津次郎

映画の感想+ブログ

2022-01-01から1年間の記事一覧

解消されないけれど心地よい難解さ ホワイト・ノイズ (2022年製作の映画)

3.3不条理ドラマの「もう終わりにしよう。」(I'm Thinking of Ending Things、2020)になんとなく似ている。 チャーリーカウフマン風に飛躍する話を、ジャームッシュな諧謔ムードで描きつつ、バームバックが持ち味とする夫婦愛へおとす。 出来事は非現実的…

はやすぎたのかも 大怪獣のあとしまつ (2022年製作の映画)

2.7時効警察がすきな人であれば三木聡はスベるくらいがちょうどいいのは解っているはずだ。というか、微妙or盛大にスベっている有様そのものが三木聡なのであって、根本的に笑いの質がM-1のようなものとは違うことは知っているはず。 ──にもかかわらず大怪獣…

美しいはまともか 神が描くは曲線で (2022年製作の映画)

3.9ゆれたりふるえたりした線で~ていねていねていねに描くと~きめていたよ~ ── タイトルの“曲線”とは正常ではない者をさしており、主人公アリスはアリスインワンダーランドからもってきた──とのこと。(By外国語Wiki情報) すなわち、おかしな者たちの禍…

めくるめく ナイブズ・アウト:グラス・オニオン (2022年製作の映画)

4.7(ややネタバレあり) 招待状、孤島、億万長者、謎かけ、すねに疵持つ者たち。アガサクリスティみたいなフーダニットになっていて、じっさい原案を書いたライアンジョンソン監督もエルキュールポアロと地中海殺人事件などの「南国逃避殺人ミステリー映画…

懐古と風刺 ウエスト・エンド殺人事件 (2022年製作の映画)

3.1 本編のセリフにも「フーダニットはどれもみな同じだ」とか「よくあるフーダニットだろ?」というのがあるが、推理小説で典型的展開をするのをフーダニットと言うそうだ。 『読者や視聴者には、「犯人の正体を推理するための手がかりが与えられ、物語のク…

ノワールで異色 THE BATMAN-ザ・バットマンー (2022年製作の映画)

3.5暗くて重い。街には悪がはびこり官吏たちは背任し人々は虐げられている。主人公からして陰気。バットマン/ブルースウェインはニコリともしなければ冗談も皮肉も言わない。演じるパティンソンは蒼白で、言葉少なで、表情には諦観と哀しみが貼り付き、まる…

穏やかで強い ザ・コンサルタント (2016年製作の映画)

5.0ベンアフレックは監督としても成功したが役者として味があるひとだ。と思う。 美男でタフガイだがフェロモンは希薄。デカいのに威圧感はなく、優しそうで、すこし間抜けな印象もある。案外いそうで、全然いない。 グッドウィルハンティング(1997)の鷹揚…

彼女の声が別格 ラブ、デス&ロボット シーズン2、3

シーズン2 自動カスタマーサービス:人物のデフォルメが醜すぎる。家事ロボットが暴走する──てのも陳套な話。3点 氷:鯨が息継ぎに出てくる凍った海を駆け抜ける。いい絵だけどなんてことない。4点 ポップ隊:逡巡するならなんで警察やってんの。えせなヒュ…

夜に息づく無名の人々 続・深夜食堂 (2016年製作の映画)

3.6深夜食堂のオープニングってなんであんなに胸を締め付けられるんだろうなあ。 深夜食堂のオープニングと言えば車からの景色。ギミックなく移動撮影される宵の歌舞伎町交差点付近。そして鈴木常吉が歌う「思ひで」。 きらびやかで、人がうじゃうじゃいて、…

そわそわの師走 ニューイヤーズ・イブ (2011年製作の映画)

2.912月も10日を過ぎるとだんだんそわそわしてきます。といって、何があるわけでもないのに。やがて“他人のイベント”クリスマスがあって大晦日があって元旦には年々乏しくなる年賀状が投函される──毎年同じ年末と元旦です。 それなのに12月も10日をすぎると…

新版 チャタレイ夫人の恋人 (2022年製作の映画)

3.5昭和の洋画劇場におけるチャタレイ夫人はわたしたちがまみえることができるエロの限界値だったが、とはいえ文学なので男の子には物足りなかった。むしろプライベートレッスンとかリンダブレアのチェーンヒートとかEdwige Fenechの出てくるイタリア映画の…

マッチングアプリ サムバディ (2022年製作のドラマ)

4.0状況に対して、さまざまな心象があると思う。 悲しいとき悲しいだけじゃないし、楽しいとき楽しいとはかぎらない。 むかしきいたことがある彦一とんち話というのがある。まえにも書いたことがあるが── 怖くて可笑しくて悲しい話をせがまれた彦一は「ある…

ヘアスタイリストのためいき 殺人美容師 頭の皮を剥ぎ取ります (2020年製作の映画)

3.4殺人美容師頭の皮を剥ぎ取りますなんてタイトルされてしまっているがつくった人の真摯な気持ちがつたわってくる映画だった。 原題はThe Stylistで同名のショートフィルムを長編化している。監督Jill Gevargizianのバイオにはこう書いてあった。 『Jill “S…

陽光のマルタ島 コンフィデンスマンJP 英雄編 (2022年製作の映画)

2.9英語がキツかった。 (個人的な抱懐だが)ふだん英語を使っていない人が「かっこよく喋ろうとしている英語」はダサい。 だが日本の俳優は映画/ドラマでかならず「かっこよく喋ろうとしている英語」を使う。 この映画の諸兄やたとえばシンゴジラで石原さと…

おかえりなさい フォーリング・フォー・クリスマス (2022年製作の映画)

3.0RottenTomatoes58%と60%。クリスマスのくらっぷなのに誰にもこきおろされてなかった。みんなローハンが笑顔でもどってきたことを喜んでクオリティを寛恕していた。 たしかにそうなるよな。と思った。 あれだけきらきらする純情を見せられたら、そのあとお…

Boo, Bitch ゴーストギャル (2022年製作のドラマ)

2.7それなりに楽しいけれど。 ちなみにじぶん的にNetflixでいちばん楽しかったシリーズはめちゃくちゃ恋するハンターズ。ブックスマートしかりなかよしな女の子二人組に適切な脚本をあたえるとマジカルな化学反応がおこる。ことがある。 むろんそういうVIVE…

最強のぼっちキャラ ウェンズデー (2022年製作のドラマ)

5.0シニカルで超然として誰にもおもねらないウェンズデーは、げんじつにいじめやネグレクトに遭っている少年少女に勇気をあたえるにちがいない。 そんなしたたかな“ぼっち”キャラであるウェンズデーがファミリーを飛び出してスピンオフされたのはとうぜんで…

漫画を貶めるレベル バイオレンスアクション (2022年製作の映画)

1.0プロモーション用の画像に「主演・橋本環奈♡♡♡」とデカデカあった。 ようするにこれはおまえら橋本環奈が出てるんだぞというマーケティングで、このマーケティングに対しておまえらであるわれわれ観衆は「ええっあのひゃくねんにひとりと言われた橋本環奈…

ドバイから日本を変える黒い人

◆あんがい旧弊な有権者たち ふしぎな感じがするのだが、ガーシー議員の報道に対してヤフコメにはアンチコメントしかあがってこない。youtubeの切り取りでも、tiktokのガーシーねたでもアンチはけっこう多い。 わたしはガーシー議員に対して期待感しかない。 …

悲しさを隠した巨漢 大災難P.T.A. (1987年製作の映画)

5.0コメディアンから出発した人は演技達者なので成功者が多い。トムハンクス/ジムキャリー/ビルマーレイ/ロビンウィリアムズ/アダムサンドラー/クリスティンウィグ/メリッサマッカーシー・・・。 ただ、お笑いキャラのまんまだと顕誉にあずかりにくい──とい…

Fasting girl 聖なる証 (2022年製作の映画)

3.916世紀から20世紀にかけ英国で定期的にFasting girl(=断食少女)というものが現われたそうだ。 何ヶ月も食べていないと主張する少女およびその家族のことで、目的は教区からの寄付や恩恵にあずかり家計を潤すことにあった。 こんにちでも子を脅迫して学…

におい立つくささ 川っぺりムコリッタ (2021年製作の映画)

1.0けなしていますのでスキップしてください。 ── 出演者が並んで立っているプロモーションスナップ/イメージってやたら使われてねえか? 意識高い系のアート映画によくあって、たとえば「愛の小さな歴史」と「お盆の弟」ではどちらも光石研が直立し面と向か…

生みの親より育ての親 そして、バトンは渡された (2021年製作の映画)

3.3趣向を凝らした話でお涙頂戴ではなかったが、展開上涙だらけになるので泣けたという好意的レビューも、お涙頂戴だという批判的レビューも少なくなかった。 原作は未読だが、原作者の瀬尾まいこのウィキペディアに──『家族の物語が多いが、愛情を注ぐのに…

奇想天外 バーバリアン (2022年製作の映画)

4.0じっさいAirbnbでBrightmoorを検索してみたらとても安かった。 Brightmoor, Detroitのウィキには記者の言葉をかりて──『ブライトムーアは、デトロイトが一般に想像されるような、都市のゴミ捨て場、犯罪現場、野生の草原が混ざったような驚くべき光景──そ…

フレッシュなふたり リコリス・ピザ (2021年製作の映画)

3.6haimというガールズトリオをyoutube動画で知っていた。エロス資産を活用したあざといPV群をいくつか見たことがある。見た目も楽曲もキャッチーだがハーモニーを削いだWilson Phillipsという感じ。無駄にエロい姉妹──という印象だった。 その末っ子Alana H…

恋するスマホ ジェクシー! スマホを変えただけなのに (2019年製作の映画)

3.4わたしのような田舎の百姓が東京へ行っていちばんおどろくのは電車に乗ると全員がスマホを眺めていることだ。“全員”に誇張はまったくない。よってわたしも「満員電車に疲弊した都会人」──の顔をつくってスマホを眺める。うまく化けられているか解らないが…

初仕事 エノーラ・ホームズの事件簿2 (2022年製作の映画)

3.5実在した労働運動指導者をからめて、エノーラの八面六臂の活躍を描く。 2時間以上あったがエノーラがこっちへ話しかけたり、シームレスに回想へ飛んだり、パタパタと状況を切り替えたり──で飽きさせなかった。 貧しい女工たちのために権力と闘う構図が共…

泣かす気まんまん チョコレートドーナツ (2012年製作の映画)

3.0imdb7.4。Rotten Tomatoes79%と76%。日本の主要映画レビューサイト(Yahoo映画、映画com、Filmarks)はすべて4超えだった。 海外の評価もいいが、評点からみても日本ですごく受けたし、いかにも日本人受けそうな映画だった。(大受けの結果、2020年日本に…

非倫理 ねえ!キスしてよ (1964年製作の映画)

3.0女たらしだけど有名な歌手に自作曲を売り込むために代理妻をたてて夜伽をさせようという話。 ビリーワイルダーなのにびっくりするほど退屈ですw。(個人的には。) アパートの鍵貸しますなんか何度も見て何度も同じところで楽しくなってまた見たくなるの…

妙味 ラン・スイートハート・ラン (2019年製作の映画)

3.3専門家が専門外のことをするとき妙味があらわれます。たとえば和食職人がフレンチをつくるとおもむきのある滋味が加わったり──とか、クラシック奏者がポップを演奏すると妙に律儀だったり──とか・・・、──ニュアンスが伝わるかわかりませんが、とある分野…