津次郎

映画の感想+ブログ

めめしさ ハッピー・オールド・イヤー (2019年製作の映画)

ハッピー・オールド・イヤー

3.0

片付けをしているときなつかしいものを見つけ、しばらく手をとめて思い出にふけることがある。とりわけ実家の片付けをしているとき、遠い過去からいろいろな記憶がざくざくでてきて片付けが停滞しがち──なものだ。

この映画はだいたいそんなことを描いていると言える。

さいきん片付けでゆうめいな人(こんまり)のニュース記事がありそれは3児の母になったことで片付けを“少しあきらめた”という発言によるものだった。
彼女が発案した片付けメソッドは世界中で人気を得たが同時にアジア人蔑視も交えたアンチが少なからずいる。
発言は子供と楽しく過ごす時間が大切だから片付けが二の次になっている──という幸せな状況報告にすぎなかったがアメリカではけっこうな非難を浴びている──という記事だった。

メソッドの根幹spark joyとは心ときめくものを捨てないでおくことだそうだ。とはいえ、なんにせよ片付けとは動かすか捨てるかしかない。そんなことで世界的に有名になったのはすごいことだと思う。

ミニマルな生活を標榜し断捨離を始めた女性が主人公。
ぜんぶ捨ててやるという意気込みで始めながら、モノとそれにまつわる思い出に対して未練がある。
ひとつひとつのものが今の自分につながっているゆえに捨て去るたびに身をもがれるような追慕に苛まれる。
その感傷が描かれ、その過程で副題のようにこんまりのメソッドもでてくる。

気持ちはよくわかるが、めめしい話で気が滅入った。(さいきんめめしいに漢字を充てると差別用語になるらしい。)

人によっては刺さると思うが個人的にはものを捨て去るのにこんなに逡巡しない。実家の片付けをしているとき、昔の自分がざくざく出てくるが、だいたいうんざりする。spark joyという言葉がまるで合致しない、心ときめくというより、心千々に乱れるという感じ。じぶんの過去は、ただ恥ずかしくて、ぎこちなくて、ばからしくて、普遍性がない。

余談だがこんにちの社会ではごみ屋敷が一定の了察をえられる。高齢化など仕方がない状況ではない人でも住まいをおろそかにしていくことを怠惰とは見なされない。が、個人的にはじぶんが拡げて汚したふろしきを対価を支払った業者とはいえ人様に片付けてもらうことには疑問を感じる。