津次郎

映画の感想+ブログ

2020-01-01から1年間の記事一覧

カルト親との向き合いかた 星の子 (2020年製作の映画)

3.8 さいしょから困惑するのですが、時間がぶつ切りに編集されています。この内容の話としては、信じられないほど、時系を錯綜させています。なんで、そんなに入れ替えるの?ってほどの、メタ・エディットでした。(メタ・エディットなどということばはあり…

茶道と日常 日日是好日 (2018年製作の映画)

3.5この映画を見ると、厳格な作法の指導者たる人物は、意外におおらかな性格を持っているものだ──という仮説を容易に信じることができる。 それは、むろん、お茶のことだけではない。 たとえば、わたしたちが、かつて出会ったことのある、柔/剣/弓道の師範だ…

LGBTミュージカル ザ・プロム (2020年製作の映画)

2.5ゲイ映画の、グレタトゥーンベリ的な正義感がきらいです。LGBTQコンテンツが必ず持ってしまう慈善な空気がにがてです。 ゲイならば、ピュアな愛をやる──わけじゃない。ゲイのカップルだって、浮気も裏切りもあるでしょうに。 LGBTQのメディア露出/コンテ…

ミッドナイト・スカイ(2020年製作の映画)

2.41北極圏基地と2宇宙船内と3男の回想が、交互に描写される。 1基地内は、髭のクルーニーと、少女がおもしろいコントラストだった。2船内は、しょうじき何をしているのか、したいのかわからなかった。3回想は、クルーニーの若いころ──と思われるのだが、別…

俳優沢田研二の最高傑作 幸福のスイッチ (2006年製作の映画)

5.0俳優としての沢田研二を、しっかり記憶しているのは、ときめきに死すや太陽を盗んだ男よりもこの「幸福のスイッチ」である。 この映画がいわゆる「日本映画」を凌駕しているのはアートじゃないこと、承認欲求(監督の我)がないこと、お涙頂戴にしていな…

微笑ましい がんばれ!チョルス (2019年製作の映画)

3.8チャスンウォンが印象に残っているのは拍手する時に去れ(2005)という映画。 拍手する時に去れは韓国映画の常連俳優が多数出演していたが、主役はそこで初めて見たチャスンウオンだった。濃い風貌が男っぽく、好印象だった。限られた空間内で複雑なプロ…

皮相の哀しさ 宇宙でいちばんあかるい屋根 (2020年製作の映画)

2.8新聞記者という映画で、面白いな──と思ったのは映画ではなくwikiにあった以下の一文だった。 『監督の藤井道人は、企画を持ちかけられた当時、新聞も読むタイプの人間ではなく、政治にも無関心だったために自信がなく、オファーを2回断っている。』(ウィ…

痛ましくて辛い ソウォン 願い (2013年製作の映画)

4.0先般、この映画のもとになった事件の犯人が12年の刑期を終えて出所すると報道され、韓国社会にふたたび脅威をもたらしていた。 個人的な感慨だが、ペドフィリアのような者をなぜ生かしておくんだろう──と、よく思う。 世の中には生きていなくていいサイコ…

マジカルな天然 知らなすぎた男 (1998年製作の映画)

5.0がんらい、高得点をつけるほどの映画ではない──のかもしれないが、個人的な追加点がある。コメディだが、素のままで危機を乗り越えていく主人公は、わたしにとってほとんど人生の先生だった。 ビルマーレイはよっぱらっているわけではなかったし、ラリっ…

次元の酔い スパイダーマン:スパイダーバース (2018年製作の映画)

4.5 すげえ情報量。あふれる色彩。老眼みたいなブレ、絵にディレイがある。いうなればおんがくのような絵。きっとすごい革新的技術をもちいている──と思わせる虹彩のきらめき。しばらくあんぐり口あけて見ていた。 登場人物たちはディメンション(次元)に囚…

家族の絆 インクレディブル・ファミリー (2018年製作の映画)

3.8そぼくな感想なんだけど、アメリカのアニメだと、描き絵の質感でなく、CGの質感でアニメが動く。 それが、こっちでは見ないので、新鮮なかんじがするのに加えて、デフォルメがすごい。成人した男女たる、Mr. IncredibleのからだつきとElastigirlのからだ…

ライク・サンデー、ライク・レイン(原題)(2014年製作の映画)

3.7Career Opportunities「恋の時給は4ドル44セント」(1991)にFrank Whaleyという俳優が出演していた。かれにはジムドッジ(そこでの役名)のイメージしかない。 ほかの映画に出ているのを、ほとんど見たことがないせい──でもあるが、あの映画の、お調子も…

リズム・セクション(2019年製作の映画)

2.8幸福なときのフラッシュバックが再三あるので、最愛の人を殺され、復讐心しかなくなってしまった主人公なのだろう──という想像はつく。 ただ具体的な事情は、ひじょうにわかりにくい。同監督の前作I Think We're Alone Now(2018)はアポカリプスのあとだ…

シエラ・バージェスはルーザー(2018年製作の映画)

2.5昔の記憶だが、じぶんが「果敢な挑戦」をしていたことに、今も、恥ずかしくなることがある。 人生をすこしやってみると、じぶんが持っている顔や性惰や家柄などが、求めることのできる限界を知ることができる。 昔は、それを知らずに、気に入った子にアタ…

おまえはすでにしんでいる エターナル (2016年製作の映画)

3.5imdbを見ると監督はショートを撮っているだけのひとでこれがデビュー作といえる。そういや、はちどりもわたしたちも虐待の証明ミスペクも、パクシネが出ているザコールというネットフリックスでみたやつも、デビュー作だった。韓国映画のばあい、デビュー…

伝説のコメディアン マン・オン・ザ・ムーン (1999年製作の映画)

3.7今、細かすぎて伝わらないものまね、という番組があるが、アンディカウフマンというひとは、40年前にそれをやっていた人だったと思う。 ものまねの対象人物は、観客の知らない、どこかのだれか、だが、ひどい訛りの非英語圏の人物がよくつかわれた。ピー…

インプリント ぼっけえ、きょうてえ(2005年製作の映画)

1.0スピークアウトというアメリカのパーティゲームがあるんだが、それにはマウスピースがついてくる。歯科的に言うと、口腔内頬骨リトラクターというものだそうだが、強制開口し、歯を丸見えにするどうぐである。 ゲーム内容はよく知らないが、口を閉じるこ…

溢れでるカタルシス アベンジャーズ/エンドゲーム (2019年製作の映画)

5.0サノスはほんとにわるいやつだったのでしょうか?これを見てから、しばしば、それを考えます。 65歳以上人口が最高28.4% 7人に1人が75歳以上(日本経済新聞2019/09/15の見出しより) この地球でもっとも高齢者比率の高い国はどこか知ってますか?→日本で…

残酷描写とリアリティ ブルータル・ジャスティス (2018年製作の映画)

4.0この監督のデビュー作、Bone Tomahawk(2015)は掠われた人質奪還の西部劇だったのだが、穴居人という未開の食人種族が出てくる。これが度肝をぬくゲテモノだった。 『奴らは獣の腐った血統だ、実の母親を強姦し食っちまう』 とちゅう、見たこともない苛…

家族の愛と笑い おじさんに気をつけろ! (1989年製作の映画)

5.0Jean Louisa Kellyという女優をUncle Buckでしか見たことがない。が、そこで見せたバック叔父の姪Tiaがとても印象的で、あとはいいのではないかと思えてしまう。──のである。 かえりみれば、ジョンヒューズの映画には「あとはいいのではないかと思える」…

成長する少年と家族の絆 ワイルドライフ (2018年製作の映画)

4.0リトルミスサンシャインのポールダノをおぼえている。プリズナーズもオクジャもスイスアーミーもけっこう鮮明におぼえている。時間が短くても印象的な俳優だと思う。 アメリカだと、印象的な俳優が、監督もこなしてしまったりして、圧倒される。対抗しな…

名を迷にするかんじのコンビ バッド・スパイ (2018年製作の映画)

3.0アメリカのTVパーソナリティーにエレンデジェネレスというひとがいる。おそらくあちらで、もっともゆうめいなTV人のひとりだと思う。 コメディアン、女優、同性愛者で、エレンの部屋というゲストとの対話番組をもっている。コナンやジミーファロンの女性…

晩春(1949年製作の映画)

4.0小津安二郎に、裕福な人たちが出てくる映画──という印象をけっこう強くもっている。長屋の映画もあったが、あつかうひとたちは、裕福が多いのではないかと思う。 とはいえいちばんゆうめいな東京物語は、裕福とまでは言えない。長男は医者とはいえ町医者…

無ケーカクの命中男/ノックトアップ(2007年製作の映画)

3.5キャサリンハイグルは見ばえも肉感もあり00年代後半から10年代前半はすごく人気者だったが、なんとなく見なくなった。 ロマンティックコメディが本領だが、はばひろい役ができるタイプではなかった。顔立ちやフェミニンな雰囲気がシリアスドラマに適合し…

変化する思い出 スタンド・バイ・ミー (1986年製作の映画)

5.0なんびゃくも映画レビューを書いていると、たとえば昔かいたやつを読み返したときに、こんなこと書いたっけとか、ぜんぜん映画読み違えているぞとか、いまはそんな風に感じないなあとか、いいかげんなことかいてやがるなあとか──をかんじることがある。 …

今際の国のアリス(2020年製作のドラマ)

商業作家をめざしている人に朗報なんだが、アガサクリスティのそして誰もいなくなったを現代に翻案すると、夢の印税生活が送れるぞ。 わたしの、とほうもない、かんちがいなだけ、なのかもしれないが、 1無作為の男女が、謎の主催者に、どこか一カ所に、集め…

ザ・コール(2020年製作の映画)

3.8バーニングにチョンジョンソという女優が出ていた。おっかない、目をひく女優だった。そのイチャンドンの映画が、役者としてはじめてのしごとだったそうだ。逸材だった。 この映画のトレーラーを見たとき、そこにパクシネとチョンジョンゾがいた。 お、パ…

ジャッジの思わぬ判断 モリーズ・ゲーム (2017年製作の映画)

3.6シカゴ7裁判を見て感心したが、監督がアーロンソーキンと知って、なるほどと思った。このモリーズゲームがいい映画だったからだ。 すでに風格があるが、長く脚本家をやってきたひとで2017年のこの映画が初監督作だった。 ジェシカチャステインの演技も称…

アナベル 死霊博物館 (2019年製作の映画)

3.0ジャンプスケアにはタイミングがある。ホラーを何本も見れば、だれでもそのタイミングを、だいたい予測できるものだ。 たとえば主人公が鏡に向かって歯を磨いている。とする。 口をゆすいで吐き出すとき、前屈みに伏せるが、そのときは鏡には、なにも映ら…

リリーのすべて(2015年製作の映画)

3.0いまの社会では、しばしばLGBTがとりざたされます。LGBTとは、男の気持ちの女、女の気持ちの男、男がすきな男、女がすきな女などなどの人たちのことです。だと思います。 LGBTがとりざたされていると、わたしはよく思います。男に生まれたけれど女です。…