津次郎

映画の感想+ブログ

人の業、深淵を見つめるシェリダン 最後の追跡 (2016年製作の映画)

最後の追跡


5.0
終始Happy Go Luckyでいながら、やる時はやる。酷薄なようでいて、じつは篤い。テキサスレンジャーのマーカスが、トゥルーグリットのシェリフ、コグバーンとピッタリ重なります。弄りまくっていた相棒アルベルトが撃たれ、仇を討つのは、マティロスを抱いて夜通し走ったコグバーンそのもの。ジェフブリッジズの独壇場でした。

飄々として鷹揚、でも癖っぽくて口が悪い、勘が鋭く執念深い、マーカス。彼の戯れ言と差別発言を苦々しく受け容れるアルベルト。時々無表情で反駁する。スピンオフいけそうなほどいいコンビで、ハワード兄弟より惹かれました。

無軌道にみえる強盗が、じつは銀行に奪われた牧場を取り戻すことを企図していたと次第に判ってくるのですが、復讐劇に陥らず、といって社会派にも落とさない、絶妙な筋書きにも感銘をうけました。
マーカスは相棒を失い、トビーは兄を失います。いわばおあいこですが、当人としてみればかけがえのない喪失です。
「何をしても終わらない、一生背負っていくのさ、お前も俺も」
うまく言えませんが、是非のつけられない、ストイックな着地だったと思います。

復讐と社会派の狭間と言えば、この脚本家Taylor Sheridan、エミリーブラントのSicario(ボーダーライン)を書いていて、ドラマバランスに、通じるものが感じられます。
Wind Riverで初監督兼脚本。しかもカンヌで監督賞。三作で躍り出た時の人です。Wind Riverの出演はホークアイとスカーレットウィッチ。ボーダーラインにも、最後の追跡にもある「ギリギリなバランス感からのストイックな着地」がWind Riverにもありました。