津次郎

映画の感想+ブログ

リズム・セクション(2019年製作の映画)

2.8
幸福なときのフラッシュバックが再三あるので、最愛の人を殺され、復讐心しかなくなってしまった主人公なのだろう──という想像はつく。

ただ具体的な事情は、ひじょうにわかりにくい。
同監督の前作I Think We're Alone Now(2018)はアポカリプスのあとだったが、これも事後の顛末である。
述懐があるでもなく、経緯は推して知るほかない。

復讐を達成するためジュードロウが演じる退役軍人に師事するのだが、その訓練が暗殺を想定しにくい。
肉体改造をはじめたか、あるいは引きこもりを脱するトレーニングのようにも見える。
ジュードロウが教官的立場ゆえ、キャプテンマーベルの既視感もある。

いろいろと説明不足な世界であり、ダークな雰囲気だけで持っていこう──という気配がある。世評も、酷評が勝っていた。

ただし。
ブレイクライブリーが、死ぬほどかっこいい。
さいしょブロンドのボブで、そのあと、もっと短くして黒髪でカーリーぽくなる。
そのボサボサあたまに加え、汚れ役なのであちこちで汚れや傷をつくり、服装はさえない普段着。
──にもかかわらず、隠しようもなく顕れてしまう、女優オーラ。

パーカーのフードを被って、ちょっとシビアな顔つきで、カメラ方向へ歩くだけのシークエンスがキマりすぎてしまうがゆえに、パーカーとかのDIESELかなんかのブランドコマーシャルにしか見えない。というロールモデルな見ばえ。

がんらいReed Moranoは、ながくCinematographer=撮影監督をやってきた人だが、その、なんていうか「演出いまいちだけど、絵はキマりすぎる」の感じが、とても明瞭に顕れてしまっている──のである。

そもそもリズムセクションというタイトルと、すっきりショートにしたブレイクライブリーが並んでみたら、言ってみれば、なんらかのブランドorモード系のコマーシャルにしか見えなかったわけであって、思うに、この人が託されるスポンサー価値たるや天井知らずでであろうと思われる。

しばしばgenetics=遺伝子の勝者にたいする羨望をかんじるときがある。きれいなひと、あたまのいいひと、おもしろいひと、にんきもの。
公人のばあいそういう発言すると優生思想と非難されるわけだが、禍のせいだろうか、なんか人さまのことを羨ましくかんじてしまうことが多くなった。