)でも多少…

まだストーカーという言葉は使われていなかった ストーカー (1979年製作の映画)

4.0ストーカーという用語が一般化した当初、タルコフスキーが脚光を浴びていると勘違いしたことがある。ストーカーの呼称が無かった時代──おそらく80年代の半ばまで、それは変質者とかしつこい奴とか変態などと呼ばれていた。もしその当時誰かがストーカーと…

教科書のような完成度 殺人の追憶 (2003年製作の映画)

5.080年代の韓国。よく知らないが、激動期であったと思う。不人情で、旧弊で、権柄づくで、澱んでいる。ペパーミントキャンディの空気感。陰気な時代の陰惨な事件。暗い。暗いけれど惹かれる。ぐいぐいからめ取られる。恐怖映画と言っていい。迫真だった。 …

定義フィルムノワールの中核 サムライ (1967年製作の映画)

5.0冒頭に武士道の一節が出てくる。よく判らないが新渡戸稲造のだと思う。外国人は、孤独と侍を結びつけて捉えている。日本での侍の位置付けとは少し異なっている──と思う。日本で侍が描かれるとき、それは七人の侍のごとく多様だが、孤独のエレメントよりは…

ギフテッドがつくったギフテッドの映画 リトルマン・テイト (1991年製作の映画)

4.0ジョディフォスターはギフテッドだったのだと思う。リセへ通い13歳で女優賞をとる。イエール大へ進学し、フランス語を流ちょうに話し、メンサのメンバーでもあるという。それらがwikiに書いてあった。マネーモンスターの広報で来日していたジョディフォス…

一種のコメディ よこがお (2019年製作の映画)

3.9筒井真理子も池松壮亮も吹越満も暗い。この布陣だけなら気が滅入っていた。が、市川実日子がパッと明るい。明るいキャラクターではないのに、垢抜けた顔と伸びすぎの佇まいに、どこか非現実を持っている。助けられた。 映画はサスペンスフルに展開する。…

気取らず無欲 フランシス・ハ (2012年製作の映画)

4.5スイーツというのがあるけれど、その定義をよく理解していないかもしれないが、フランシスはいうなればスイーツかもしれない。嫌なスイーツじゃなくて、愛嬌のあるスイーツ。現実でまるでフランシス・ハを見たばかりのような女性に会ったことがある。アメ…

めずらしくまとも 恋は雨上がりのように (2018年製作の映画)

3.6コミックの映画化とのことだがコミックの映画化からくる印象をくつがえす純粋でまっとうな話だった。珍しい無欲な日本映画でもあった。 わたしはずっと飲食業にいるが女子高生あるいは年若い女性がうだつのあがらない年配男性に惹かれてしまうことは珍し…

ゆるいけれどぬるくない ヴィンセントが教えてくれたこと (2014年製作の映画)

4.5ベルモントパーク競馬場の場面。800倍の三連単を当てるが貸し元が見張っている。喜びを抑えてオリバーとふたりでスったroleをする。そのときBronze Radio ReturnのFurther Onがかかる。大金をレジ袋に入れるとスローになって駐車場へ走る。さびのところで…

感動の名演 それだけが、僕の世界 (2018年製作の映画)

4.2ハリウッドでも活躍するビョンホンが市井の人を演じている。もちろん俳優だから役作りしているわけだが、日本の俳優だとここまでリアルな庶民にはならない。ましてニの線で来た俳優なら事務所が蹴ってしまうかもしれない。 ビョンホンはその日暮らしの自…

自分探し ハチミツとクローバー (2006年製作の映画)

4.4とても印象に残っている。今見ると実力ある俳優達の共演だった。もう定評が確立しているが──というより、当時既に演技派と見なされていた人たちだが、多数にも関わらず、それぞれの個性を適確に配役し、引き出し、引き立てていた。群像にかかわらず、埋没…

共感できる表現力 虐待の証明/ミス・ペク (2018年製作の映画)

4.2母親からの虐待とそのトラウマから自棄的に生きる女性が、虐待を受けて傷だらけの近所の子供を助けようとする。実話に基づいているらしいが、そうは思えないほどドラマチックに展開する。底辺に生きる者たちの息吹がリアルで、すんなり共感した。役者が巧…

三国志風厨二病歴史絵巻戦闘編 キングダム (2019年製作の映画)

1.5中国の衣装を着けた日本人が日本現代口語をつかって演じる剣劇である。それがいけないとは思わないし、そのことが違和感になっているのではない。この映画の違和感は、お話が幼いことに因っている。これがマンガなら問題はない。原作のことはぜんぜん知ら…

存在を消した写真家 ヴィヴィアン・マイヤーを探して (2013年製作の映画)

4.2功名心がない、誰かにほめられたいとは思わない、意外にそんな人は少ない。いや、ほとんどいない。世の中はやったことの対価で成り立っている。誰でも何らかの欲得をのぞむ。無欲なんて、あり得ないし、多少なりと腕に自覚があるなら、それを生かそうとす…