津次郎

映画の感想+ブログ

武人と家庭人 コンフィデンシャル/共助 (2017年製作の映画)

コンフィデンシャル 共助(字幕版)

3.5
ユヘジンといえば、顎前突、厚い唇、はれぼったい薄い目、四角い顔面、低身長、五頭身。民族の標本のような外見で、まず忘れない。
なまえを知らなくても、誰でも見たことがある韓国俳優だと思う。
ちなみに韓国にはそんなおじさんバイプレーヤーが何十人といる。

ユヘジンは一日にしてならずで、むかしは、悪役専門だった。
ひわいな人物や、下っ端のヤクザや、ぶんなぐられ転げ回るような汚れ役が、むしろ定位置だった。

wikiにはこう書かれている。

『大学で演劇と映画のコースに二度応募したが、かれの外見のために拒否されたあと、ユは代わりにファッションデザインを専攻した。しかし、演劇への情熱さめやらず、大卒者の成績だけに基づいた特別な選考プロセスにより、ユはソウル芸術大学校の演劇部門に最終的に受け入れられた。
その後、ユは映画でちょっとした役割を果たし始め、scene stealerとしての評判を獲得し、やがて端役を卒業した。短いスクリーンタイムにもかかわらず、彼のパフォーマンスは観客と批評家に強い印象を与えた。韓国の映画がジャンルの面でより多様になるにつれて、ユはますます重要な役割の機会を見つけ、今では興行成績において正真正銘の看板俳優になっている。』
(Wikipedia(英語版)、Yoo Hae-jinより)

おおむね2010年代からこっちは、すでに準主役だった。Luck Key(2016)ではついに主役だった。翌年のこれもヒョンビンとのダブル主演だった。

顔偏重な日本とはいえ映画の興行成績に貢献したのは、ヒョンビンだけではなかったと思う。個人的にもユヘジンに釣られた。

ヒョンビンも長いキャリアの俳優で、女性に強固な人気だが、Confidential Assignmentとは、ボックスオフィスの割り当てでもある。
ヘジンとヒョンビンが儲け(興行収入)をフィフティ/フィフティで担っている──と映画は言っている。のである。

ユヘジンに惹かれるのは、ひとに歴史あり──の気配だと思う。主役にどつかれて、のたうちまわっているような三下から、ここへ至った階梯を思うほどに、その顔が語ってくる。

かえりみて、たしかにscene stealerなひとだった。
善人にしろ悪人にしろ、おや、と思わせるものがあった。
その努力は、想像することしかできないが『外見のために拒否されたあと、ユは代わりにファッションデザインを専攻した。しかし、演劇への情熱さめやらず』ついに主役級となり、タクシー運転手、共助、完璧な他人、レッスル、韓国を代表するドル箱スターにのぼりつめた──わけである。感慨深い。

映画はじゅうぶんに面白いが、ヘジンとヒョンビンならば、凸凹をもっと強調した笑いに仕立てられたような気がする。
つまり、ヒョンビンは暗いイケメンで、ヘジンは明るい非イケメン──なのだから、そんんな最適解のふたりを起用するのであれば、もっとコミカルなリーサルウェポンをやれたはず──と思ったのである。

この映画で、もっとも楽しいのは、北の寡黙な武人が、南の家庭で饗応にあずかるシーンで、資本主義的できままな娘が、ヒョンビンの外見にコロリと傾くのが、活き活き描かれていた。
そのような南北/明暗/美醜──正反対の凸凹を利用した笑いが、もっとできるような気がした。

ただ映画は、ヘジンとヒョンビンのダブル主演が決定した時点ですでに半分完成したようなものだった。
武人と家庭人。
つぼを心得たすぐれたバディ映画で、独創的──とは言えないが、このふたりならば、いい脚本さえあれば、続きものがいけると思った。

ちなみに2017年に自動車事故死したキムジュヒョクが敵役で、毒戦(2018)とともに印象が強かった。