津次郎

映画の感想+ブログ

記憶喪失男女のドタバタコメディ ラブリセット 30日後、離婚します (2023年製作の映画)

映画「ラブリセット 30日後、離婚します」DVD [韓国盤] | 韓国エンタメ・トレンド情報サイトKOARI

3.8

記憶喪失に陥った男女のロマンチックコメディで界隈でいずれもよくみるカンハヌルとチョンソミンが主役をつとめた。
脚本も練られているし撮影もVividだが役者たちのドタバタがダイレクトにつたわってきた。それはまさにドタバタという言葉そのもの、なんばグランド花月みたいな高いテンションで長めの尺をぐいぐいドライブしていく様に圧倒され、他愛ない話を猟奇的な彼女のような強引なエネルギーで乗り切った。

韓国映画・ドラマにはよく女性が食べる描写がでてくるが、わたしたち(日本人)とはあきらかに違うその食べ方。
大口するし、ほおばるし、かっこむし。それらが日本女性のはじらいに満ちた食べ方を見慣れた我々から見たとき、新鮮で魅力的に見えてしまうというロジックがある。(と思う)が、この映画でもそれがあった。

先日見た見習い社長の営業日誌3というtvNバラエティ番組でもハンヒョジュが極太のキムパプを「があっ」と大口でほおばるシーンがあったが、そのシーンが何でもない平常として流れた──のだった。日本のコンテンツであれば絶対につっこみが入っただろう。あの美しいヒョジュが大口で極太のキムパプをほおばった──という文字情報だけでも充分な過激さにもかかわらず、しかし韓国では平常なのだった。

──というような異文化な気配が韓国映画・ドラマの魅力だが、それらの気配が活き活きとしたドタバタを構成しているし、毎度ながら韓国映画の女性はきれいだった。チョンソミンも可憐だし、ファンセインという妹役の女優にも愛らしいアピールがあったし、ほんの一瞬だけカンジヨン(知英・JY)が出てくるが、うっとりするきれいさだった。
じぶんは信条は保守で韓国嫌いでも「韓国女性はきれいだ」ということを胸にしまっておく日本人男性のひとりで、当然男性についても同様だが、むろん見た目だけでなく、演出がじょうずだった。

以前猟奇的な彼女のレビューに『猟奇的な彼女は、つねにその強烈なキャラクターの面白さとして語られてしまう──ことに対して、じっさいにこの映画を支えていた真価は演出力にあった。こんな他愛ない話を122分引っ張り続ける。』と書いたが、本作も他愛ない話を119分引っ張り続けている。

加えて俳優陣も、きれいさやかっこよさをかなぐり捨てて、そこまでやるか──という演技をみせる。たとえば日本の俳優であれば、そこまでのことは志村けんとか佐藤二朗とかしかやらない──というような、みっともなさをさらけだすような演技でも韓国映画では美人やいけめんがやってのけてしまって、それが新鮮さと魅力につながっている。
また、よく怖い女をやるチョ・ミンスと韓国映画・ドラマでいちばんよく見る中年女性のキム・ソニョンが脇を固めていて評価も興行も悪くなかった。

ロマンチックコメディだがロマンチックではなく、騒々しく、好ましいという意味においてデリカシーがなく、韓流ドラマ風の愉しさがあった。と思う。

韓国映画だがimdbでは分母(採点者数)も充分にあって6.8をつけていた。

男女の位相についてだが、猟奇的な彼女のテヒョンとジヒョンのように、荒々しく勇ましく負けん気な女にたいして、かしずく男という──立ち位置が見られた。
この男女関係は、韓国の男女のスタンダードな関係性なのかもしれない。──と考えると、韓国がoecd加盟国内で最高自殺率を誇(誇るというのもヘンだが)っていることに、ある種の納得を感じてしまうのだった。w

ちなみにテーマに使われているThomas RhettというシンガーのSweetheartという曲、いい曲ですよ。