津次郎

映画の感想+ブログ

外国映画

生き別れた“父娘” ブレイブ・ロード~名もなき英雄~ (2017年製作の映画)

3.7 朝鮮戦争下でのトルコ国連支援兵と戦災孤児のふれ合いを描く。 トルコと韓国の合作で、実話をもとにしているが、短絡しながらサクサクと進む。すこぶる演出がうまく、絵も明解で人も景色もきれいで、暗くせず明るく描いてある。 映画に先立つ2010年、韓…

欺瞞を克服 A Good Person 87分の1の人生 (2023年製作の映画)

4.5 アリソン(ピュー)は運転中スマホを見たことで同乗者二人を死なせてしまう。 良心の呵責にさいなまれ、婚約も破棄して引きこもり、鎮痛剤の麻痺作用に依存するようになる。 が、贖罪の態度をとりつつも、相手側の過失による事故であり、あくまでじぶん…

底知れないヒューマニズム 雪山の絆 (2023年製作の映画)

5.0 ウルグアイ空軍機571便遭難事故を扱った映画。監督はゴヤ賞常連の名手J.A.Bayona。 Netflixの前告知を見たとき「あの事故をまた映画化したのか」という感じで意外な気がした。ウィキペディアで調べるとドキュメンタリーを含め5度映画化されていてこれが6…

蜘蛛かよ REBEL MOON ー パート1: 炎の子 (2023年製作の映画)

2.6 七人の侍のスペースオペラバージョンという印象。DUNEのハルコンネンみたいに残虐な帝国から村を守るため、星を巡って英傑が集められる。既視感のあるいろんな要素が集まっているが画から潤沢な予算は伝わってきた。 が、なぜかときめかない。傑物が出て…

見たくなる配役ライランス&ドゥイッチ アウトフィット (2022年製作の映画)

3.6 概要によると監督のGraham Mooreはイミテーションゲーム(2014)の脚本を書いた人でこれが初監督だそうだ。 緻密なセリフ回しで持って行く戯曲のような作劇法で書かれていて、この主役に演劇寄りのマークライランスが充ててあるのは道理だった。 しかし…

研ぎ澄まされた体幹 ダンサー イン Paris (2022年製作の映画)

4.5 主役エリーズを演じるMarion Barbeauはパリ・オペラ座の主席ダンサーとのことで、6歳からバレエをやっているが映画主演ははじめてだそう。だが女優が余技というわけではなく、ちゃんと魅力ある主人公をつとめている。 公演中に足首をけがしてもう二度と…

コーガンのキモさみなぎるサイコスリラー Saltburn (2023年製作の映画)

4.0 バリーコーガンのキモさみなぎるサイコスリラー。 オリバー(コーガン)はオックスフォードに入学したとはいえ中大在学中のステハゲという感じのぼっち。対してフェリックス(Jacob Elordi)はもてもての爽やかイケめんで、コーガンは蛇のようにぬめぬめ…

やにだらけ マエストロ:その音楽と愛と (2023年製作の映画)

3.4 子供のころ指揮者という職業に疑問をもっていました。でたらめにタクトを振っても大丈夫な気がしたからです。 たとえばシンバルを鳴らすところでシンバルに向かって合図しなくても奏者はシンバルを鳴らすのではないだろうか。 楽譜もあるのだしシンバル…

ヤクで成長 ビューティフル・ボーイ (2018年製作の映画)

3.7 一定期間、鎖かなにかで繋いでおきゃいいのに。とは思う。人道的ではないが嘘ついてでも裏切ってでもなんとしてでもやるのがアディクトであるなら繋いでおくのが確実でしょうに。 ──と思ってしまう薬物依存の様子を描いている。 息子のニック(シャラメ…

優柔不断な父 ある日、クイーンズで (2022年製作の映画)

4.0 ネットフリックスでPaddleton(2019)という映画を見たことがある。マーク・デュプラスとレイ・ロマノがでていて、末期がんのデュプラスが安楽死するのを、ロマノが看取るという話だった。 副題がA Comedy of Dramatic Proportionとなっていて死ぬ話が軽…

アーミッシュのような共同体 ウーマン・トーキング 私たちの選択 (2022年製作の映画)

3.5 プロテスタント一派の共同体。暴行事件をきっかけにコロニーを去るか、戦うかを話し合う女達。 アーミッシュのような世界だがタイトルの通り話し合いに占められていて敵=男がでてこない。細部が省略され舞台劇のようだが、実話にもとづいた話だそうだ。…

フレンズの最終回と 終わらない週末 (2023年製作の映画)

3.2 ある朝、人間嫌いのアマンダ(ロバーツ)は突発的な休暇を思いつき、家族でロングアイランドの借家へ出かけるが、不思議な現象に遭ったり、住人が戻ってきたり、混迷をきわめる。 綺譚なのか戦争なのか判断できない。シャマランのような超自然現象を描い…

利権に群がる キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン (2023年製作の映画)

4.0 オーセージ族の居住地に石油が出て未曾有の好景気に湧く。戦時中糧秣をやっていたアーネスト(ディカプリオ)が職をもとめてヘイル叔父(デニーロ)の牧場へ帰ってくる。ヘイルは石油の受益権を得るためにアーネストをそそのかして血統を片っ端から暗殺…

グルーミングの手口 ダイブ (2022年製作の映画)

4.0 飛び込み競技のスポ根映画かと思って見始めたが、いわゆるグルーミングを描いた映画だった。 『性犯罪・性的虐待の文脈におけるグルーミング、チャイルド・グルーミングとは、性交や猥褻行為などの性的虐待をすることを目的に、未成年の子どもと親しくな…

エイスグレイド2 ベスト・フレンズ・エクソシズム (2022年製作の映画)

5.0 エイスグレイドのエルシーフィッシャーの近影がエリオットペイジのようになっている。撮影用の変身なのかもしれないが、転換したようにも見える。自認するpronounsはthey/themだそうで外観上はすでに女子の面影はない。(they/themは一般的には複数形だ…

ファイトクラブつくろうぜ ボトムス ~最底で最強?な私たち~ (2023年製作の映画 )

3.7 PJとジェシーはふたりともレズビアンだが親友。おたがいにチアリーダーの子に欲情し、やりたいと思っているが、彼女らは映画タイトルどおりスクールカーストの底辺でうごめいているので、護身クラブをつくって気を惹こうとする。 フットボールチームのバ…

思い出のなかの父 aftersun/アフターサン (2022年製作の映画)

3.5 31歳の父カラムは別れた妻との娘ソフィ11歳とトルコへ休暇旅行に来ている。 カラムはやさしいが自信がなく迎合的。鬱々とした内面を隠し、子供と過ごす夏休みをうまくやり抜こうとしている感じ。 ソフィは多感で好奇心旺盛。周囲を観察しロマンスや性的…

長い一日 アシスタント (2019年製作の映画)

3.3 映画製作会社で働く事務職員の一日を描く。念願の映画製作会社に入社したプロデューサー志望の主人公。まだ暗いうちから出勤するほど意欲的だが業務はストレスの泥濘に没している。 ── たとえば清掃作業員やったことありますか。正職でもアルバイトでも…

パパ活女子の改悛 ティファニーで朝食を (1961年製作の映画)

3.0 ティファニーで朝食を、と言えばタイトルだけは知っているが、タイトル以外のことは知らなかった。 トルーマンカポーティの中編小説をブレイクエドワーズ監督が1961に映画化したものだが原作とは違う恋愛コメディになっていてオードリーヘプバーンやジョ…

スミス好きな ザ・キラー (2023年製作の映画)

3.8 リーマーヴィンののリメイクだと思っていたら違った。あれはsがついてた。チャン・ヒョク主演の同名もあった。汎用名詞すぎて検索割れするタイトルだがフランスの漫画の映画化だそうだ。 最初から主人公が語る体で哲学がナレーションされる。概説に(原…

定番らしさ もうひとりのゾーイ (2023年製作の映画)

3.1 恋愛ドラマみたいな甘美なシチュがきらい、クールな女を決め込んでいたマッチングアプリの開発者ゾーイ。そんな彼女が意図しない加害からの記憶喪失からの勘違いからの紆余曲折を経て、あり得ないと思っていた一軍男子といい感じになる。先蹤なメタファ…

エスター前夜 エスター ファースト・キル (2022年製作の映画)

3.3 童顔な女優がいるが、きれいな人はある程度の童顔属性を持っているので判定を甘くすればたくさん入ってしまう。 それでも代表的な童顔をあげるとすると(いま思いついた限りで網羅性はないが)安達祐実とか八千草薫とかチャン・ナラとかになると思う。 …

年齢はただの数字 ナイアド ~その決意は海を越える~ (2023年製作の映画)

3.5 Diana Nyadは外洋持久泳者、作家、ジャーナリスト、モチベーションを高める生き方講師、だそうです。 映画はジョニーカーソンがホストだった1979年のThe Tonight Showのワンシーンではじまります。カーソン:「偉業達成おめでとう、でも褒められるのはも…

ザブラックオニキス テトリス (2023年製作の映画)

3.8 Tetris (film)のwikipediaに── 『2023年のインタビューでアレクセイ・パジトノフはこの映画は「実際に起こったことの実際の伝記や再現ではなかった」が、それは「感情的にも精神的にも十分に近く、非常に正しいものであった」と認めた。』 ──と書いてあ…

きれいなハーレイ 悪いことしましョ! (2000年製作の映画)

4.0 わたしはじぶんはどちらかといえばするどくてシリアスなタイプだと思っている。ただし賢いというわけではない。するどくてシリアスなままで生きようとすると生きにくいので表向きは丸くてふざけている鷹揚なキャラクターであろうとして、するどさやシリ…

ブラッシュアップした ヘル・レイザー (2022年製作の映画)

3.1 ヘルレイザー全体で11作目だそうだ。見たことがあるかどうかも含めて覚えていないが、頭部全体がマチ針に覆われている“ピンヘッド”なら知っている。 wikiにあった言説だが、本作にたいするRottenTomatoesの総意は──『数々の水準以下の続編を経て長年苦し…

13面のルービックキューブとは チャチャ・リアル・スムース (2022年製作の映画)

3.5 アンドリュー(Cooper Raiff)は大学を卒業したが目標が定まらずアルバイトをしながら実家住まいをしている。歳の離れた弟と同部屋に寝起きしつつ、母親の新しい良人につらくあたる。ユダヤ人の成人を祝うパーティで才能を発揮した彼はコミュニティから…

ダブリンの母子 フローラとマックス (2023年製作の映画)

4.1 シングストリートから7年ぶり、ジョンカーニーの音楽映画。2023年1月にサンダンスで上映され熱狂的なスタンディングオベーションを引き起こし、AppleTVに約30億円(2,000万ドル)で配給権を買われたそうだ。imdb7.1、RottenTomatoes94%と86%。 主演は(U…

ラスプーチン? ベネデッタ (2021年製作の映画)

3.3 ダニー・ケイの映画に虹を掴む男(1947)というのがある。後年ベン・スティラー主演でLIFE!/ライフ(2013)としてリメイクされたが、原題はどちらもThe Secret Life of Walter Mittyである。スティラー版をご覧になった方は多いと思うが主人公ウォルター…

恨みっこなし マディのおしごと 恋の手ほどき始めます (2023年製作の映画)

3.6 ロングアイランド島の先っぽにモントークというリゾート地がある。日本に重ねると青森辺りの緯度で暖かいときが盛期になっている。マディ(ローレンス)はモントーク生まれ&育ちだが男関係も金繰りも破綻し、車税も家賃も払えない身上に落ちぶれていた…