津次郎

映画の感想+ブログ

五代目ボンドと ギリ義理ファミリー (2023年製作の映画)

3.2

歴代007のなかで誰が?の問いをすると半分はコネリーになる。じぶんもそうだ。だが甘軽で非マッチョなロジャームーアがいいという人も一定数いる。またカジノロワイヤルからプロダクトがブラッシュアップされたのでダニエルクレイグがいいという人もけっこういる。レーゼンビーがいいというひねくれもちょっとはいる。ダルトン派はあんまりいない。だけどブロスナンはどうよ。

ブロスナンは演技がうまいのに充てられる役が一定なのであまりうまいことを知られていない。(ような気がしている。)
じぶんはShana Feste監督のThe Greatest(2009)を見たときブロスナンはすごくうまい役者なんだ──と知った。知ったというか思ったわけだが。

ほんとはうまい人がいわば爪をかくしてざっくりしたコメディのなかにいるのがなんとなく気の毒なわけである。フローリアンゼレールみたいなのに出たほうがいい人なんだ。

──とはいえアダムディヴァインとブロスナン。見たくなった。

以前ジャッキーチェンとブロスナンがマーティンキャンベルのThe Foreigner(2017)で競演した。よかった。そのレビューに──

『そもそもピアーズブロスナンとジャッキーチェンが、並んで立っている光景が、まったく想像できず、この呉越同舟だけでも、かなり見たい度がありました。』

──と書いていた。本作は呉越を超えた作為的ちぐはぐだが素直に釣られた。

ディヴァインは期待通りにあばれた。フィアンセ役のパーカー(Nina Dobrev)がまともなのにオーウェン(ディヴァイン)のあほに頓着していないところがいい。かたわらにまっとうな人物を置くとコミカルな地場が盛り上がる。
派生的シットコムで進んでいくがアクションは思った以上に派手だった。ドンパチもあるし乱闘もあるしカーチェイスでは墓石ががんがん倒された。

他のキャストではエレンバーキンやジュリーハガティなんてなつかしい名前もあった。ハガティは懐かしのフライングハイ同様のぼけをかました。

『彼女の役柄は、フライングハイやフライングハイ2に代表されるように、周囲の混乱に気づいていないような、世間知らずでボーッとしたキャラクターが多い。』by Wikipedia、Julie Hagerty。

水を得た魚のようなディヴァインにくらべるとブロスナンはやはり爪をかくしてコメディをやっている気配があった。が、そんなのは僻目でじっさいはどんな役でも楽しんでやっているにちがいない。

ディヴァインは身振りや顔芸からすでに笑える嫌味のないコメディアンで本作もJexiやゲームオーバー!ていどには楽しめた。が、お気になのはGroundhog Day亜種で哀愁もある理想の男になる方法。ふつうなときのディヴァインも感じがいい。