津次郎

映画の感想+ブログ

幽霊と家族 ゴーストバスターズ/フローズン・サマー (2024年製作の映画)

Posters showing the Ghostbusters and the ghost in a frozen New York City

3.8

メロディ(エミリーアリンリンド)は幽霊だがフィービー(マッケナグレイス)と気が合った。メロディは成仏できなくて人界をさまよっている霊魂。性格はさばさばだが、さばさばの鎧の下に寂しさを隠しているタイプ。悔恨と、彼女自身と家族を奪うことになったマッチを携えている。

フィービーは母親にチームから外されたこともあって、継父(ポールラッド)ともぎくしゃくしていた。そんな落ち込んでいるときに出会ったメロディはするっと心のなかに入ってきた。ソウルメイトができるときの感じ。フィービーは実体でメロディは不実体だが、ふたりの間には友情といえるものがあった。

ところがメロディは恐怖王ガラカへの協調を脅迫されていて、抽出装置で不実体になったフィービーを利用し、凍結封印を解いてガラカを人界へ解き放つ。

このメロディとフィービーの関係性がGhostbusters Frozen Empire最大の見どころ。友達だと思っていたのに裏切られた、からの多幸なクライマックスへ至る曲線はお家芸だった。

Afterlifeしかりだが新機軸Ghostbustersのエモーショナルな大団円へもっていくエネルギーはすごかった。Afterlifeと同じGil KenanとJason Reitmanが書いているが素晴らしい脚本だった。

思うにハリウッドのコメディは、日本のこまっしゃくれた映画監督のこまっしゃくれた映画よりも、はるかに解りやすく、喜怒哀楽や友情の大切さや人生の機微などについて、老若男女を問わず、有機な見解を提供してくれる。オーディエンスにとってエンタメ界隈がそうである以上、こまっしゃくれた日本映画にどんな存在意義があるのか、個人的にはわからない。と思うことがある。余談だが。

大人とも言えないがすでに子供ではないマッケナグレイスのぶかぶかなジャンプスーツがこのうえなくアドラブル。前作同様おっとり感の出し方がすごくうまい。
ちなみに世界が、若く美しいアングロサクソン──という存在にたいして、そうでない者たちを慰謝するために設えた言葉が「多様性」という言葉ではなかろうか。
マッケナグレイスを見ていて、あるいはたとえばテイラースウィフトやビリーアイリッシュやそこに群がる無尽蔵の声援を見るとき、そんなことを思ったりする。ことはありませんか。

話は複軸になっていてフィービー達スペングラー家と、Kumail Nanjianiが演じるファイアマスターの後継者、旧ゴーストバスターズのReunionもある、豪華な構成。
前作で好演したポッドキャストは青年という感じになっていたし、目新しいところではPatton Oswaltも出てきた。ぺったんこになるマシュマロマンも大暴れする。
が、雑多な要素をまとめているのは継父が義娘に認められるか──ということで、複軸のコメディが温かみと多幸感あるファミリードラマとして成り立っていた。とりわけクライマックス。みんなわちゃわちゃの状態でのハッピーエンド。素直に「ああ楽しかった」と言える映画だった。さすがだった。

ただし批評家評はかんばしくなかった。
imdb6.1、RottenTomatoes42%と83%。

映画をよくごらんになる方であれば、本作が批評家評が下がって、一般評が上がるタイプの映画だ──ということが(なんとなく)解ると思うが、RottenTomatoesもその通りになっている。
前作のほうが良かった──というのも、よくわかる。前作AfterlifeはGhostbusters全体から見ると4番目の映画だが、新機軸としては事実上の初回作品と言えた。だからFrozen Empireは二作目のジンクスを被ってしまっている。エネルギーが落ちるのは無理のない話だった。

だが本作はサービス満点で良心的で罪も嫌味もない。楽しめるし、ホロリとくるし、エイクロイド(71歳)もビルマーレイ(73歳)もハドソン(78歳)もAnnie Potts(71歳)もみんな元気でgolden yearsを謳歌するんだ。だから率直に俺もがんばろうって思ったよ。