津次郎

映画の感想+ブログ

ロングテイクが主役ではない 1917 命をかけた伝令 (2019年製作の映画)

5.0
撮影のために戦争をつくってしまっていた。
ジョージマッケイは四角くディーンチャールズチャップマンは丸かった。
朴訥なマッケイにはノスタルジーを感じた。饒舌なチャップマンにはフラグを見た。
勇敢だと思う。トムとウィルだけでなく、映った全員が、戦争を日常のようにしていた。

ラブリーボーンのPeter Jackson監督が2018年にThey Shall Not Grow Oldというドキュメンタリーを撮った。第一次世界大戦の兵士たちが写る写真や動画に色づけをしている。兵士たちはみんな笑っている。悲壮がない。「かれらは老いない」のに、まるで命に無頓着のようだった。

彼は昔の人間であり、背負った使命は特殊で希有だが、
銃剣を装着して塹壕を出る、
あふれる血を止めようとする、
嵌まった車輌を押し上げる、
薬莢をリジェクトして深呼吸する、
闇夜の影に怯えて走る、
膨張した水死体から這い上がる、
突撃の合間をひとり駆け抜ける、
それらを見ていると、自分がただ生きてるような気持ちになる。
技術を尽くして表現したかったのは責任ではなかろうか。

自分はなにかをまっとうできるんだろうか。なにか得体のしれない罪悪感を感じながら、厖大な商品がならぶモールを通って帰った。