津次郎

映画の感想+ブログ

2020-01-01から1年間の記事一覧

なごみモードのジャームッシュ デッド・ドント・ダイ (2019年製作の映画)

3.0ジャームッシュは、オフビートをあつかってきた作家で、ダウンしているテンション──はっちゃけたり盛り上がってしまわない抑揚のままで、コメディおよびペーソスを体現してきた映画監督──と認識している。 オフビートのコメディとは、わかりやすく言えば…

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年製作の映画)

5.0な、なんなんだ。このエネルギーは。冒頭から、なぐられたみたいな楽しさ。 監督がOlivia Wildeとなっている。Olivia Wildeって誰だっけ。わたしには「リアムニーソンの映画で素っぱだかになったひと」くらいな、男性的な記憶しかない。 ひとことで言えば…

ザ・ライダー(2017年製作の映画)

4.0MarvelやDCComicsはそれぞれ主力商品だが、新参でも光るものがあると、新作をまかせてしまう。と思う。かなり大胆に大作をまかせる──ところに、クリエイティビティに賭ける意匠が感じられる。女性監督の起用も目立つ。 ほとんどインディーだったAnna Bode…

楽しいホリデーコメディ ラスト・クリスマス (2019年製作の映画)

5.0まもなく12月になる。またジングルベルかジョージマイケルか山下達郎をまいにち聴くにちがいない。 『ハリウッド・ブールヴァードの商店街はすでに高い値につけかえたクリスマスのがらくたをならべていたし、毎日の新聞はクリスマスの買物を早くすませな…

いとこ同志(1959年製作の映画)

5.0いとこ同志についての個人的な解釈です。 ふつう、ものがたりは勧善懲悪をもっている、と思う。露骨にそうでなくても、悪いことをしたひとは窮地へおちいり、良いことをしたひとは報われる、という帰着点があるはずである。 いとこ同志が新しかった理由は…

不協和音と鬼才感 ポップスター (2018年製作の映画)

2.9ブラディコーベットは長く俳優だったが、2015年にシークレットオブモンスターという映画をつくった。変わった映画で、賛否ではあったが、批評家筋からウケた。うまく言えないが、神経を逆なでする不協和音が、独特だった。ブラディコーベットは鬼才だった…

不幸・クズ・底辺へ走る日本映画 MOTHER マザー (2020年製作の映画)

1.0日本映画で、不幸やクズが描かれるのは、話に事件を設置することのほかに、作った人が鬼才の称号をもらえるから──というのがある。 ヒロイックなヒーローを描いても鬼才の称号はもらえないが、不幸やクズをぎらぎらした筆致でえがくと、鬼才としてもては…

武人と家庭人 コンフィデンシャル/共助 (2017年製作の映画)

3.5ユヘジンといえば、顎前突、厚い唇、はれぼったい薄い目、四角い顔面、低身長、五頭身。民族の標本のような外見で、まず忘れない。なまえを知らなくても、誰でも見たことがある韓国俳優だと思う。ちなみに韓国にはそんなおじさんバイプレーヤーが何十人と…

ザ・サークル(2017年製作の映画)

2.3ネットワークの先鋭にたいする警笛になり得ているような感じだが、話は強引。社会派の映画ではなく、SF映画だと思う。演出も不安定で、スターに釣られた後感はあった。 ところで、この映画でメイ(エマワトソン)が面接を受けるシーンがある。面接者の質…

人間の時間(2018年製作の映画)

2.0少年が、小動物に紐をゆわえつけて、動きに難儀しているのを見て、嘲笑している。残酷だが、幼さでもある。だが、かれはその枷を背負って生きる…… 春夏秋冬~は忘れられない映画だ。うまく言えないが、人の業(ごう)、輪廻が象徴的に描かれていた。 魚と…

二大スター共演 悪の偶像 (2017年製作の映画)

3.5韓国映画/ドラマを支えているのはスピードだと思う。 オンデマンドで、面白そうなドラマをみつける。1話レンタルが200円だとする。まあ、いいか、と思って見始める。2話ばかり見たところで、下へブラウジングしてみる。 なんと、ドラマは150話まである。…

ANNA/アナ(2019年製作の映画)

3.3主人公をつとめる女優が、薄い気がする。モデルとしては、なんの文句もない、しなやかな銀髪美女だが、ひっかかるところがない。端正だけれど目を離すとすぐに顔を忘れる。 Sasha Lussのせいではないけれど、そのミスキャスト感をひきずられた。雑感に過…

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)

4.0変わった人たちをあつめてショーをやった──とは、現代のポリティカルコレクトネスをふまえた言い方であり、これをバーナムの時代に即して、ダイレクトに言えば、畸形をあつめて見世物をやった、のであって、トッドブラウニングのフリークス(1932)とグレ…

ドニーイェンの圧巻アクション ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー (2016年製作の映画)

5.0SWには、くわしくないが、かえりみてローグワンはたしかに傑作だった。と思う。外伝だったこともあるのだろうが、話がとても簡潔だった。 デススターの設計図を奪取する──ただそれだけのために、よろこんで命を投げ出すレジスタンスたちだった。目的を果…

読まれなかった小説(2018年製作の映画)

4.5ヌリビルゲジェイラン監督の作品はレビューがしづらい。なんていうか、人生の深淵を見つめる感覚が、半端なさ過ぎる。 その目線/洞察力にくらべたら、わたしたちの世界は、なんと甘ったるいものであろうか──と思ってしまい、萎縮してしまう。 ロシアのア…

チャンイーモウの映画にマットデイモン? グレートウォール (2016年製作の映画)

4.0当時、チャンイーモウの新作で主人公がマットデイモンと知った時点で「?」になった。この「?」はものすごいキュリオシティだった。 映画は公開されたが、評価はかんばしくなかった。imdbやtomatoesもぜんぜん伸びていない。 だけど個人的にすごくいい。…

Fukushima 50(2019年製作の映画)

3.0インターネットが普及して以来、ホームページとかブログとかSNSとか、始めては辞める──を繰り返してきた。 始めるのは、なんか言いたいことがあるからだ。 辞めるのは、なぜだったろう? ──と、思い返してみると、辞めるのは、恥ずかしくなった──からであ…

シカゴ7裁判(2020年製作の映画)

4.2人は群衆のとき、やはり烏合ではないか──と思う。烏合となれば、先導者の思想が反映されない。 個人的には、そこに浅はかさを感じる。国は非倫理な戦争をやっていたし、若者が平和を愛する気持ちはわかる──けれど、国を相手にして、混乱なく集会ができる…

ライアンジョンソン監督のサスペンス作品 ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 (2019年製作の映画)

5.0ナイフは複数形になったとき、FがVになる。あたまに発音しないKがある。──とは、むかし英語の授業で習った。だから何──。というか、それだけなんだが。 まったく、しつこいスターウォーズファンどもには、飽き飽きだね──と言ったかどうか知らないが、SW監…

レベッカ(2020年製作の映画)

2.5映画が好きでヒッチコックがきらいというひとはいません。サイコ裏窓ダイヤルM北北西めまいロープ・・・ぜんぶいいです。が、さて、どんな映画だったかと言われてみると、ストーリーを思い出せるものは、ほとんどありません。知りすぎていた男は、男が知…

FPSとGUIの関係 ハードコア (2015年製作の映画)

3.2Hardcore Henry(2015)を見たとき、その評釈でFPSということばを覚えた。First Person Shooterは一人称視点のゲームを指す。 きょうび、インターネットでは、多数の書き手が、英語の頭文字をつかった略号を「完全に周知の略号」という体裁で、書いている…

ありがとう、トニ・エルドマン(2016年製作の映画)

4.02016年にBBCが、世界の批評家177人の選んだ21世紀の映画ベスト100──を発表した。 ふつうだと、このての公的セレクトは、わかりきったタイトルがならんで、おもしろくもなんともないが、この選定は、2000年以降という縛り、且つ、確固たるリテラシーを持っ…

PC画面を通じてつながる恐怖の物語 アンフレンデッド (2015年製作の映画)

2.8PC画面だけで構成されるスリラーのUnfriended(2014)はCyberbullyの復讐劇として小ヒットし、新しい手法のPOVとしても受け容れられた。 PC画面とはいえスカイプのようなビデオ通話が常時つながっていて、つねに1人~マルチな通話者の顔を見ることができ…

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019年製作の映画)

3.3ジェシカチャステインはふしぎな感じがある。首から下をみただけでは、男性な物言いをすると、ソソる。が、きれいだが強面なのである。下から見ていく男たちは、顔で弾かれる。 白人のなかでもひときわ白い。ルージュをさしているとさらに怖い。ツン顔で…

人種問題をカリカチュア ゲット・アウト (2017年製作の映画)

5.0ブラックスプロイテーションではなくても黒人ばかりが出てくる映画がある。 たぶん、おおくの人が、白人しか出てこない映画を見ていて「この映画には白人しか出てこないなあ」とは、感じないだろう──と思う。 だが、ゲットアウトやアスを見ていて、──黒人…

マジック・イン・ムーンライト(2014年製作の映画)

3.0マジックインムーンライトのプロモーションスチールには、見えない何かに触れるように両手をさしだして、神妙に虚空を見つめるエマストーンがつかわれている。映画中でも登場してすぐ「まって今きてるの」と、このポーズを見せる。 ソフィは霊力をもって…

竹内結子の最高傑作 サイドカーに犬 (2007年製作の映画)

3.5根岸吉太郎には、滝田洋二郎とおなじで、ポルノ出身者で、まっとうな映画をつくった監督──という認識がある。日本映画風のギラつきがなく、さわやかだった。 ヨーコの来歴には男女間の混濁がある。もしそれを描写してしまうなら、たんなる「日本映画」だ…

つくった哀しさ 君が世界のはじまり (2020年製作の映画)

1.0外国映画と日本映画のあいだに格差を感じること、がよくあります。それがなぜなのか、ぜんぜん知らないわけじゃない──と思っています。 それは、一般的な日本人は、ダイバーシティに欠けた衛生無害な生活環境のなかで成長するので、創造性がコンパクトに…

#生きている(2020年製作の映画)

3.0よく思うのだが、ゾンビ映画のばあい、もはや現れるまでが、まどろっこしくて、仕方がない。 ゾンビ映画なのは分かっている。ならば「現れた→たいへんだ」の導入部が、ぜんぜん要らない。と、個人的には思う。 ただし、韓国映画ならば、少なくとも解って…

希望のカタマリ(2020年製作の映画)

3.0Auli'i Cravalho。顔がいい。パーツが大きく、豊かで濃い。明朗と親しみと厚情が顔にでている。肉感もありフェミニンでもある。モアナそのものだと思う。 根無し草のように生きる少女の生活実態がリアルだった。貧苦と災難に遭いながらも、人間関係に難儀…