津次郎

映画の感想+ブログ

ひとこわ ブラック・サマー: Zネーション外伝 シーズン1 (2019年製作のドラマ)

『ブラック・サマー: Zネーション外伝』シーズン1

3.8

絶命と同時にゾンビ化し、足が速くうるさくてしつこい。

家族やたまたま居合わせた者らの小集団が空港へ向かう道中がブラックサマーZネーション外伝の概要になっている。

アンサンブルキャストで時系を前後させながら小集団がサバイブあるいは壊滅するようすを活写していく。脚本がよく練られ俳優らのローカルな雰囲気もリアル、エピソード内がタイトルを据えた節に分かれ、退屈することなく見られた。

よく“Netflixでイッキ見”なんて言うけれど、じっさいイッキ見してしまう/したくなるドラマはまれ。だがこれはイッキ見した。

このドラマのカオスは現実世界で災害やパンデミックが発生したときの教訓をくれる。

もちろんゾンビ話と現実を混同させるつもりはないが、起きている事案がなんであれ、それに対処するのが人間だからカオスになる──というプロセスがブラックサマーには描かれている。
なにしろドラマ内世界における人類の最大の敵はゾンビではなくサバイバーだ。サバイバーどうしが食料や安全な建物をめぐって死闘を繰り広げるのがブラックサマーの骨子だ。

それらの事態が表裏となって現実世界が見えてくる。

たとえば新型コロナウィルスの草創期に罹患した人を特定したり疎外したり職場に投石したりそんな話があったではないか。なんらかの事故や災難がおこったとき、それ自体ではなく派生した紊乱によって人は疲弊したり命を落としたりするわけである。

ブラックサマーZネーション外伝はゾンビをモチーフにしながら人間の醜悪さ/エゴイズムをあぶりだすドラマになっており、もっとも顕著なのはS1の5話“レストラン”やS2の3話“トランプ”。サバイバーたちは停泊地となりえる遮断された空間をみつけて集うのだが自己中心的な者や疑心暗鬼におちいった者が何もかもめちゃくちゃにしてしまう。

みんなで協力していたら全員無事だったものを、強迫観念にとらわれたやつが、カオスをもたらす・・・。ひとりの異分子が集団の平和と安寧をぶちこわしにする・・・。ありえる話ではなかろうか。

カリカチュアと思わせるほどにリアルに描かれてあり、見ながら、もし現実に被災などによって隔離や避難をすることがあったなら、ストレスを感じる前にとっとと孤立したいと思った。誰かと対立するまえに去りたいということを強く思った。そう思わせるドラマだった。

ウォーキングデッドにハマれなかったがこれは楽しんだ。