津次郎

映画の感想+ブログ

家族の愛と笑い おじさんに気をつけろ! (1989年製作の映画)

おじさんに気をつけろ! (字幕版)

5.0
Jean Louisa Kellyという女優をUncle Buckでしか見たことがない。が、そこで見せたバック叔父の姪Tiaがとても印象的で、あとはいいのではないかと思えてしまう。──のである。

かえりみれば、ジョンヒューズの映画には「あとはいいのではないかと思える」俳優がいっぱいいる。かれらは、ちっとも褪せない。Molly RingwaldもAnthony Michael HallもJudd NelsonもAlly SheedyもMatthew BroderickもMia SaraもAlan Ruckも・・・

てことはジョンヒューズに出たってことは、僥倖でもあり、呪いでもあった。
ジョンヒューズファンならばヒューズファミリーの面々が果報と呪縛を同時に被ったことを、かならずお認めになる──にちがいない。

Jean Louisa Kellyもそうだった。
Tiaはいっけん典型的な反抗期の娘キャラクターだったが、濃いメイクにモノトーン、肩までのソバージュ、ネックまたはスカーフで首を隠していた。おそらくゴシックが流行っていたと思われる。

いまでこそ、その様態に、珍しさはない──が、わたしが同時代にUncle Buckを見たとき、Jean Louisa Kellyの娘役は、ハっとするほどフレッシュだった。おしゃれだった。

おそらくそれも共有された記憶であると思う。

かのじょはゴシック女子らしく、寡黙で、はっちゃけるテンションが嫌いで、明るく屈託のない弟/妹を煩わしい存在とみており、ロクでもない彼氏にむちゅうになっていた。でも、背伸びしているけれど、幼心も残していた。

いわゆる「けいべつのまなざし」がとてもじょうずで、バック叔父がシッターに来てから、ことあるごとに「けいべつのまなざし」を向ける。それは、Jean Louisa Kellyを忘れ得ない女優にするのにじゅうぶんな蠱惑であり、かつてはインターネットミームにもよく使われていた。

ジョンヒューズが、せかいじゅうの人々に敬愛されているのは、軽いコメディを重ねて、さいしゅうてきには、観衆の魂をゆさぶってしまうから。
その魔法はブレックファーストクラブにはもちろんPTAにもフェリスにも本作にもあった。

粗雑で野生だが厚情なバックおじさんはJohn Candyの独壇場で、代表作でもあると思う。はちゃめちゃをやっていながら、じつは大きな慈愛を、醒めた家族にもたらし、さいしゅうてきには、反抗期の娘を溶解させてしまう──のである。

そのドラマ展開が、たいしたものではない、とか、とりたてて言うほどのものではない、とか思うのであれば、古今東西のコメディからジョンヒューズ的展開をするものを探してみるといい。見つかっこないから。なんてね。