津次郎

映画の感想+ブログ

ベイビー・ブローカーに引き継がれた「家族」 万引き家族 (2018年製作の映画)

5.0
この映画に冷評をつける人のレビューで多いのが、親が子どもに万引きさせるのは、いかんじゃないか、という倫理への非難です。
しかし、それは言うまでもないことかと思います。

滔滔と倫理を説かれ、ひょっとしたら映画レビューを通じて、自らの正義感を披露しているのでは?と思えてしまう、こともありました。映画レビュー枠を利用して私は万引きを許さないモラリストですと主張するのは、いささか効率の悪い自己主張です。
また、それを言うなら、根本的に、深作やタランティーノの映画を好きなら、暴力を肯定することになってしまう、かもしれません。

もちろん、映画をどう見ようと個人の自由です。
個人の自由ですので、言ってしまうと、万引き家族に倫理観を持ち出すのは、映画を見慣れていない人の意見だと思います。
レビューを読んだり、身の回りの意見を聞いて、この映画をDegradeする人は、どちらかといえば映画を見慣れていない人に多い、と思ったのです。
当然、映画を見慣れている人は、映画を見慣れていない人に比べて、優れているわけでも偉いわけでもありません。ぜんぜん、どっちでもよいことです。

NewsWeekでこの映画の海外の高評価を説明するコラムを読んで、納得したことがあります。
それには、(海外においては)文芸映画を見る人種/層だけがこの映画を見たから(高評価だらけになった)、とありました。反して日本では、話題も手伝って、様々な層の人々、普段映画を見ない人も見たから、過度な酷評もあらわれた──という説明でした。
なるほどと思いました。

映画をレビューするばあい、映画を見慣れていることは、あるていど必要だと思います。見慣れている人が見れば、この映画への倫理批判は、お門違いです。すなわち、これに倫理うんぬんする人は、カーレースの客席から、レーサーたちのスピード違反に腹を立てているようなもの、です。

因みに総て個人の見解です。