津次郎

映画の感想+ブログ

2024-01-01から1年間の記事一覧

登場人物のさばき方 虹の女神 Rainbow Song (2006年製作の映画)

4.3 VOD(Unext)に入荷していたので見返した。 忘れられない映画。 なぜよかったのかというと、①大量の登場人物をさばいている。②筋が豊富。③雰囲気でもっていこうとしない。──の三点だと思う。 ①②物語の主軸は市原隼人と上野樹里だが、蒼井優や相田翔子や…

抽象と写実 ソウルメイト (2023年製作の映画)

4.3 1988年生まれの二人の女性、アン・ミソ(キム・ダミ)とゴ・ハウン(チョン・ソニ)。仲良しだった幼年時代を経て、互いに屈曲しながら成長していく行程が描かれる。 二人の性格は描く絵に象徴されている。ハウンは写実的な絵を描く。ミソは抽象的な絵を…

倒れなかったアパートとサバイバル コンクリート・ユートピア (2021年製作の映画)

3.4 巨大地震のあと、一棟だけ倒壊せずに残ったアパートでおこる危機と道徳の戯画絵巻。非常時の人の醜さに焦点が置かれてエゴが強調された話になっている。 ふつう一線主役級になるとかっこわるい役をやらなくなるものだがビョンホンは泥臭い役でも引き受け…

現代版フランケンシュタイン 哀れなるものたち (2023年製作の映画)

3.9 成人の身体に胎児の脳。フランケンシュタインの現代版といった趣の話。 テリーギリアムのような魚眼でベラバクスター(エマストーン)の成長をつづっていく序盤、ベラが夢中になるのは、最初は食べ物、つぎは(身体は大人なので)性欲。身体は大人だけど…

タイムスリップする女性のロマンス グレイテスト・ヒッツ (2024年製作の映画)

2.0 最愛の彼氏を事故で亡くしたハリエット(ルーシーボイントン)は、彼氏の生前一緒に聴いた曲を聴くと、供に過ごした甘美な過去にタイムスリップしてしまうという「奇病」にかかる。という話で、ガーディアン紙が5点中の2をつけて「しばしば耐えられない…

医学博士の車旅 野いちご (1957年製作の映画)

5.0 映画は78歳の医学博士イサク(Victor Sjöström)の独白ではじまる。 『いわゆる「人づきあい」の主な中身は、そこに居ない誰かの噂をし悪口を言うことだ。私はそれが嫌で友を持たず、人とのつきあいを断った。歳をとった今ではいささか孤独な日々だ。・…

レジーナのスタイル変化 ミーン・ガールズ (2024) (2024年製作の映画)

3.3 2004年の映画にもとづいた初演2017年のブロードウェイミュージカルがあり、本作はリメイクというよりもそのミュージカルの映画化──とのこと。 2004年のを見返してないため差違は確然としないがレジーナが目立つ映画だった。フェミニンな装いだったレイチ…

静かな少女 コット、はじまりの夏 (2022年製作の映画)

4.0 親に褒められるのがなんとなく照れくさくて嫌だった──というのがある。「おまえはできる子なんだから」と言われても、だいたい「そう言ってくれているんだな」ということが解るし、そもそもじぶんはできる子ではなかった。だから心の中で「いや父さん(…

王室スキャンダル:BBC記者の追及 グレート・スクープ (2024年製作の映画)

3.2 エプスタインの顧客だったアンドルー王子を追い詰めていくBBC記者の話。アンドルー王子のインタビューはBBC史上最高視聴率を獲得し多数の賞を受賞したそうだ。 アンドルー王子はエプスタインの別荘で未成年を買い乱交パーティーにも参加した一顧客だった…

女囚系映画と洋画劇場 ロサンゼルス女子刑務所 (2014年製作の映画)

2.0 昔は(今もあるのかもしれないが)21時からはじまる洋画劇場があり映画館へ行って映画を見るのが稀な者にとって映画といえばそれらのことだった。そして映画評論家といえばそこに解説者として出てくる淀川長治や水野晴郎のことだった。たいてい誰もがそ…

若者向けの美容ルーティンとは ダムゼル/運命を拓きし者 (2024年製作の映画)

2.8 ネットにしばしばElizabeth PerkinsとMillie Bobby Brownの顔が並んでいる。パーキンスのはBig(1988)辺りの若い頃で並べられると確かに両者は双生児とみまがうほど似ている。ただ思い出すかぎりパーキンスはクールな役が多かった。対してミリーボビー…

問題抱える家族の人間ドラマ 波紋 (2023年製作の映画)

0.0 くそみそにしているのでこの映画がお好きな方は読まないでください。「現代社会の闇や不安、女性の苦悩を淡々とソリッドに描いた絶望エンターテイメント」だそうです。ウィキペディアにも『東日本大震災、老老介護、新興宗教、障害者差別といった現代社…

降霊実演と破滅 TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー (2022年製作の映画)

3.6 ヘイリーとジョスが主催するパーティは酒も薬もないかわりに過激な降霊実演をやってSNSで人気があった。冥府と現世を仲介するのは防腐処理をした屍体の手。それは生前悪魔崇拝に耽溺していた者の手だと言われ握手すると黄泉への扉が開きI let you inと言…

脱北者の苦悩 ロ・ギワン (2024年製作の映画)

3.0 ソン・ジュンギといえば私のオオカミ少年(2012)が思い出される端正な顔立ちの韓国人俳優だが、来歴によると、少年時代はショートトラックスピードスケート選手で全国大会への出場経験があり、名門の成均館大学校を最終学歴とし、イケメン俳優なのにし…

不敵な笑み マダム・ウェブ (2024年製作の映画)

2.0 imdb3.8、Rotten Tomatoes12%と57%。 本作は批評家から『恥ずかしい混乱』や『史上最悪のコミック映画』などと酷評されている。海外の批評家は嘲弄的でアイロニカルな物言いが上手だがRottenTomatoesはさながらそれのコンペティションのような活況でほ…

リンジーローハンの恋愛コメディ アイリッシュ・ウィッシュ (2024年製作の映画)

2.6 2022年のFalling for Christmasに続くリンジーローハン復帰二作目という位置づけで監督やスタッフに共有がある。ベタな恋愛コメディになっていて、批評家のコンセンサスも『リンジー・ローハンが主演しているため『アイリッシュ・ウィッシュ』がロマコメ…

おっさんと少女の友情を描く マイ・ファースト・ミスター (2001年製作の 映画)

3.7 この映画のWikipediaの「See also」にLost in Translationがあるのは年配男性と若い女性の友情を非性的に描いているからだろう。 たとえば日本のコンテンツではおっさんとJKがいたらそこにセクハラがおこるのは必至、というのも世間において年齢や性別は…

アメリカの祝日 サンクスギビング (2023年製作の映画)

3.4 感謝祭とはイギリスからアメリカに渡ってきたピルグリムと呼ばれる人たちが新しい土地での初めての収穫を神に感謝をしたことが起源です。その食べ物の栽培方法を教えてくれた先住民であるネイティブアメリカンを招き一緒に祝いました。──とネットの拾い…

思春期の少女と宗教問題 神さま聞いてる?これが私の生きる道?! (2023年製作の映画)

4.3 原作小説はジュディブルームという人が1970年に書き、以来人々に愛読され、少女が神に呼びかけるマーガレット独自の“儀式”がパロディとして使われるまでに大衆文化の中に溶け込んでいるそうです。 等身大のマーガレットが微笑ましくコミカルに描かれる一…

ピンとハネた アップグレード:どん底女子の幸せ探し (2024年製作の映画)

3.2 上京するたびJREポイントが貯まるのでアップグレードして新幹線のグリーン車に乗ることがあり、車内で知り合いに会ったことがある。 都心と新幹線でつながっている地方住まいの人はお解りいただけると思うが、新幹線ではあんがい見知った地元民に会いや…

内臓フェチ クライムズ・オブ・ザ・フューチャー (2022年製作の映画)

2.9 臓器登録局のところから状況を説明している台詞が続々出てくる。ここはこんな世界なんです、わたしはこういうもんなんです、というのが台詞になっているのは滑稽だった。(クローネンバーグの)頭の中にある饒舌さに、映像が追いついていないことと、登…

介護と学園 サンコースト (2024年製作の映画)

3.6 映画Suncoastは監督Laura Chinnのデビュー作で監督自身の実体験──10代のとき弟が脳腫瘍になりフロリダのサンコーストというホスピスで最期を迎えるまで6年間介護にあたったこと──にもとづいて書かれている。 折しもサンコーストは当時メディアの渦中にあ…

ストイックな決意と粘り強さ SISU/シス 不死身の男 (2022年製作の映画)

3.7 タイトルのsisuとはストイックな決意と粘り強さをあらわすフィンランドの概念──だそうだ。 1944年の9月から1945年の4月にかけてフィンランド、ドイツ間でラップランド戦争というのがあった。映画の舞台はそこだが前線から離れたところで初老の男が愛馬と…

悪魔との契約 プラダを着た悪魔 (2006年製作の映画)

3.3 旧作なのにネットフリックスの映画ランキングに入っていたので見た。 ジャーナリスト志望だったアンディ(ハサウェイ)がファッション雑誌“ランウェイ”のアシスタントとして雇われ編集長ミランダ(ストリープ)からさんざんな扱いをうけることと並行して…

この邦題なんとかして それでも私は生きていく (2022年製作の映画)

3.5 なぜ配給会社の命名センスにいちいち気分を害されなければならないのかという話です。 この映画の邦題は“それでも私は生きていく”です。 悲しみや苦難を乗り越えると次のがやってきてそれを乗り越えると次のがやってきて──そのような状況を“それでも私は…

カペナウム 存在のない子供たち (2018年製作の映画)

5.0 あらためてみると演出は冷静だった。裁判所で陳述がなされた後に、その成り行きがフラッシュバックのように描かれる。証言と過程が羅生門のようにセットで進行していく。 さいしょの両親の陳述の時には、既にすべてが済んだあとで、ゼインはじぶんを産ん…

禁じられた姉妹たち 裸足の季節 (2015年製作の映画)

4.2 徹底的に自由を束縛される5人姉妹。 最初のきっかけは少年の首にまたがった(肩車をしてもらい騎馬戦をした)ことを股間を首におしつける淫らな行為とみなされて幽閉される。以後、因襲か宗教か世間体かあるいは僻地の閉鎖性によるものか、なんなのかわ…

繁栄と没落 ブラックベリー (2023年製作の映画)

3.3 ブラックベリーは①遊び場の崩壊と②恫喝が物言う社会および③最高責任者が重なる企業の弊害を描いている。 工学系オタクだったマイクとダグがカナダに設立したソフトウェア開発会社RIM(Research In Motion Limited)に野心的な実業家のジムが介入してくる…

怪物は誰だ? 怪物 (2023年製作の映画)

5.0 幼少期に好ましいと感じる同性がいたとしても、それは性指向じゃない。 幼い時分には、女の子のような男の子がいるのは普通であって、そういう子と仲良しになったからといって、それはぜんぜんLGBTQとかの話じゃない。まして柊木くんのようなくりくりし…

白兵戦が熱い バッドランド・ハンターズ (2024年製作の映画)

3.2 地震をおこして能書きそこそこでさくっとディストピア設定をつくる。衣装はボロでいいし舞台は廃墟でいい。ヒロインとマ・ドンソクをもってきたらとっとと憎まれ役をだしてマッドサイエンティストを絡ませて全面戦争やって懲悪してめでたしで一丁あがり…