津次郎

映画の感想+ブログ

レモネードスタンド プロミスト・ランド (2012年製作の映画)

プロミスト・ランド

4.5

日本ではほとんど見ないが海外には“慈善家系”という感じでハンデを負っている人や困窮者に寄付や激励をして感動シーンへもっていくYouTuberやTikTokerがいる。

さっきそんなタイプのTiktokを見た。
動画で対象となるのは9歳の少年。生まれつき盲で家の前でレモネードを売っている。
前提知識だがアメリカにはレモネードスタンドという子供による資金集めの雛形がある。

『アレクサンドラ(アレックス)・スコット(Alexandra "Alex" Scott、1996年1月18日 - 2004年8月1日)は、癌を罹患しながらもレモネードスタンドを開き、同じ境遇の子供たちのために癌治療の研究や闘病を助けるための資金を集めた少女。彼女は8歳で短い生涯を閉じた。』
(ウィキペディア、アレックス・スコットより)

その少年はグレイソンといい売り場には自己紹介が貼ってある。

『ぼくの名前はグレイソン。ぼくは9歳で生まれつき目が見えないんだ。でも、そんなこと気にしないで、みんなができることは何でもするよ。音楽と旅行が大好きなんだ。
まだ片目が少し見えるうちに、世界を「見る」ためにお金を集めています。
世界を見るというぼくの夢を叶えるために、力を貸していただけませんか?』

TikTokは連作になっていて、最初にお客がひとりもいない“お店”でグレイソン少年がぽつんと座っている絵が撮られた後、その慈善家TikTokerが声かけし拡散し、やがて有名人もやってくるほど繁盛するという顛末。いちばんバイラルになったのは18.4Mを叩いていた。

──

Promised Land(2012)をよく覚えている。
マットデイモンとジョンクラシンスキーが共同で書きガスヴァンサントが演出し、デイモンもクラシンスキーも中で演じている。
わかってる人がつくった、ジョンセイルズみたいにいい映画だった。

企業への忠義心と人情のはざまで揺れ動くデイモンがうまい。
企業は顧客の味方とは限らないが常に顧客の味方であるという態度をとる。ほんとに誠実に対応するなら企業戦士なんて無理だがたとえクビになっても人間たるもの誠実に生きた方がいい。そういう静かな主張があったと思う。

好きなシーンがある。ラスト前、住人らがあつまっている体育館でスティーヴ(デイモン)は企業がみんなを騙してきたことを白状しなきゃならない。

その会場の入り口で素朴な少女がレモネードスタンドをやっている。一杯25セント。スティーヴは商売人らしく立地をほめる。

いい場所だ。
そうでしょ。
(のんで)うまい。
そうでしょ。
(払って去ろうとすると)まって、おつり。
あげるよ。
看板にも25セントって書いてあるから25セントでいいの。(ニコっとわらう。)

本筋とは関係ないシーンとはいえこのシーンをここに置いたのには理由がある。1杯クオーターのレモネードを何杯売ったら彼女の目的になるのか知らない。にもかかわらずおつりをいらないという誠実さ、おつりをもらうなんて夢にも思っていない少女の純心さ。けっきょくそれはこの映画が言いたいことの縮尺でもあっただろう。

私事ながら前からプロミストランドのレモネードのシーンよかったって書こうと思っていてやっと書けた。