津次郎

映画の感想+ブログ

多様性 ニモーナ (2023年製作の映画)

ニモーナ

3.3

ニモーナは映画内世界の神話にでてくる獣だが実態は子供。受け容れられると大人しいが疎外されるとむくれる。人から邪魔扱いされてニモーナはグレた。騎士団から放逐されたバリスターとコンビを組む。友達かどうか解らないが少なくとも嫌われものどうしである。

ニモーナの正体はよくわからないがピンク色で大きさも姿も自在に変えられる。クロエグレースモレッツが(声を)演じた。

ND Stevensonというアメリカの漫画家が書いたグラフィックノベルをもとにしているそうだ。当初は2020年に公開される予定だったが一時製作が頓挫していた。紆余曲折あってネットフリックスから配信された。難産だったらしい。

不良少女に見えるがニモーナは性別不詳である。クイアと言うそうだ。(わたしのクイアの解釈はまちがっているかもしれない。)容姿は作者のND Stevensonに似ている。ND Stevensonはクイアだそうだ。その主張は大きくはないがニモーナはLGBTQをあつかっている。

製作が一時頓挫したのは当時親会社だったディズニーが作品のLGBTQ値に難色を示したから──と言われている。
一般向けイメージとは裏腹にビジネス上のディズニーは強権である。気に入らないのや小さいのを潰すくらいわけないだろう。じっさいブルースカイスタジオは閉鎖されてニモーナはお蔵入りになったかもしれなかった。

簡単に言うとニモーナがスネるだけの話だがシンプルなぶん友情の主題が伝わって当該年齢層にたいして必要充分なジュブナイルになっている。

映画はじぶんとはちがう人を許容しなさいと多様性を謳っている。クイアである作者が感じた偏見を反映させたものだと思われた。

謀略によって追放されるバリスターは浅黒く、騎士仲間アンブロシウスはアジア人に見える。声を担当したRiz Ahmed(バリスター)とEugene Lee Yang(アンブロシウス)の見た目そのままにアニメキャラクターが描かれている。Riz Ahmedはインド系かつパキスタン系でEugene Lee Yangは両親ともに韓国人である。

設定としてふたりは同性(男)だが恋仲にある。ありていに言ってしまうとふたりが恋仲でなく仲間どうしだったとしても変わりのない話だったが作者にとって設定は核である。そこがニモーナの要点だった。

多様性には広い意味がある。見た目、肌の色、性指向、思想や宗教、障がいの有無・・・。シェイプシフターであるニモーナの主張はどんな姿でも許容する度量をもつか、もしくは慣れてね──ということだ。その主張がわかる映画だった。

とはいえわたしは多様性だのLGBTQだのといえる環境に生きていない。外観が横並びし易い日本では多様性が育まれにくいのではなかろうか。多様性やLGBTQをかかげた映画をよく見るがその訓育の成果を発揮させる日常の機会はほぼない。