津次郎

映画の感想+ブログ

どばどば 死霊のはらわた ライジング (2023年製作の映画)

死霊のはらわた ライジング

3.4

死霊のはらわたで憑依から解放されて正常に戻った偽装をするという定番シーンがある。すごい形相だったのがもとに戻って猫なで声に変わって善良なものをだまし、施錠や緊縛の解除を要請するという、エクソシスト系にもかならずでてくるシーンではある。

かえりみてブルースキャンベルはそれがじょうずだった。恋愛感情でむすばれた者が憑依されて死霊顔、死霊声でがしがし言っているのが、ふと大人しくなって「おねがいあけて」とか言ってきたときに、ブルースキャンベルがオーバーアクションで逡巡をみせる。とまどいやたじろぎをあれだけ大げさに演技してはまる役者もいなかった。

サムライミ、ブルースキャンベル、地をはうカメラ、死霊メイク、死霊声、木がのびてきてつっこまれるところ、高校生だったわたしは死霊のはらわたがだいすきでレンタルでは足りず14,800円で市販VHSを買った記憶がある。同級生がくると電気を消して18型のブラウン管テレビで上映会をやった。なんどみても楽しい映画だった。

死霊のはらわたは死霊のはらわたゆえ続編もへったくれもなく死者の書を見つけて封印が解かれて憑依する話ということになる。話といっても話はないので死霊形相で喫驚せしめるメイクとやっつける手順や手段に腐心が集約される。よってEvil Dead Riseとはいえ母や姉の変貌がメインになっていてそれを凶暴で醜悪に見せるところにぜんぶきている。
グロテスクや残忍や血などの出玉超過へ振らざるをえない仕様でよくがんばって伊藤潤二の絵を実写化したみたいに死霊合体もするしチェーンソーや粉砕機もでてきてしっかりドバドバやってくれる。

『クローニンは、この映画では6,500リットル(1,717米ガロン)以上の偽の血が使われたと述べている。過去のシリーズと同様、この映画はCGよりも実写効果に重きを置いている。』(Wikipedia、Evil Dead Riseより)

死霊化する母親はAlyssa Sutherlandという俳優がやっていてもとからあるていど容貌魁偉なのを赤毛にしてがんがん暴れさせてしっかり見応えにしている。母親なので中途で正常偽装して猫なで声にかわって娘に懇請するところもあった。
笑うところはない映画ではあったが末娘役のNell Fisherという子役が母兄姉を死霊にのっとられて失ったわりにはのんきで楽しい子だったしLily Sullivanという俳優のゴシックぽいかんじもよかった。

ある批評家は『フランチャイズをなんとか前進させつつ従来ファンをなっとくさせ新規ファンをとりこむ出来』と好意的に評価している。そのとおりだと思うが、死霊のはらわたをカルト好きしているひとにはふつうのスラッシャーだった。もちろん思い出込みの記憶というのは魂絡みだから比較はできないし、続編の法則のなかで頑張った労作だった。