津次郎

映画の感想+ブログ

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

いわゆるトゥルー・ロマンス 初恋 (2020年製作の映画)

2.7三池崇史監督は、スタイルを貫いている──とは思わない。プロダクトの意向にあわせて、酷いときもあれば、いいときもある。多作で振幅がはげしい。山っ気の大きい商業映画の監督だと認識している。 海外先行公開の鳴り物入りで、アメリカでは、ほぼ称賛だ…

よくあるディストピアだけど佳作 トゥモロー 僕たちの国が侵略されたら (2010年製作の映画)

4.0パニック映画を見て、よく感じるのが、なぜ君たちの話なのか──というところである。宇宙人が攻めてくる。地震がおこる。津波がおこる。北朝鮮が攻めてくる。核戦争がおこる。隕石が落ちてくる。みんながゾンビになる。そのばあい、地球もしくは国ぜんたい…

一種のスタンドバイミー がんばっていきまっしょい (1998年製作の映画)

4.2みんなきゃしゃで、もやしのようだが、なかでもとりわけ細くて白いのがヒメだった。彼女が感情を掛け声にぶちまける。スパートをかけるとき、その掛け声が、コックスの決まり文句を無視した絶叫に変わる。規則的なキャッチ、ロウ、キャッチ、ロウだったの…

珍しい異分子 寝ても覚めても (2018年製作の映画)

4.5濱口竜介監督の映画をはじめて見た。びっくり。面白い。うまい。てっきりよくある荒井晴彦系のエレジーな日本映画なんだろうと思っていた。ぜんぜんちがう。昭和もピンクもない、日本映画の系譜にいない映画監督である。 ポンジュノが誉めたことが納得で…

ロングテイクが主役ではない 1917 命をかけた伝令 (2019年製作の映画)

5.0撮影のために戦争をつくってしまっていた。ジョージマッケイは四角くディーンチャールズチャップマンは丸かった。朴訥なマッケイにはノスタルジーを感じた。饒舌なチャップマンにはフラグを見た。勇敢だと思う。トムとウィルだけでなく、映った全員が、戦…

暗く倒錯的 越後つついし親不知 (1964年製作の映画)

3.0昔、営業車で聴くラジオ番組で、いちばん楽しかったのが小沢昭一の小沢昭一的こころだった。スクリプトとお話小沢昭一、お囃子山本直純。と毎回言う。老年の諧謔と煩悩と哀愁があった。毎回「~の心なのだ」で締めくくった。毎回、笑った。なつかしい。だ…

初監督にして賛否論争を起こさせる力量 ゴーン・ベイビー・ゴーン (2007年製作の映画)

3.9あざやかな演出によって、情を採るか、法を採るかへもっていく。 「考えさせられた」と言ったとき、考えた部分が、どこなのか、人それぞれだが、すくなくとも「考えさせられる」映画だと、多くのレビューが伝えている。 あたかも、融通のきかない人のよう…

いちばん出てくるのはダニエル・マクドナルドなんだけど シークレット・デイ あの日、少女たちは赤ん坊を殺した (2014年製作の映画)

3.0個人的には広瀬姉妹も上白石姉妹もファニング姉妹も姉がいい。姫っぽい役から脱却しつつあるダコタにたいして妹エルはまだ姫っぽいが、どちらかといえばエルのほうがキャスティング機会が多い気がする。ダコタはじぶんの置き所を模索している感のある役が…

まったく落ち着きのない男 バック・トゥ・スクール (1986年製作の映画)

3.5ロドニーデンジャーフィールドは本国では多大な影響を与えたコメディアンだった。絶えず肩をゆらし、右をむき左をむき、手振りをくわえ、ネクタイを触り、ギョロッと目を剥き──そのぜんぜん落ち着かない態度で、短いジョークを連発する。 youtubeにこんな…

どこでもいいやつサムロックウェル プールサイド・デイズ (2013年製作の映画)

3.8なんでいつもいつもSam Rockwellてのは、やたらいい役ばかりなんだ?という既視感の基になっているのが、これだと思う。優しさを、粗野/乱雑/ずぼらな態度で隠している感じが、スリービルボードでも、ジョジョラビットでも、同じなのである。それが気に入…

一般化した田舎者のしのぎ方“自虐” 翔んで埼玉 (2018年製作の映画)

1.9田舎者をばかにするのは有史以来あったことだけど、80年代に新しい待遇になった。よくわかってないかもしれないが、魔夜峰央や江口寿史は田舎者に自虐というしのぎ方をもたらしたんじゃなかろうか。 それまでは、1930年の榎本健一の歌にあるように、おれ…

スカーフェイスにも劣らぬF*ckカウント アンカット・ダイヤモンド (2019年製作の映画)

4.0スカーフェイスのFuckカウント動画が196回だったが、並ぶか、むしろ勝るかもしれない。正直、面白さの解りにくい映画だが、Imdbもtomatoesも高評価だったので、歯がゆかった。海外で賞揚されているとき、その根拠を解りたいと思う。絶賛なら尚更である。…

無欲な偶然の産物 ロボコン (2003年製作の映画)

5.0人物が無欲だった。2部だし、志願でもない。次第に夢中になるけど、野心もない。みんながどうしようと困惑し主体性をもった人を探していた。 話も無欲だった。勝ったとして、利得があるわけでもない。次のステージが約束されているのでもない。図師先生が…

方言カーストを登る 舞妓はレディ (2014年製作の映画)

4.2関西人がしばしば東京圏の俳優の関西弁について苦言を呈しているのを見かける。わたしの地元にも、いちおう方言がある。どこにだって方言はある。メジャーな方言でなければ、人様に真似されることはないし、ドラマにも使われない。 知ってのとおり、日本…

日本には辛辣だが北には優しい プロミス ~氷上の女神たち~ (2016年製作の映画)

3.3韓国映画に日本/日本人が出てくるばあい、かならず卑劣に描かれる。この映画では、対日本戦で日本人選手がスティックで引っかけて韓国人選手を転ばす。会場はアウェーの青森。解説者が大荒れ。ヤイ、ケセッキァ!真っ赤になって怒る解説者を墨舌チョジヌ…

親の苦労は汲むべきにしても子が暴れすぎる おおかみこどもの雨と雪 (2012年製作の映画)

3.5細田守の子供が駄々をこねる描写が厭わしい。ミライを見て、この映画を見て、それを思った。 自立心の芽生えを描く話も、着地点も見事だと思う。ただ、ごねる描写に、ほとほと辟易する。 意図せずして、観衆にとって、もっとも煩わしい敵──といえるモノが…

排他的で情感を入れない 父の秘密 (2012年製作の映画)

3.3妙に覚えている。叙情をしない。心象もしない。あっさりではなく、あっけらかん──である。が、描かれることは苛烈である。娘はいじめがエスカレートしてクラスメートに隷属している。適当になぶられいじられまわされるが、妙な逞しさで窮地を逃れる。父は…

へんなクセがない良作 見えない目撃者 (2019年製作の映画)

3.7演出が上手。日本映画では珍しいと思う。テレビでも蛇のひとや破門やミスシャーロックなど、おやと思わせるものを撮っている。映画は寡作だがリトルフォレストの監督でもある。手堅くて、妙なクセがなく、有り得なさが、気にならない。 美しい女性が損や…

うわ~歌うな歌うな この国の空 (2015年製作の映画)

1.5この監督の名前を、脚本家として、はるか昔から、よく見かけました。生活圏の建物はセットでした。生活備品の小道具は新調したて。防空ずきん、モンペも浴衣もパリッとしていました。手ぬぐいは一度も汗を拭いたことがなく、髪はきちんと櫛がはいってキラ…

中井貴一がかっこいい 嘘八百 (2017年製作の映画)

3.4さくっと撮っている。さくっと撮りすぎている。いずれも撮り直した気配がない。構図もざくっと切っている。ロケーションも凝っておらず、予算もかけていない。持ち味、であることは解るが、早撮りが躍動/リアリティ/生彩等々につながっていると確信できな…

園子温の“ゴーストランド”と比べてみよう! ゴーストランドの惨劇 (2018年製作の映画)

5.0並みの恐怖演出は押すだけだが、何度も引く。引いて束の間の静けさのあと、また押す。また引く。また押す。また引くと、引いた先はパラレル。 ふつうは、安全圏にいて、見ていたのは悪夢である。ここは逆。じつは囚われたままで、見ていたのは理想。 魔物…

続編の宿命をくつがえす エイリアン2 (1986年製作の映画)

4.2エイリアン2は二作目のジンクスを覆す傑作でしたが、そのコピーが「今度は戦争だ」でした。一般に、続編は、上回ることを期待されながら、上回ることが難しい挑戦です。しかし、エンターテインメントとして課せられる柳の下の泥鰌でもあります。 よって、…

デニングスといえばマックス To Write Love on Her Arms(原題) (2012年製作の映画)

2.8Rachel Bloom、Christina Hendricks、Alice Eve、Alexandra Daddario・・・などの俳優を見ている男性に瞳孔観測機を付けたら、胸部は真っ黒である。 アメリカではホントに大きい人はテレビへ傾く。BloomもHendricksも主軸はテレビで、2 Broke GirlsのKat …

実写化のジレンマを払拭 シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション (2018年製作の映画)

3.4漫画もアニメもとくに見ていません。ただ有名な漫画/アニメでしたので、絵や世界観ていどは知っています。サザエさんを、とくに見ない人が、サザエさんがどんな話かについて、だいたい想像が付くのと同じです。このばあい、漫画/アニメの愛好者に対しては…