津次郎

映画の感想+ブログ

エスター前夜 エスター ファースト・キル (2022年製作の映画)

エスター ファースト・キル

3.3

童顔な女優がいるが、きれいな人はある程度の童顔属性を持っているので判定を甘くすればたくさん入ってしまう。

それでも代表的な童顔をあげるとすると(いま思いついた限りで網羅性はないが)安達祐実とか八千草薫とかチャン・ナラとかになると思う。

とりわけアジア人は童顔認定されやすく代表的童顔をあげにくいが白人で童顔といったら旧世代はジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドやリュドミラ・サベーリエワをあげると思う。

ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドはフランスっぽい名前だが英語圏で活躍した人だった。映画通がよく好きな映画にあげる、まぼろしの市街戦(1966)にも出ている。2023年現在ご存命で81だそうだ。

デパルマの映画でObsession(愛のメモリー、1976)というのがあって、内容は覚えていないが、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドのとあるシーンを覚えている。(たしか愛のメモリーのワンシーンだったと思うが違っていたらすいません。)

ビュジョルドが“大人”に手を引かれて行くシーン。童顔のビュジョルドは背を低くしただけで“子供”を演じていた。

何らかの非常事でせわしなく手を引かれながら不安そうに“大人”を見上げる。子供目線のカメラだが上半身だけで足は見えない。“ひざ歩き”しているのか、あるいは他の仕掛けなのかわからないが、背を低く見せるだけで“子供”を表現していた。それはデパルマの技というよりは童顔のなせる技だった。

エスターの前日譚が描かれる本作では、25歳のイザベルファーマンが13年前に戻る必要があり、デパルマと同じ背を低く見せる方法が使われていた。遠目のときや顔が見えないときは代役であろうが近接で顔付きの全身像はほぼなかった。

『制作スタッフは、CGIの特殊効果を使用せずに再びエスターを演じることができるように、メイクアップと強制遠近法のショットを組み合わせて使用した。また、2人の女性子役がファーマンのボディ・ダブルを務めた。』
(Wikipedia、Orphan: First Killより)

しかしファーマンは童顔じゃなかった。
アメリカ人だが血はロシア系ユダヤ人でむしろ老成があらわれやすい顔立ちだと思う。もちろんそれが悪いと言っているのではない。そもそもエスターはファーマンが子供でありながら小賢しい(こざかしい)顔付きをしているから抜擢されたのだ。

ご存じのように映画エスターのプロモーション画像は撮影時9歳のイザベルファーマンの顔がどーんとあるだけ。それだけでホラーと認識されたのだ。

そんなファーマンが25歳でエスターを再演するのは無謀だが大人の骨格をして大人の表情をするファーマンが“子供”を演じている姿が・・・いや違うな。

エスターは設定上、下垂体性機能不全によって子供の体つきをした30歳の女なのだから大人になったファーマンが演じる本作のほうが合理であり、9歳に30歳を演じさせた前作のほうが無謀だった──と見るべきか。そもそも子供になりすましたサイコパスの役なのだから大人に見えて問題はないし童顔でなくてもいい。

・・・。提起しておきながら撞着したが、それらのつっこみどころが味わいとなって楽しめる映画になっている。

imdb5.9、RottenTomatoes70%と77%。

RottenTomatoesの批評家たちは『オーファンファーストキルはホラー映画の、私たちが必要だとは思っていなかった前日譚です。』とか『正直なところ私はゴミを期待して観に行ったのだがホラーの傑作とまではいかないもののまともな作品ではある。』とか『この13年後の前日譚はあなたの期待値が低いことを知り見事にそれを利用している。』とか、一様に諦観的に見始めながらひねりがあって評価を改める──という感じが多かった。

たしかに想定外のひねりがあったと思うが前作も今回も父親の欺されやすさに呆れた。キラーキッド映画なんだからしょうがないとはいえ周りがみんなちょろすぎる。