津次郎

映画の感想+ブログ

外国映画

若返りの泉 ファウンテン・オブ・ユース 神秘の泉を探せ (2025年製作の映画)

2.0 洋画の追いかけっこやカーチェイスでは露天商をひっくりかえすのがつきもので露天商というものはだいたいユーラシアの下の方で非シルクロードでグローバルサウスで、早い話が白人どもはアジアの繁華街の露天商をひっくりかえすのがアドベンチャーだと思…

たとえスウィーニーでもダメぜったい エコー・バレー (2025年製作の映画)

2.5 母と奔走したジャンキー娘の話で、グレンクロースとミラクニスのFour Good Days(2020)を思わせる関係性だが、母親が甘いところが違う。結果的に娘(シドニースィーニー)にやりたい放題やられる母(ジュリアンムーア)が描かれる。 Four Good Daysは薬…

映画とランプシェード ワン・セカンド 永遠の24フレーム (2020年製作の映画)

4.0 1975年、文化大革命の最後期。片や労働活動中に亡くなった娘が出ているニュース映画を見るために労働矯正施設を脱走した男。片や母を亡くし父親に捨てられた孤児の少女。幼い弟を養いながら必死に生き延びようとしているが、映画フィルムでつくったラン…

はめられた絵描き 英国式庭園殺人事件 (1982年製作の映画)

3.6 ブラックユーモアと淫靡と貪欲とシンメトリカル。トラウマ系エロ絵巻ピーターグリーナウェイ。UNextに初長編映画のThe Draughtsman's Contract(1982)があったので初めて見た。作家の処女作には原石がつまっているというが、確かにこの映画にはコックと…

バディコメディになった続編 ザ・コンサルタント2 (2025年製作の映画)

3.3 バディコメディになっていて成功した2と言えるが初作が好きだった個人的な理由はノワールコメディと哀愁だったので違う方向へ行ってしまったと感じた続編だった。しかし8年も経ってたんだなあ。 どこに出てくるバーンサルも野卑でお行儀が悪い。デヴィッ…

史上最恐の高所体験 FALL/フォール (2022年製作の映画)

3.7 東京スカイツリー(=634メートル)とほぼ同じ高さの廃テレビ塔へ登るというワンイシュー映画。予想よりずっと良かった。エクストリームスポーツのインフルエンサーが、許婚をうしなった悲しみを克服するために、より危険なことに挑戦するてな感じの筋書…

冬、春、夏、秋 私たちのラブストーリー Winter Spring Summer or Fall (2024年製作の映画)

3.0 優等生が自由人に出会って、心乱れるという話なんだが、その自由人バーンズを演じるパーシー・ハインズ・ホワイトの冬ジャケットに日本国旗が腕章みたいに張り付いてたんで、それが会話にあがってくるか見たかった。 レミ(オルテガ)は両親の期待にこた…

これぞ男爵芋 愛を耕すひと (2023年製作の映画)

4.0 荒れ地の開拓を性格のねじ曲がった領主に邪魔しまくられる話。史実に基づいて書かれた原作だそうで、デンマークの王政時代にドン引きする高ストレス歴史ドラマだった。 爵位を得るためとはいえ、不毛地帯でじゃがいもを育てて有効活用させようってのに、…

クズ彼氏からの解放 コンパニオン (2025年製作の映画)

3.7 従順なロボットの反逆というSFの形態をかりながら描くのは男のDVやグルーミングやミソジニーからの解放になっている。リーワネルの透明人間もSFの味付けをしながら独占欲の強い男に囚われた女の解放を描いていたが、あの感じと似ていた。 アシモフのロボ…

おばあちゃんの味食堂 マンジャーレ! 〜ノンナのレストランへようこそ〜 (2025年製作の映画)

4.0 おばあちゃんの味食堂をつくる──という実話に基づいた話なのでタリアシャイア、ロレインブラッコ、ブレンダヴァッカロにスーザンサランドンという懐かしい名前が並んだ。チョボスキー監督がきれいなシンデレラ曲線を描く多幸感あふれるファミリードラマ…

無駄にファッショナブル アナザー・シンプル・フェイバー (2025年製作の映画)

2.3 リゾートアイランドで豪勢で裕福で外面としてはナイヴズアウトグラスオニオンやホワイトロータスを思わせるのに加え前作につづいてやたら衣装に凝っている。が、見た目に反しグダグダした展開でタイトル以外はツーのロジックを踏襲した。前作レビューで…

死に身の戦場カメラマン シビル・ウォー アメリカ最後の日 (2024年製作の映画)

3.2 A24史上最高の製作費を費やした映画と言われ興行も批評も成功した。 が、私見としてはゾンビを内戦にした映画、という印象。主人公はロイターの記者ら。リアルだがシチュエーションがありそうにないから、ジャーナリズム魂の根拠が希釈された。にもかか…

連鎖を断ち切る ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US (2024年製作の映画)

2.9 父親が暴力的だった女子が成長してつきあった男も暴力的だったという話がよくある。女性がもっている暴力へのトラウマが、暴力性向をもった男を引き寄せる「服従のフェロモン」とでもいうべきものに変換され、それを暴力的男たちが嗅ぎつける、というよ…

悪の凡庸性 関心領域 (2023年製作の映画)

3.7 スティーヴンスピルバーグがこの映画をほめて「特に悪の凡庸性について意識を高める上で多くの良い仕事をしている」と語ったそうです。 スピルバーグが使った「悪の凡庸性」とは哲学者で政治思想家のハンナアーレントが1963年に著した本『エルサレムのア…

お金かかりすぎ エレクトリック・ステイト (2025年製作の映画)

3.2 ロボット工学三原則が使われているのと根底にロボットは意識をもつのか?というテーゼがある。さいきんみたザクリエイターにも同類の主題があったしA.I.やI, Robotやアリータやエクスマキナやウォーリー等々多くのロボット映画に偏在するモチーフであろ…

感染るんです スマイル2 (2024年製作の映画)

3.8 誰かにうつさないと破滅する笑顔の呪いの続編。呪いに罹るのは薬物乱用から立ち直ったポップスターのスカイライリー。架空ながら造形に瑕疵がない。じっさいドリューバリモアのショーに出る人はみんな闇のない健全発言をするのだが、それを始まりに置い…

So others may live 守護神 (2006年製作の映画)

4.0 ベタで商業的だが感動した記憶がある。話はAn Officer and a Gentlemanやマーベリックのような定番構造で青年が厳しい訓練に鍛えられながら色恋もしつつ一人前に成長していく感じ。バーで一人でいるヒロインをくどけるかの賭とか酒場の乱闘騒ぎとかロー…

華奢な妹 ユーロトリップ (2004年製作の映画)

3.4 ミシェルトラクテンバーグの訃報があった。2025年2月26日、39歳だったそうだ。死因のくわしい報道は出ていないが直近で受けた肝臓移植の合併症の可能性がほのめかされている。近影は痩せて元々白かったのが更に白く黄疸も指摘されていた。バフィとゴシッ…

ヒッチコック風 トラップ (2024年製作の映画)

3.7 人気ミュージシャン「レディレイブン」のコンサートへやってきた父娘。予算とエキストラを投じたコンサートは現実的な臨場感があったが、主役クーパー(ハートネット)はどこに居ても頭一つ分でかすぎて(191㎝)やたら浮いた。彼は娘のライリーがaを4つ…

印象的な子役 冬の小鳥 (2009年製作の映画)

3.7 2025年2月16日女優キムセロンが自宅で死亡しているのが見つかった。24歳だった。アジョシ、隣人、守護教師、私の少女、優秀巫女など子役~女学生役で見知った顔で、主演も冠ドラマもある女優だった。セロンは2022年5月飲酒運転をして物損事故をおこした…

暴力が楽しい デスプルーフ in グラインドハウス (2007年製作の映画)

4.0 低予算映画へのオマージュというよりダイアログ重視な映画になっていて顧みると昔のタランティーノは登場人物の会話に長尺をとるスタイルだった。とりわけ有名なのは多分レザボアドッグのマドンナスピーチと呼ばれている巷談だと思う。ダイナーにいると…

その女偽腹につき オメデタ⁈ そんなトコ (2025年製作の映画)

2.4 エイミーシューマーがフェイク腹をつけている画像を見ただけで「フェイク腹をつけていい気分になって外せなくなっちゃうんだな」というところまでわかった。それで起こりそうなドタバタも詳細ではないにせよぼんやり想像できた。そうすると見る前から半…

エンタメに徹した共産主義者 トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 (2015年製作の映画)

3.5 トランボの脚本からイデオロギーは感じない。それに驚嘆する。ハリウッドに敵視されるほどの思想をもっているなら作品にそれがあらわれてしかるべきだからだ。ところがトランボの書いたのはすべて完全なエンタメで、しかもゴーストで書いたのが二度もオ…

きもかわいいダストマルチャン 悪魔と夜ふかし (2023年製作の映画)

3.4 野心をもった才能がひしめく海外では定期的に新進ホラー監督がスマッシュヒットを飛ばすのでもう整理が追いつかないがLate Night with the Devilもそんな映画のひとつで批評家も賞レースも成功している。TALK to Me(2022)のフィリッポウ兄弟みたいな兄…

異色な組み合わせ 真心を込めて招待します (2025年製作の映画)

2.8 ヴィスワナサンは明るく濃くてぷよっとしていて好ましくおまけにウィルフェレルだから喜んで見た。ただしヴィスワナサンはウィルフェレルの娘には見えなかった。亡妻がシュリデヴィなみに目の大きなタミル人だとしてもウィルフェレルの血はぜんぜん入っ…

孤独な葛藤 陪審員2番 (2024年製作の映画)

4.0 荒唐無稽とまではいきませんが、かなり突飛な話だと思います。陪審員に召集されたジャスティン(ニコラスホルト)は事件の概要を聞きながら回想している間に、じぶんが車ではねて鹿だと思っていたのが人だったかもしれないと思い当たります。日時も場所…

手なずけられた子供 Love According to Dalva(英題) (2022年製作の映画)

3.7 ダルバは小児性愛者の父親によって立場的にも性的にも妻として扱われていた12歳の少女。そのグルーミング(=未成年が精神的・肉体的に手なずけられ、アイデンティティが歪むこと)を解いていくのが映画の骨子。 母親は当時5歳だったダルバの共同親権を…

グレターガーウィグトリビュート マイ・オールド・アス ~2人のワタシ~ (2024年製作の映画)

4.0 未来の自分に会って今の自分を見つめ直すという話になっている。レディバード(2017)を思わせた。というのもレディバードの骨子は家族愛と地元愛を再認識するところにあったし、主人公エリオット(Maisy Stella)の弟がシアーシャローナンのストーカー…

遺跡への旅路 コンパートメントNo.6 (2021年製作の映画)

4.0 Kanozero Petroglyphsはロシアにある遺跡だそうだ。岩石に動物の絵や文字が刻まれているが、意味はまだ解明されていない。フィンランドの女学生が列車に乗ってその遺跡を見に行く。その道中劇。 カンヌのグランプリ(二席)になりアカデミーの国際長編映…

35年ぶり ビートルジュース ビートルジュース (2024年製作の映画)

3.7 ビバリーヒルズコップは(4つ目の)続編までに30年かかったがビートルジュースは35年かかった。 3作目の可能性について聞かれたバートン監督は「これつくるのに35年かかってるんだから計算したらつぎは僕も100歳超えてることになるわけで科学が進歩する…