津次郎

映画の感想+ブログ

コーガンのキモさみなぎるサイコスリラー Saltburn (2023年製作の映画)

Saltburn

4.0

バリーコーガンのキモさみなぎるサイコスリラー。

オリバー(コーガン)はオックスフォードに入学したとはいえ中大在学中のステハゲという感じのぼっち。対してフェリックス(Jacob Elordi)はもてもての爽やかイケめんで、コーガンは蛇のようにぬめぬめと彼にまとわりつく。が、ほとんどラストまで何をしたいのかわからない。見ていて思うのはBLモードになったらヤダなということぐらい。たのむから乳繰り合うのはやめてくれ──と願いつつ見た魅惑のスリラーだった。

監督は初監督のプロミシングヤングウーマン(2020)でいきなり時の人になったエメラルド・フェネル。
原案を書いたのもフェネルで、言うなれば一発屋じゃないことの裏付けとなる2作目になっている。

フェネルはsaltburnについてこう述べたそうだ。

『私たちが耐えられないような種類の人々、忌み嫌われるような種類の人々を──
もし私たちが彼らを愛することができるなら、
もし私たちがそのような人々と恋に落ちることができるなら、
もし私たちが、その明白な残酷さや不公平さ、ある種の奇妙さにもかかわらず、なぜこれがこれほど魅力的なのかを理解できるなら、
もし私たち全員がそこにいたいと思うなら、
──それはとても興味深いダイナミックなことだと思う』
(wikipedia、Saltburn (film)より)

映画はフェネルの言うとおりのものになっているが、オリバーのキャラクターは過剰だが共感できるところもある。
ぼっちが自分を卑下するところ、きらびやかな一軍や金持ちをねたむところ、うそを言ってでも同情を買いたいと思うところ──こういった心情はけっして珍しいものではない。
フェネル自身も──

『私自身の人間としての経験から描いたもので、人生において誰もがその時に感じる、執着的な愛という絶対的な狂気の支配を感じたことがある......しかし、明らかに私は(映画の中の)何人かの人々のように、そこまでしていない』(同wikiより)

──と述べていた。

寄生して内部崩壊へもっていくのところや金持ちが世間知らずのお人好しであるところがパラサイト(2019)に似ているが、従兄弟のファーリー(Archie Madekwe)はしたたかなBully体質の男で、戦略を崩されるような描写もあって最後までわからなくなっている。それが巧い。どこへ落としたいのかほんとに最後までわからない。

またプロミシングヤングウーマンは救われないのになんか笑えたが、これもヘビーな話なのになんか笑える。ひどいのに「なんか笑える」という英国らしいブラックユーモアに感心というか、わたし達日本人にはないものなので羨望を覚えた。

個人的に笑ったのはカラオケしているときフェリックス父のサー・ジェームズ(Richard E. Grant)が興奮気味に「歌詞が画面に出る、そこがいいんだ!」って言うところ。
なんか笑った。
俺も今度カラオケ行ったとき「歌詞が画面に出る、そこがいいんだ!」ってちょい興奮気味に言ってみよっと。

あとは豪邸である。招待された家が金持ちだった──とはよくある設定だが日本では予算を投じたってこんな大邸宅の撮影はできない。撮影に使われたのは1328年に建てられたDrayton Houseという歴史的建造物だそうだ。
日本家屋は木造建築なんだし違う文化圏なんだから比較するのはおかしいのだが西洋のカントリーハウスとか地で絵になっちゃう世界見るとロケハンとかいやになってこないですか。ていう話。

imdb7.4、RottenTomatoes72%と79%。