津次郎

映画の感想+ブログ

LGBTミュージカル ザ・プロム (2020年製作の映画)

ザ・プロム

2.5
ゲイ映画の、グレタトゥーンベリ的な正義感がきらいです。
LGBTQコンテンツが必ず持ってしまう慈善な空気がにがてです。

ゲイならば、ピュアな愛をやる──わけじゃない。
ゲイのカップルだって、浮気も裏切りもあるでしょうに。

LGBTQのメディア露出/コンテンツ製作にともなって、その当時者が、純粋であるとか、被害者であるとか、深い思慮をもっているとか──の描写がなされるけれど、そんな寵児的あつかいは、かえって、迷惑なんじゃなかろうか。
異性愛者も同性愛者もただのひとなわけだし・・・。

むろん、そう思ってしまうのは、たんに実情を知らないから──でもあるが。

この映画が訴えていることは、正論だけど、なんとなく優等生感がある。
歪んでいれば/ひねくれていれば、いい、わけではないが、正しいことを主張しています感が鼻につく作り──だと、感じました。個人的には。

たとえば日本には清貧ということばがある。それがしばしば意図的に曲解されて「貧しいならば正直者」という風な空気で使われることがある。

同等のことがLGBTQにもある。んじゃなかろうか。「LGBTQならば正直者」なんて理屈は成り立たないのにLGBTQ系コンテンツに、その空気を感じることがある──わけです。たとえば「彼らが本気で編むときは、」みたいな。

その「鼻につく感」に、プラス、ミュージカルに対して感じてしまう「こっ恥ずかしさ」が加わる。

日常にエンターテインメント性が一ミリもない、一般庶民は、いきなり歌いだされると、ゾゾっと鳥肌のようなものが立つ──わけです。これはわたしだけでなく、多く共有される感覚かと思います。

また、コーデンはアイコンだと思うけれど、どちらかと言えば、自分と相手のバランスをとる人で、パーソナリティとしてみればナイスガイだけど毒はない。

それも含めて、なんていうか、はじけているようでいて、その実、コンプライアンス内でやってる感じのLGBTQミュージカルで、その限界を感じた。

であるなら同位相なグレイテストショーマンもそうなるはずなんだが、その違いは説明ができない。いい加減なもんだが、そう感じてしまった。──としか言いようがない。

いまさらな擁護だが、映画は健全な主題を持っているし、スターとプロムを絡ませる話はなかなか変わっている。

で、思ったのだが、これが、コメディではなく、ミュージカルでもなく、シリアスなドラマ仕立てになっていて、落ちぶれつつある女優が、売名のために、たまさか見知ったLGBTQ問題の学園に介入して、そこでの擦った揉んだを経て、友情を得て、LGBTQへの理解をも深める──映画ならば、もっといける気がした。のだが、まあ、勝手な主観に過ぎませんが。